They wait upon for the Queen Ⅴ
サブタイトル『They wait upon for the Queen / 女王のために彼らは傅く Ⅴ』
※三鷹 道介視点です。
「側近よりも高位の、本当の序列1位がいる。」
非戦闘員の俺には縁もゆかりもない話だと思える一文だ。
これが、側近である彼らからしてみれば顔を拝みたくなるほどの事だろう。
側近という地位を与えてもらいながら……隠されていた。
つまり、偽の称号を手にし、彼らは宮ノ小路様に信用されていなかったという事になる。
側近を信用していなかったら、一体誰を信用すればいい?
……いや、側近だけじゃない。広まれば、きっと皆も宮ノ小路様に対する信用は
あっという間に崩れ去るだろう。
「一体、どういうことなんだ? 宮ノ小路様は……。」
「さぁな。ただ、他言厳禁だ。俺も信頼を失うと側近から外されるかもしれない。」
「わ、分かった。で、俺に喋ったからには何かあるんだろ?」
「ハハ、そうだ。策もある。 側近の俺としては真実を知りたいし、
何より……最終兵器があるとなると迂闊な行動も取れない。
序列2位もいまではただの冠。だから、俺と協力してほしいんだ。」
「林は、林には話したのか?」
「あいつは……フェロモンの能力があるからな。任務で忙しいらしい。
昨日はあってない。スケジュールだと『調達隊』に配属されっぱなしだ。」
「そうか、俺たち林抜きで……。」
「心配するな。戦力には事欠かない。それに、お前の『眼』も必要だ。」
「だけど、俺も高嶺の教育があるし、いつでもできるってわけじゃ……。」
「その点については問題ない。お前は養育係で優遇されること間違いなしだ。
お前に問題があれば宮ノ小路様も黙っちゃいない。下手すりゃ側近使って止めるはずだ。
そうなれば、その時だけ俺は動きやすくなる。ま、フリーの時も俺はやるつもりだけどな。」
「それと、その……危険じゃないのか? 下手に探りを入れたりしてさ。」
「宮ノ小路様に言いたい台詞だよ。だけど、さっきしらを切られた。
だが、核心を突かれていたような様子はあった。間違いない。」
「ハ、ハハ。……今日から始めるのか?」
「ああ。これ、メモだ。なんか、この事件の入口を示唆しているんだと思う。
文章の様子からしてどう考えても宮ノ小路様が隠しているのに
敢えてばらそうとしている感じだ。メモは誰にも見せるなよ。俺も写したの持ってるけど……。」
「後でじっくり見させてもらうよ。高嶺には見せていいか?」
「……子供(精神面だけだが)に見せるのは気が引けるんだが、お前が固く約束させるならいいだろ。
恐らく、お前の事を親だと思っているはずだ。賢くても親は親。
それに賢いならといてくれるかもしれん。……期待は薄いけどな。」
「それじゃ、何かあったら知らせるよ。」
「ああ、頼むぞ。」
こうして二人は別れた。メモは結局、夕食後で高嶺と二人であの個室に入る時に開いた。
「メモ、ねぇ?」
メモ容姿を開く。文章は結構な字数だ。4つ折りにしてあったので広げるとややサイズは大きかった。
ノートの1ページの半分程度のサイズだ。
『
歓迎状
この手紙を見ている者へ。 私は、宮ノ小路様に仕える者の一人だ。
だが、その待遇は他を圧倒するほどの地位で、五近の者共より高い。
影で暗躍する日々を送っている。が、そんな私も退屈な任務の日々は飽き飽きした。
私と君でゲームをしよう。君が勝てば全てを話す。宮ノ小路様に君の地位の昇格の推薦も考えよう。
おいしい話だと思うだろう? 私はこのメモが抜き取られたことを確認した時から
宮殿内、敷地内、領域内を監視することにする。だから、君が探そうとすれば
私には君がメモを抜き取った人間だとすぐにわかる。徒党を組んでも把握は容易だ。
私は逃げも隠れもしない。ただ、暗躍して君たちを見守るだけ。
最後に、歓迎状と記したが……ゲームへの招待状も送ろう。
暗号を解き、見事この私にたどり着こうものなら私が君に力を授けよう。約束する。
暗号は下記の文章だ。 では、幸運を祈る。私と、君のだ。 ~本当の序列1位 より~
序文:
宮ノ小路。宮殿にはまず、女王が居り、下々の民が居り、そして我が居る。
民には決して知られざる秘宝在り。その秘宝、民が手に取る事決して叶わぬ。
本文:
真の問題、そこに在り、そこに無き事。 死人の枕元は常に暗し。
然しそこに助言在り。又、死人の枕元下々の民の手には容易く届くことなし。
然るべき道は明るみなり。汝は明るみの道の終点、暗黙の枕元に届くこと叶う事を強く祈られる。
死人への道は明るみで待ち、汝の到着を詫びる。ただし、道は六に分かれけり。』
「……漠然と書いてある事だけじゃなぁ。」
なんとなく、わかりそうな気はする。すぐには無理そうだけど解けそうな予感はする。
だけど、全てを解いて真相に行きつくには一筋縄ではいきそうにない。
これはたぶん、序章。門を潜る段階に過ぎない。
なぜなら、ここで語られている『私』……つまり、『本当の序列1位』は
挑戦的な文面をつづっているからだ。
それに、こちらが逆に挑発しても彼は動じないだろう。
むしろこちらに侮蔑の文を送り返しかねない。敵は、馬鹿ではない。
「こっちも限界か。」
ウトウトし始めてきた高嶺がカクッと首の力が抜けて瞬時に力が入る。
睡魔には勝てないのだろう。幼い精神では無理もない。
俺は高嶺の手を引き、宮ノ小路様の元へ向かい、預けた。
そして俺はメモをポケットに入れていつもの寝床に戻った。
寝る前までメモを眺めていたが、結局意図は理解できず、一時の眠りについた。
宮殿、深夜。
「……寝てるよな。」
三鷹を眺めて呟くのは北山だった。
「養育も大変だろうが、明日はもっとハードになるんだ。しっかり寝とけよ。
俺は、見えたぜ。門を潜る道が。明日、お前に伝えるからな。」
寝ていて、誰も聞くはずがない声。独り言のようだが、三鷹に向かってしっかり小声で発せられた。
まるである種の決意のように言葉は強く彼を動かした。
夜闇を駆ける、序列2位。
「死人、6に分かれる道……全部、理解できたぜ。いらない前置き書きやがって……!!」
彼は、宮殿からやや離れた宮殿の門番をしている者の元へと向かった。
文面に綴られた、示唆された事は、確かにそこにあったのだった――――
『女王のために彼らは傅く』編はここでおしまいです。
ただ、ストーリーは続いて次のサブタイトルが変更になるだけです!
いらない思索ばっかりしててすみません!
感想等々お待ちしております。評価もよろしくです!