Mission or plan?
サブタイトル『Mission or plan / 実行? 計画?』
「神だって?」
「ええ。」
「どう聞いても繋がりなんてないと思うぜ。」
藤島の一般論は有力だ。ゾンビのある今にそれを持ち込めるというのはある意味で
人として大切なものなのだと思う。
「ま、あれですよ。学校の授業で稀にある小ネタだと思って聞いてください。」
「あんたもそういうこと言うんだな。」
「おかしいですか? 過去の私はこういう話題も多かったものでしてね。」
硲にも、人としての生活はあったのか?
想像もつかないほど今のイメージとは似つかない。
「さて、皆さんは神についてどう思いますかね?」
「神か。迷信にすぎないんじゃないか?」
幽は素直に答えた。
「信じるってのもおかしな話だけど、みんなは好きそうだな。」
「藤島はあれか。テスト前にしか祈らないタイプじゃね?」
「九、どうしてお前がそれを……!」
「んな口調と態度してりゃわかるよ。そこまで頭悪い学校には入ってなさそうだがな……。」
「見透かされていそうで怖いぜ! もうやめろおぉぉ!」
硲が続きを話し始めた。
「ま、実在はしないというのは勿論なんですけど……祈る風習も過去にはあったわけです。
ここの話だけじゃなく、色々な土地が、色々な国がね。
不思議と祈る事には馴染みのある場所は多いんです。」
「それが、何か関係があるのか?」
影山 日向が言った。
「噂でしかないのですが、今回……大きな陰謀が絡んでいるのではないかと推測しているんです。
野に放つゾンビとしては規模が大きく、目立つ狩猟隊の派遣。
他にも色々と奇妙な事象は発生しています。」
「例えばどういうこととか?」
九が質問した。
「そうですね……。ミネ、いや……とある研究者の来訪がありましてね。
それがまさしく何かの予兆。私のように頻繁に外界を動き回る方はそう多くはありません。
何かの目的があっての行動。さきほどのゾンビの件について、結びがないとは言い切れません。」
「他にも来てたんだな。」
「お前みたいなのがまだいるのか!?」
「色々と動き出している人も多いみたいですね。」
「なら、敵は多いということか?」
会話が進み、硲が答えた。
「そちらのほうはあまり干渉できないでしょうから、考えなくても問題ありません。
しかし……これは隠密に事を運ばなければなりません。」
「どういうことなんだ? 研究者は問題外と言っておいて、まだ何かあるのか?」
「研究者が敵になるのはゾンビの資料入手後、狩猟隊の始末後です。
以前接触した組織に気になる発言がありましてね。
『全知全能の神誕生計画』という名前が出ていました。
組織単位で大ごとなのは間違いありません。今回はその計画の一部の可能性が高い……。」
「それをつぶそうってわけか。」
「はい。ここで止めなければ、その脅威は世界にまで届く……!」
「お前は、どこかに組織していない保証はあるのか?」
「クク、私はゾンビの出現前にしか組織してませんよ。多少面識のある方と
コンタクトは取ってはいますがね。少数精鋭ってご存知ですか?」
「他とかかわる気はないってわけか。」
「ええ、研究成果を盗まれる可能性も今は非常に高いですからね。」
硲の言葉にはどこか真剣見があった。
「で、その計画とやらは達成されるとどうなるんだ?」
「……神がこの世に誕生するんですかね。最も組織にとって都合のよい神様になるはずですけれども。
問題はその神がどの程度の能力で何をするのか。ということです。」
「それは見当もつかないな……。セカンドってことは、前回何かあったのか?」
「それは、裏も取れています。初代の計画はありました。
神と呼ばれるはずの固体は正常に誕生し、成長していきました。しかし……。」
「原因不明の症状で死んだ、とか?」
「いえ、ただその固体は……研究所を脱走してしまいまして。」
「な、なんだって?」
藤島が顔をひくつかせて聞いた。
「その固体は脱走して、今も尚この世のどこかを徘徊し続けているってことです。」
「ちょッ、それ本当なのか!?」
「……紛れもない事実です。」
「そ、その神ってどんなのだ? どんな形してんだ!?」
「人型ですよ。確か、被検体は少女のはずでした。」
「硲、どこでその情報を手に入れたんだ?」
幽が疑う口調で聞いた。
「こういう事してますからね。色々と探りを入れていたんです。最も、深い関わりはないです。」
「ってことは、もうすでに神はどこかに存在してるんだな?」
「……実際にはそういうことです。」
「んじゃ、そろそろ狩猟隊とかについて話そうぜ。計画そのものには無縁だろ?」
「そう、ですね。
今回、協力していただきたいんです。あなた方に。ゾンビと狩猟隊。
両方は私と啓君では無理があります。奇襲を手伝っていただきたいんですよ。」
「見返りは?」
「アジトの人間の中で、気になる人間の能力をこっそり教えて差し上げますよ。」
「それだけ……?」
「嫌ですか。なら……ちょっとした能力の秘密でも教えて差し上げましょう。それでいかがですか?」
「どうする、みんな?」
「乗っからないほうがいいんじゃないか? どう聞いても危ないぜ。」
「そうだな。今は安全確保。安全第一だろう。」
「聖奈は、どっちでもいいよー?」
「僕もあまり気乗りしないです……。」
「私も反対だ。」
「んや、俺はやってみたいね。」
「わ、私は……どっちでもいいかな。」
「幽君、君は?」
「俺は……賛成、かな。」
「幽、マジなのか!?」
「今回の事件、本当に危険だ。だけど、避けてるようじゃ……いつか俺たちもやられる。
これはチャンスなんだ。ゾンビの裏について知るまたとない機会だとは思わないか?
俺は知りたい。そして、生き伸びたい。能力とか、関係は持ったのは仕方のないことだけど、
諦めたりはしないよ。俺は、俺のやり方で生を掴む。俺の力で未来を掴む。」
反論は多いか。なら、メンバーは半数程度ってことになるのか。仕方がないが、
成功の暁には、みんなには知り得た事実をちゃんと伝えないとな。
「幽がやるなら、俺もやる。」
「……リーダーがやるのなら、それに従わないとな。」
「聖奈、頑張るよ!」
「それでこそ、幽だぜ!」
「決まりですね。詳細はこちらで固めてから伝えますので、その時まで……。」
そういうと、硲は立ち去ってしまった。
「悪いな、硲はここに来てから忙しいんだ。俺も手伝わないと……。
幽にぃ、次合うときは、決戦だ。覚悟しておいてよ?」
啓もそう言い残すと、硲の跡を追った。
今回、ゾンビの思わぬ事態はアジトを巻き込まなかったが
幽一行は確実に踏み込みつつあった。『神の計画』の領域に……。