They wait upon for the Queen Ⅲ
サブタイトル『They wait upon for the Queen / 女王のために彼らは傅く Ⅲ』
※三鷹 道介視点です。
「宮ノ小路様。任務達成の報告に参りました。」
「そう、ご苦労だったわ。北山、林、そして三鷹。」
コツコツと歩く音が耳に届く。
俺たちは無事に命を達成し、今宮ノ小路様の宮殿内にいる。
宮殿には人間のみが立ち入りを許されているが、宮ノ小路様の配下には……ゾンビもいる。
知能あるゾンビ。人間のように動けるゾンビ。
俺は配下にそのようなゾンビがいても、奴隷のような扱いを受けるのだろうか? と
疑問に思っていた。そもそも配下に入れて一体何ができるのかとすら思うほどに
ゾンビに対する評価は低かった。何しろ、辺りを徘徊する奴らは、
ノロマで考えもせず、しゃべりもしない。知る人ぞ知る『デク人形』。
人を食うこと以外には何も恐怖する事がないのだ。
ただ、今はただのゾンビは相当少ない。殺されたのか、餓死したのかは分からないがとにかく、
数は見ない。
それどころか、今はゾンビのできうる範囲の水準がどんどん上がっているらしい。
酔狂な研究家がゾンビについて熱心になっていて、
それを世にばらまいているのが原因と聞くが真意は定かではない。
その、酔狂な研究家は今どのような事をしているのか俺にはさっぱりだが、
世にゾンビをばらまいたぐらいなんだからクレイジーな奴だと思っている。
そうでなきゃ、世の中こんなに狂いはしなかったさ。
トントン と少女の背中を押す。
少女は疑問符を浮かべたような顔で俺の顔を見上げていた。
「行くよ。」
少女の背中を押しながら宮ノ小路様の傍による。
「シートゥエルヴの……子です。」
「そう、これが……。今回の件、本当に助かったわ。ありがとう。
あなた方3名には休暇を与えるわ。ゆっくり休みなさい。」
「え、いや、まだ引き続いて別の任務をするのではなくてですか?」
とっさに声を出したのは北山だ。
「北山、あなたは特に今回の任務では大きな役割を果たしていたはずよ。
あなたの『爆発余波』がなかったら
そもそも任務は成功に導くことはできなかったわ。いい? これは命令よ。
休暇を取って、次に備えなさい。」
「は、はい。」
「分かったのなら、いいのよ。下がっていいわ。」
「分かりました。……失礼します。」
やや残念そうな表情で北山は部屋を後にした。
「ぼ、僕も失礼します。」
林もそそくさと出て行ってしまった。フェロモンは長時間使っていたからな、
疲れも出て当然といえば当然だろう。
さて、俺も長居は無用だ。宮ノ小路様にはこの子の事があるだろうし……。
「僕も失礼させていただきま――――」
「待って。三鷹はここに残りなさい。話があるの。」
「話、ですか?」
一体どんな話なんだろうか。お告げ……とか?
「ええ。この子は『世に改変を齎す』子。一体どんな名前を付けてあげればいいのか、
一緒に考えてくれないかしら?」
「え、あ、俺がですか? 荷が重すぎますよ。それにこの子は……」
少女を見ると、じーっとこちらを見つめてくる。まさか、俺の事を親だとでも思っているのか?
「分かったかしら。その子はあなたの事を親だと思っているようですし、
あなたも名前を考えるべきなんです。それに、あなたはこの子を養育しなきゃいけないわ。」
「な、なんですって……!?」
俺が、親? 養育? ちょっと待ってくれ。俺には……荷が重い!
そもそも非戦闘能力関係の俺は食糧調達の任務も多いんだ。
食料に響けば養育どころじゃなくなるんじゃないか?
貯蔵分があるわけでもないし……。
「飲み食いを全部俺が……?」
「そうね。でも、この子なかなか成長具合も良好だわ。
勉強もすぐにできそうね。」
「勉強させるんですか!?」
「日本語くらいは軽くマスターしてもらわないと困るわ。
それから戦闘訓練も積ませないといけないし、やる事は山積みよ?」
「そ、そうですか……。頑張ります。」
「ふふ、よろしく頼むわ。期待してるわよ。」
「は、はい……。」
「それで、名前の件なんだけど。」
「……日本名でですか?」
「もちろんよ。」
ここだけ調子が強かった。なぜだろう?
「……名字はどうします?」
「そうね、宮ノ小路でいいんじゃないかしら?」
宮ノ小路……というと、この子も様づけになるのだろう。
そうすると名前で分けなきゃいけなくなる。呼びやすい名前じゃないと後々困るな。
そうだな……うーん。
「……高嶺というのはいかがでしょうか。『高い』に山と領の『嶺』です。」
「ふーん、あなた、いいセンスしてるじゃない。」
「勿体ないお言葉です。」
「決まりね。あなたの名前は高嶺! いいわね、高嶺?」
「……。」
無反応の少女『高嶺』。
「……ふぅ、仕方ないですね。」
ポンッ 手を頭において、声をかける。
「自分の名前だぞ。 今日から、『高嶺』だ。た・か・ね。いいな?」
「……コクッ」
頷いただと?
……ま、反応を見せたんだ。これで決まりだ。名前があってようやく呼びやすくなった。
だが、養育係に任命されちまうなんてな……。北山、林と任務は組めなくなるってことか。
残念だ……。最後に、爆破ミッションなんて気持ちのいい任務を果たしたかった……!!
なんてな、ゲームのやり過ぎたせいか。以前は結構夢中になってやってたからな。
今はそんなものなんてない。あるのは現実だけだ。
娯楽のためのものは全部使えない。それが今なんだ……。
「ふー、明日から養育だッ!」
結局、明日からに決まった。覚えが良いというか、記憶能力が凄いから
今日中に女としての基礎を全て叩き込むと宮ノ小路様は言っていた。
日本語よりも先に女を教えるのはまぁ賛成だが、順序は間違ってなかったと考えたい……。
たぶん、女としての基礎って、生活の事だろう。
ならば、明日は普通に日本語を教えてあげられるってことだ。
戦闘訓練については俺は聞いちゃぁいないが、俺は管轄外。
宮殿の側近辺りに教わるだろう。この分じゃ能力の開花も近そうだ。
「もう寝るか。どうせあいつらも寝てるだろ……。」
そう、北山は戦闘向けの任務ばかりこなしていたからだろうが、
俺たちはそこまで労働に慣れていない。だから夜全力を出すことは本当に疲れる。
夜目が利かなかった俺は能力で何とか補っていたものの、
警戒し続けるのはつらい。疲れもどっとあふれてきた。
……そして、朝が来た。
宮殿は広く、仕える人間は入口の間で寝ることになっている。部屋がないからだ。
側近のみが個室を持っていて、それ以外は事務など。凡人には手に入らない。
「ん~……」
「な、なんだこの声?」
俺は群がって寝るのを嫌う。1週間ほど前、どこかの集団が夜に奇襲をかけてきて、
パニクったやつらが俺を下敷きのごとく踏みつけて俺が逃げられず、
結局その集団にやられそうにあったからだ。
それ以降俺は大勢で寝るのはトラウマなんだ。
しかし……誰かが隣にいるんだ。俺は一はずらしていない。なら、
誰かが俺のそばに来たってことか。一体誰が……
「……うぅぅ、ぅ?」
やがて眼を開けたその人。いや、その女性。
顔をのぞき見てやろうと思い、そっと顔を見る。
「……高嶺か?」
高嶺は眠たそうに上半身を起こす。
服を着ているが室内のような衣装だ。戦闘訓練はなさそうだな。
「ミッケ?」
「は、ミケ……ミッケ?」
「ミッケー!」
「ゥグッ! な、なんなんだ。ミッケって……こら、あんまり抱きつくなって!」
こいつ、相当うれしそうだ。昨日何かあったのか?
本当に生活のことについては色々と学んできたようだが、
日本語はやっぱり俺が教えなきゃならなそうだぞ……。
「と、とにかく宮ノ小路様のところに戻るぞ。」
立ち上がって高嶺の手を掴む。
すると、高嶺も立ち上がる。
階段を上ってテラスに行く。
「……朝も早いし、ここで時間つぶすか。」
ここにはもともと人は来ないので都合が良い。来るのは宮ノ小路様と、俺ぐらいだ。
「日本語なんて使えば自然となれるもんじゃないのか……?」
日本語の教え方についてひたすらと思考を張り巡らす三鷹 道介だった。
病気と闘って執筆しました(笑
完全にヤッテミタカッタダケーといわれそうなので
ちょっとストーリーに組み込んでみた。
『ミッケ』は三鷹の名前『道介』の最初と最後を取って着けました。
これこそ手抜きみたいな……ごめんなさい。後悔してます。
まだまだ頑張りたいと思いますので感想などあればお気軽にどうぞ!




