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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.2:Daily of a new base
43/73

Personality

サブタイトル『Personality / 人格』

「座光寺ッ!!」

夜久の大きな声があたりのビル群に響いた!!















「……!」

「勝負あったわね!」

「座光寺!!」

ぽたっと一滴の血が落ちる。

その後、不敵な笑みを座光寺が浮かべる。

「フフ、その程度で勝者気取りか?」

「な、なんですって?」

(かす)っただけだよ。気迫は凄かったけど、腕は(なまくら)なのかな?」

「クッ……このぉ!」

冷静さを欠いていて、気迫だけ発せされている彼女の懐に蹴りを入れるのは至極容易だった。

接近しようとする物体にそれを上回る大きな力で衝突させた時の威力は計り知れないものとなった。

「ウゥ……ち、畜生……!」

ジュミネィもフラーウィンドも勢いを失いかけていた。

残すはミネリーのみ。

「相馬、この女を見ておいて。」

「お、俺か? なぜだ?」

「まだやらなきゃならないことがあるんだ。」

「……今は緊急事態だからな。引き受けてやる。だが、やるからにはしくじるなよ?」

「任せておいてよ。」

そういって座光寺が進んだ方向は……


「聖奈……また厄介なことに。」

「ウフフ、なかなか面倒そうな表情ね。そんなにこの娘が大事?」

「アジトへ脅迫するとは、なんと横暴な! これが何を意味するかわかっているのですか?」

「さて、何を意味するのかしらね。」

「……私に語らせるつもりですか。言わずともわかるでしょう!? これは……戦争ですよ!?」

「そんなに御大層ないい方しなくてもよいじゃない。団体での相手も許容範囲よ?」

「バカ言わないでください……! 新堂家も逸材が揃っている。率いる面子も厄介ものばかり。

戦っても勝機はかなり薄い。自殺行為ですよ!」

「あなたがそこまでうろたえるなんて、この上なく面白そうじゃない! いいわ、その戦争、

引き受けてあげる!」


「そうはいかないよ。」

「へ?」

ミネリーが硲の後ろから迫る座光寺を見た。

「あなたは……。」

「自己紹介はなしでもいいよね?」

「そうね、今は必要ないわ。」

「とりあえず、君たち面倒だから……出て行ってくれないかな!」

自分を顧みずに頭部狙いの蹴り。

見事に空振りだが、座光寺は予想していたかの如く体勢を立て直した。

「座光寺家らしい戦い方ね!」

ミネリーが発する言葉も耳に入れず座光寺は攻め続けた。

片腕、片足、どの攻撃も素早く放たれ次の動作への隙が生じることを許さなかった。

間一髪であしらうミネリーだが、距離はなかなか開かなかった。

「フフ、もしかして超常現象系(ポルターガイスト)の能力じゃなかったの? 勿体ない。加護系(セルフ)かしら?」

「生憎便利そうな能力はほかのみんなに持って行かれちゃってね。でも、実力じゃ負けないよ!」

そう言いながら放った拳はミネリーの頬を掠めた。

「流石に座光寺家相手だと加護系(セルフ)でも強いわね……!」

「残念だけどあなたの舞台は幕切れよ。これでどう!?」

バッと目の前につきだされた少女。苦しそうな表情で思わず動きを止めた。

彼をそこまでにさせたのは『新堂』という単語が関わっていたからだ。

座光寺は聖奈が新堂とどういった関わりがあるのかを知らないが、会話から生まれた焦燥が

座光寺に動きを止めるほどの影響を与えたのはゆるぎない事実であった。

「この娘、死ぬわよ?」


その時、啓がミネリー

「幕切れなのは、てめぇのほうだよ!」

その次の瞬間、ミネリーの顔面真横で衝撃が走った!


パンッ


「ちっ、そういえば硲の連れは相当な能力者だったわね……。」

「舐めてもらっちゃぁ困るなぁ! 俺の能力は一筋縄で攻略できると思うなよ?」

「爆発……いや、あれも衝撃を与える能力か? 何もない空間から衝撃波を……。

空気を圧縮する能力かしら……?」

「いやぁ、取り込み中のところすまないが、俺の能力は一つだけじゃない。

そこらへんも脳内に叩き込んでほしいね!」

「複数能力ですって? 硲の研究はそこまで進んでいたっていうの!?」

キッと硲のほうを見るが、聖奈が解放されたのを見て硲は再び傍観者のような視線に戻った。

片時も安堵のある姿勢で心境も安定に近づいている。

一度安定するとブレがない硲には、冷静さを欠いたものが負けといっても過言ではない。


「君、大丈夫?」

「え、うん。お兄チャン、誰?」

「座光寺 雅。詳しいことはまたの機会に。今は安全第一さ。」

新堂とまた一つ、関係を得た座光寺。

聖那は敵意こそ示さなかったが、信頼にいたるほどではなかった。


「あなたは二人を連れて退却してください。これ以上騒がれると面倒なんですよ。」

「ザコ引き連れて王様、いや、女王様気分ってか? 他でやってくれ。」

「ク……覚えていなさいよ!」

フラーウィンドに近づくと、目を閉じて集中した。

手には黄色で透明感がある物体を持っていた。

「……『浮力の光(フロート)』」

その後、フラーウィンドの体を軽々と持ち上げて、肩に乗せた。

「ジュミネィから離れて頂戴。」

「……この戦いも終わりか。」

そう言ってジュミネィから距離をとった。

ジュミネィの体もひょぃと持ち上げ、右手で抱えた。

「次合った時は覚悟なさい。」

捨て台詞を吐いて、ミネリーは去った。


「お、おい、硲。なんで逃がしたんだよ!」

「ミネリーは我々の手で殺すべきではない。それに、今殺すべきでもないんです。

彼女はとある組織の重要なメンバーの一人であると推測しています。それがもし本当なら、

我々は敵対することになるでしょう。対立ならまだいいですよ。でも、

殺してしまったら……ゾンビ大戦とでもいうべき革命が起こってもおかしくはないはずです。」

「壮大な背景だな。そしたら、ミネリーはずっと付きまとうのか?」

「殺さなければ危害を加えても文句はないでしょう。フラーウィンドとか言いましたかね?

あのような、連れてきた部下を始末すればミネリーは必ず引くでしょうね。ザコを殺せばいいんじゃないですか?」

「まともっぽいが結構曖昧だな……。」

「フフ、確実なんてものが手に入るなら私もぜひ手に入れてみたい!」

「はぁ~……。そろそろ行こ――――」

「それはまだ早い!」

「はッ!!?」


「えっと、あなた方は?」

相馬が硲に声をかけてきた。

「……私は、 江田 硲というものです。以後、お見知りおきを。」

「俺は……えーっと、啓! 啓だ。……よろしくな!!」

自己紹介に啓が戸惑いを覚えた。その理由は、座光寺だった。

(思わず口から出ちまいそうになったが、座光寺とか呼ばれてたやつ……新堂って言葉に

何かと反応している気がするからな。様子を見てからでも遅くはないだろ。)

そう思った啓。座光寺の行動には明らかに新堂を意識するものがあると啓はにらんでいた。

「見も知らぬ方々に戦ってもらってしまったな。我々の事件なのに……すまなかった!」

「いえいえ、大丈夫ですよ。こちらも無事でしたし。」

「あ、ああ。ま、結果オーライ!」

「疲れもたまっているだろ? 休憩所に使っている場所まで案内したい。同行願えないだろうか!」

「それでは、お言葉に甘えて。」

「っはー!」

(啓君、やけに別の人物を演じていますね。何か企んでいるのでしょうか……?)

口には出さなかったが硲も啓の異様さに疑惑した。

「ところで、啓君。その腕は……?」

「腕? 腕って、これがどう……ァ゛!」

啓の腕はゾンビ化が進んでいて、常人にはあり得ないものとなっていた。

ごまかしようのない異形の腕が視線を集めた。

「こ、これは……俺の能力だ! いやー、今のご時世いつどこから襲われるかわからないし!

戦っていない時だって常に準備万端にしとかないと勝てる相手も勝てないからなッ!!」

啓は焦燥に駆られながらも言い放った。反応は……

「ふむ、啓君の言うとおりだ。戦う準備は大切だな。我々も体制強化を呼びかけなくてはならんな。」

「そうね。この先何が起こるか分からないもの。」

(な、なんとか通った!? 危ねぇなぁ、おい!)


「ウグッ……!」

後ろで苦しむ声。全員が振り向く。

「……聖奈?」

聖奈が、苦しそうにしていた。すぐに膝を屈して、本格的にもがき始めた!

「な、おい! しっかりしろ!」

「い、いったい何が……。」

「うぐぅぅぅ!」

「おい、何かされたのか!?」

聖那は、か細い声で言った。

「ウウ、へ、変な注射打たれちゃったよぉ……」

場の全員に衝撃が走った。

「な、何!?」

「ミネリー、とんだ置き土産を……!」

「すぐに運んだほうがいいんじゃない!?」

「急ごう。まだ間に合う!」

「いや、これはそんな生易しいものではない……!!」

聖奈の目つきが変わり始めた。しかし、矛盾がさらに困惑を招いた。

「な、泣いてる……?」

「苦しいのか!?」

「こ、来ないで……!」

「ど、どうして!?」

「速く、自分が抑えられそうにないの……!!」

「バカ、そんなこと言ってる場合じゃねぇよ!」

「速く、速く……!!」

歯を食いしばって必死に耐える聖奈は、啓にも大きな影響を与えていた。

「何があったってんだ……!」

「落ち着いてください、啓君。」

「あ、ああ。わかってる。けど……。」

「……組織の陰謀か何か? それとも、自発的な覚醒? 注射は覚醒促進剤のようなものでしょうか?」

「逃げて、早く!!」

次に瞬間、聖奈を中心に衝撃波が生じ、場のものを全て吹き飛ばした!

「ウゴッ」

「ケホッケホッ なんだ!?」

「思惑通り……! 最悪のシナリオですか!」

「聖奈!?」


目は意識がありそうなのだが、空を見上げている。瞳は充血とは違うような、

紅色に染まっていた。

「聖奈は、攻撃系の能力か?」

「違ったはずです。こんなこと、今までには……。」


聖奈は小さな声で立ち膝状態で空を見上げながら言った。

「助けて……幽にぃ、啓にぃ……。」

そして、その言葉は啓の耳にははっきりと聞き取れた。

「聖奈……まだ気にしてくれて……。」

啓もか細い声で言った。聞き取ったものはいなかった。

バチバチッと音が発せられる。黒い雲が覆っていて、ポツポツと雨が降り始めていた。

戦いの終わりは訪れていたにもかかわらず、聖奈は苦しみ続けている。

今回の一連の事件はまだ終わりを告げてはいなかった……!

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