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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.2:Daily of a new base
50/73

Compromise

サブタイトル『Compromise / 妥協』

「くっそ、危ねぇな……!」

「ルナシーが正しかったというわけか。」

「だから僕は最初からグッ……」

回避を試みた5名。手傷を負わせることはできなかった。が、

避けた代償は大きかった!


「おうおう、随分と必死じゃねえか。」

加川を向いて啓が言った。

「何が、いいたい?」

冷や汗が目立つ顔で加川は返した。

「あのな、俺たちはあんたらこうしたからって殺したり派手に荒らしたりはしねぇ。

ただな、穏便に事を運びたかったってことは一緒だろ?」

平然と語る事が逆に働き結果的に――――

「貴様……!」

――――反する意識を買ってしまっていた。

「そんなに(にら)むなっての。……で、どーする、硲?」

硲はしばし間を開けてようやく口を開いた。

「啓君。『範囲重力(ワーストエリア)』です。」

「わーった……フッ!」

啓が気合いのこもった一声を出した次の瞬間、周辺から砕け、崩れる音が小さく鳴った。

「グワッ!!」

「か、体が重……!」

当りの脆くなったモノが崩れゆく音だと気づくのは後れを取った後だった。


「どうです、重力の重みでつぶされる感覚は?」

「危険因子だ……!」

硲がそれを聞いてあきれた様子で背を向けた。

「そうですか。私たちとあなた方はなれあうことは難しいようですね。

ならば私達はおとなしく去りましょう。」

「お、おい、硲?」

啓がきょとんとした様子で聞いてきた。

しかし、硲は元の座っていた風の筒抜けるような窓に手をつけて次のように言った。

「あなた方が他の研究員と接触を起こすなんてことは想定外でしたが、

それでも揺るぎはしませんでしたよ。『あなた方が簡単に倒れてしまう』事には。」

重力空間でほとんどの身動きが封じられた中、啓と硲だけが淡々と動き続けている。

その中で抗おうと動き出した者がいた。

「ふっざけんなよ……!」

壁を支えにしてようやく立ち上がったのは相馬(そうま) 來斗(らいと)

「ついでに言っておきますが、重力効果は私にも同様にあります。

この程度で倒れてしまうようでは力の差は歴然! 違いますか?」

「確証もない事を……!」

「では……」

そういうと啓が引きつけて砕けたがれきの中でもひときわ大きい残骸を片手で拾い上げる。

それはだれがどう見ても『一抱えもある大きさ』であった。

「な!」

「あんな大きさのを!」

硲は片手で涼しげとした様子で持ちあげた。

そして、壁に叩きつけた!

ゴシャァァ!


「これでも、信用なりませんかね?」

周りが鎮まり返る。

立ち上がった相馬ですらも、戦意喪失を起こさせるほどの圧倒的な差を

痛感させる行動だった。

「では、失礼。啓、『氷結魔術(ブリザード)』です!」

「任せろッ! ハァァァァ!」

啓と硲が遮断物のない窓から跳躍した。

その跳躍は並々のものではなく、道路を挟むビルとビルの間までの距離の移動を可能にしていた!

「化け物め!」

飛び移ると、重力空間の効力が一気に消え去った!


パッ


「ガハッ!」

「元に戻ったか?」

「くそが!」

「正気、かしら? はぁ、はぁ」

「うぐ……なんて距離だ。」

そして、会話から数秒開けると冷気が漂い始めたことに皆が気がついた。


「まずい! 逃げろ! 冷気から離れるんだ!」

「なんて奴らだよ!」

「あーもう!」

「この辺一帯が全部攻撃範囲だ! 逃げ切れない!」

「……。」

ルナシーが敵の能力を敏感に察知するが、脅威はぬぐえないほど強大だった!






























「ふぅー、一応氷は使えたか。」

「では、幽君の元へ急ぎましょう。」

「全くよー。硲もちょっとぐらいは考えとか教えてくれたっていいだろ!」

「フフ、毎度の事じゃありませんか。それに、

こんなこと啓君意外にやったら離れてしまいますし。」

「うがぁぁぁぁぁ! 俺もそろそろ嫌気さしてきたんだって事に気付いてくれよ!」

啓が事の終わりで気を緩めたのか、弾むような会話が交わされた。

そして幽の元へと一刻を急ぐ勢いで向かった。




「――――なるほどな。大体わかった。いや、分からないことだらけだが……。」

「どっちだよ、幽にぃ。」

「あーもう、何やらかしてんだよ。俺たちもここに居座りづらいだろうが!」

「心配には及びませんよ。弥栄(やさか)氏の拠点に連行されることはもう

決定事項のようなものですし、そうなればここに居座る意味も薄いです。

とにかく、ここはひとつ協力してください。聖奈のためでしょう?」

「そりゃ、そうだが……。」

まるで、悪魔のささやきだ……! こうも弱みに付け込まれるなんて、俺とした事が……。

「悪魔のささやきみたいだな。」

藤島が考えていた事をスパッと言ってくれた。

「忙しい奴だな、啓だったっけ? お前も大変そうだな。」

九が後半をつけたしたかのように言うと、

「硲といると疲れるぜ? 今晩まではしっかり休んどけよ?

加川も急にここに来るなんてことはないだろうからさ。」

「あ、ああ。マジかよぉ……。」

九がガックリと項垂(うなだ)れる。

「問題は討伐の方だ。作戦の方はいいのか?」

大門さんが硲に聞いた。

「それについては簡単です。作戦はなしでも十分ですから、ご安心を。」

そういうと、『そろそろ時間ですので』といって足早に去って行ってしまった。


硲も一応約束の頃には戻ってくるようだったが、果たしてアジトの監視がどこまでの

ものなのか・・・・・・警戒しなければならないようだ。夜に妙な動きがあれば必ず

向こうも動くはずだ。







そして、各自、束の間の休息を取っていると、急かすように時間は訪れた。

幸いなのは一グループごとにビル1つを与えられているところだろうか。

この状況のおかげで硲と面談する時には周りを気にしなくて済んだのだ。

しかし、夜は流石に……能力については気をつけないと。

そんなことを考えていると


「幽君?」

「な、硲!」

「迎えに来ましたよ。あちらも一足早く到着したようです。」

「ハ、ハハ。妙な胸騒ぎがするな。」

冗談交じりに言うと硲は深刻そうな顔つきでいった。

「……とんでもないVIPも一緒のようです。気を抜かないでください。」

あたりの闇がこちらを覆ってしまうかのような沈黙が入り込んできた。

「と、とにかく行こう。」

俺がそういうと皆は各自、武器を取ってビルを後にした。

さようなら、俺たちはもうここには……残れない。

武器とともに、今まで背負ってきたリュックも共に持ち歩きだした。

黒に包まれた街中で俺たちはアジトを脱する決意を堅くし、硲について行くのだった。

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