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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.3:Wonderer's load
61/73

Design of No.2

サブタイトル『Design of No.2 / 第2位の目論見』


※北山 視点です。

「……おや、五近の方ですね。」

ボロボロだが石作りの民家。その中に一人の男の姿があった。

ただし、そこには寝具のみがあり、他には何もない。

「なぜ、分かった?」

驚きを押し殺したような声が返ってきた。

「そりゃ、わかりますよ。気配が違いますからね。北山様?」

「ほう、そこまでバレてるとはな。俺の目的も知ってるのか?」

「いえ、さすがにそこまでは存じませんが……。女王様の勅命(ちょくめい)ですか?」

「いや、今回は違うんだが……。死人の枕元って言えばわかるか?」

「!! では、招待状も?」

「ああ。俺が持ってる。」

「なるほど……! 少し、そこでお待ちください。預かり物をお渡しいたします。」

そういうと、寝具を裏返した。

「ところでお前、ホントにゾンビなのか?」

「ええ、生命活動自体は停止していないので腐臭はないと思いますが……気分を損ねられましたか?」

「いや、そういうことじゃない。ただ、ホントに人間みたいだなぁって思ってさ。」

「元、ですけれども。」

「ハハ、でもな……お前と人間の差ってなんなんだろうな。」

「女王様のご命令でわたくし共はここでの定住を定められていますが、

それはわたくし共には到底理解しかねます。」

「そうかぁ? ホントはお前も分かってるんじゃねーの?」

「……いえ。今は、仕えてもらえているだけでも至福ですので。」

「そうか。その至福、逃さないようにな。」

「ええ、北山様も御精進できるようにお祈りしています。彼もその助力をしてくださるはずです。」

「しっかしなぁ、まさか組んでたとは思わなかった。お前はあいつのこと知ってるのか?」

「はい。しかと、この目で拝見させていただきました。」

なるほど……否定しないってことは、とことん俺たちで遊びたいってわけだな。

ゾンビは全員この事を知っているのだろう。ただ、それを周りに報告したいだけで。

女王様こと宮ノ小路様は当然理解してる。報告はいらない。

誰かがひっそりと暗号に気付くのを待ってたってわけだな。

「これです。彼からの暗号です。御武運をお祈りしています。」

「ああ、サンキューな。他の連中(ゾンビ)にもよろしく伝えておいてくれ。」

(かしこ)まりました。北山様。」


さて、今度はこいつもメモって三鷹に渡さないとな。

今日は……正午からシフトが入ってたな。それが終わったらフリーだ。

面倒事を起こさないようにしっかり手をまわしておかないと……。






「しっかし、シフトっつっても見張りだもんな。」

宮殿には中央に煙突のように高い突起がある。それは並の人間でも登れるように

鉄製梯子が設けられていて、五近に位置づけられた俺たちは、

度々ここからあたりを広く監視する。

並の人間や、低能力者(特に戦闘能力に欠けている者)は視力が(戦闘系の能力者と比べると)低い。

そのため、こうして俺たちだけがここから眺めるといってもいいぐらい暇な仕事を請け負っている。

「退屈でやることねぇや。」

その煙突のような高い突起の頂上には、柵と屋根があるだけ。

窓はなく、天候が悪い時には非常に危険でもあるが……

宮殿の作り自体が強固なため、この小さな塔とでもいうべきこの(いただき)

案外いい穴場だったりもする。

どういうことかというと……

「暗号もややこしくなってくるか……。」

という具合に人目を気にせず堂々とメモを見れたり、ちょーっと自分の能力を試したりするには

丁度いい場所だったりもする。

何かつぶやくにも適していて、

それに、……ここからの眺めは悪いもんじゃない。


「ハァァ……!」

右の手のひらから小さめの球体を出す。勿論これは俺の『爆熱余波(メルトボマー)』だ。

今までは手から放ったり、じかでぶつけたりしているだけだったが、そろそろこれも限界だ。

ぶつけるに至っては、俺自身能力の強さを抑制(セーブ)しなきゃいけないからな。

あまり強すぎると自分の手を焦がす。

放つ事が出来るからこそ正規で2位の座に座る事が出来たといっても過言じゃない。

それは、1位の座についたあいつも同じ事だ。

当然の力を持ったからこその地位。なら、もっと能力を高める事が出来れば……

「そう思った結果がこれだよ……。」

球体からレーザー状に光線が伸びている。しかし、その射程は約30cmほどで非常に短い。


やっぱ能力セーブしてたら試せねェ……。

直径5cmの球体でようやく30cmだ。これが直径に比例して光線が伸びるならまだしも、

実際は上手くいかねえもんだ。特に射程に関しては……。

たぶん、直径30cmでも1mいくかどうかってところだ。

難しいぜ、能力開発ってのはよ。

「……ったく、覗きとか趣味悪いぜ?」

徐に発した言葉と思われたが、聞く者はいた。

「相変わらずいい感覚もってるよな……怖い怖い。」

「今日は、相手してやらないからな。広幡。」

「分かってるよ。お前、今日はずーっとせっぱつまってそうな顔つきだったし。」

「最低限の洞察力ぐらいはあるみたいだな。」

「馬鹿にするな! これでも五近なんだよ!」

「……だったら、大人しくしてりゃいいだろう。勝負とか、本当は五近の役目じゃねぇ。」

「らしくないこと言うなよな、北山。シフトだ。次俺だから変わってくれよ。」

「OK.次は俺を負かすぐらいの戦略とか練ってこいよ。」

そういうと俺は梯子伝いに降りた。広幡は勿論だとでも言いたげな目線だったが、

俺の様子を見て黙っていたらしい。洞察力だけは本当に大したもんだ。




「次の暗号だ。」

今日も俺は三鷹の教室に立ち寄った。高嶺……といったか。この娘。

高嶺が三鷹と共にいる光景も当たり前のような感じになっていくのだろうな。

慣れってもんには驚くばかりだぜ。

「そうか、第2のメモだな。そいつと昨日のメモを照らし合わせると何かわかるかもしれないな。」

「昨日? あれはもう解いちまったよ。」

「ええ!? そ、それじゃ俺が必死に出した答えって……。」

「お前は、どんな答えだったんだ?」

「結論から行くと、たぶん門番を担当してるゾンビの事じゃないかって思ったんだ。

枕元がピンポイントかは別問題だけど、たぶん寝室とか民家にあるってことじゃないかな?

ほら、ここに仕えてるゾンビって6人だけだし。分からなかったのは最初の文章だけかな。

『真の問題、そこに在り、そこに無き事』ってやつ。」

「当ってる。お前、勘がいいな。俺もお前と同じ結論を出したよ。」

「本当か! 俺の結論あたってたんだな! で、次は!?」

「そんなに焦んなって。ちょっと写すからペンと紙くれよ。」

「あ、ちょっと待ってて。高嶺は42ページまで終わったら、野外授業だ。」

「はーい!」

……おい、高嶺の性格変わってねーか? 昨日とは違う気がする。

それとも、中身はガキってことなのか?

わっけわかんねー……。徐々に明るい性格になってるのは確かだと思うんだが、

戦闘訓練、果てには人殺しも味わう事になるだろうな。

果たしてあの明るさがどこまで伸びて、どこで止まるのか……。

「はい、これね。」

「さんきゅ、写し終わるまで待っててくれよ。」

俺はさっそく複製を開始した。

今回も難しい語句並べた感じで終わりそうな予感だったが、ま……

ゾンビも顔知ってるぐらいだ。自信は相当あるような奴だ。

次も気合い入れてやんなきゃな。























さきほどのゾンビの民家には、6人のゾンビが集っていた。

門番を務める者たちだが、今は例外。

石造りの家には人間を含めると7人……。

「それで、やつは『一人』できたんだな?」

「ええ、間違いありません。」

「果敢な奴だ。流石は序列2位。1位は謎解きには興味なさそうだったし、

他も気に留めるような奴じゃないからな。北山か……なかなか強そうだな。」

食欲をそそるといったような気分で彼は期待した。

たった一人で暗号を解きに来た北山を……。

「次も簡単にたどり着くかな。 それじゃ、またな。よろしく頼むよ。」

「はい、……来夏(らいか)様。」

1人が去ると、残りの6人も散った。


「なんだありゃ?」

来夏がその時見たものは、宮殿の頂から短く伸びる光線だった。

「そうか、あいつも精進しようとしてんだな。感心感心♪」

さらなる期待感を抱いて、彼は向かった。宮ノ小路の元に――――

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