表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.2:Daily of a new base
39/73

A third party

サブタイトル『A third party / 第三者』

現在 スタートから14分07秒が経過していた。  残り時間 15分53秒。











「まだ、終われねェ……」

力が抜けた体を必死に支えた。硲はまだ余力を残してやがったか。

本気を出しても、届かなかった……。

100m程度の距離を歩いてみたが、相当ダメージが大きい。負担でミシミシと震えてやがる……。

その場でグッと体を直立状態にする。一歩たりとも動かないが、力んだ表情が表に出ていた。

その時、(いちじく)の言葉が脳裏に浮かんだ。


『死ぬのが怖くて戦ってられるかっての。』


……そうだ、あいつは言っていた。

だけどもっと重みがあったのは……


『そんなんじゃいつまでたってもあいつに負けちまうぞ』


(いちじく)はハッキリと言っていた。確かあの時俺が直前に言っていた言葉は、

『悪いが、俺は人間の心を捨てるつもりは無いんでな。』だったな。


あんなこと、やってたよ。あの時以上に重い意味が伝わってきた気がする。


……どうすりゃいいんだ? 九の言葉のように……人間の心を捨てればいいのか?

九は人間の心を捨ててきたのか? 戦う度に?

その時、響く声が聞こえた。


――――新堂 幽! 聞こえるか!――――


この声は、東条 春!!

――――聞こえるなら、片手をあげてくれ!――――

片手をあげればいいのか? それなら、矛をもった左手で……。左手を俺は上げた。

――――OK! そこから動かずに待っててくれよ! もう下げていいぞ!――――

俺は腕を下げた。

う、立っている状態が辛い。ここまで消耗が激しいとは。

「いた、いたぞ! こっちだ!」

見知らぬ人の声がした。声の方向を向くと、続々と人が現れた。

「新堂! こんなところにいたか!」

「春……! どうしてここに。」

「そりゃぁこっちのセリフだぜ。人気のないところで突っ立ってて何してたんだ?」

「う、動けねぇンだ……。」

「へ?」

「この状態から動かせねェンだ。すげぇ、疲れて……ゥオッ!?」

ドサッと横に倒れた。

「おい、どうしたんだ!? マジか、こんなところで……!」

担架(たんか)みたいなものはあるか!」

「準備してある! いつでもいける!」

「よし、運ぶぞ!」

こうして、俺は運ばれた。場所は、アジト内だが本拠のビルとは少し遠くの位置にある建物だった。

それでも、ビルの大きさは問題ない。7階まであり、横に広い。

「しっかりしろ!」

「あ、ああ、大丈……夫だ。」

「心配しなくてもいいぞ。ここには、今は戦闘部隊がかなり集まってるからな。

事情は影山ってやつから聞いた。ゲームはもう始まっちまってるらしいな。

殺人ゲームって感じなのかどうかはしらねぇが、厄介なことってのは間違いないみたいだな。」

「あ、ああ。お前たちも油断するな……!」

「戦闘部隊がいるじゃねぇかよ。それに、合流してない部隊もあるが死亡報告はまだねぇしよ。」

まだ、届いていないだと?  ……そうか、周囲への警戒が薄くなったから周りに目が行ってないんだ。

だから俺が目にした光景がいきわたっていないことにも納得がいく。

「死んだ人間はいるぞ……。」

「なんだと!?」

「俺は見た! あいつらが殺してる姿を!」

「許せねェな。なら、もう被害は予想以上だ!」

放った声を遮るかのように次の瞬間、扉が大きな音を立てて開かれた。

「……真剣な目つきでどうした?」

扉を開けていたのは……座光寺(ざこうじ) (みやび)だった!!

「おま、まだ動けたのか……!?」

「新堂 幽。あの程度で俺を超えた気になるなよ。能力があったからって調子に乗りすぎだ。」

能力……。そんなもの、あろうがなかろうが……頼って(すが)るやつはどう考えたって格下だろ!

「お前は、俺の能力を解除させたにすぎないんだ。」

能力の解除。これが如何に座光寺と密接になっていたかがわかる。

「座光寺。 能力の解除って……解けたのか?」

「春は相変わらずだね。いや、若干成長したかな?」

「そういうことか。若干って言い方はねぇだろ……。」

「悪いね。だけど、新堂 幽。君には驚かされたよ。俺様の『表裏(リバース)』」が動くとはね。」

「リバース……?」

「ああ、あいつの能力さ。『表裏(リバース)』はいつも通りの状態に自分の力を施錠(ロック)するんだ。

ヤバイ時だけ施錠(ロック)が外れて本当の力で動けるってわけ。強いのはこの状態の時のことだ。

あー、もちろん戦闘員から見たら平常時でも十分強いけどな? ただ、本当の性格まで封じちまうから、

色々と面倒な役を演じる人形ってとこだな。ロックが外れた時は口調も元に戻るし、

二重人格を作るって言ったほうが早いな。」

「二重人格……か。」

「そうだね、君とはまた手合わせ願いたいけど、今はそれどころじゃなさそうだ。」

「行くのか?」

「君をそこまでにした連中を見てみたい。」

座光寺はそこまで言うと、俺の反応を見ずに扉から出て行ってしまった。

いったい何がしたかったんだ? 俺の安否の確認か?

……そういえば、影山 日向さん。そして、聖奈はどこだろう?










一方で、硲と新堂 啓はアジトの中央側のビルの屋上にいた。

「おい、どうするんだ? 硲ぁ。あいつら以外まだ()ってねぇだろう。」

「そうですね。思ったよりも手こずってしまいました。」

硲は思い悩んだ。

「少々、ゲームをなめていました。30分というのは短すぎましたね。」

「欲張りすぎたんだ。次から気をつけろよ?」

……その時、妙な声で語りかけられた。

「んー、そうね。優秀ってのも困りものよね。」

「ッ!?」

「だ、誰だてめぇ!?」

研究員とは見てとれない容姿。Tシャツにジーパンという服装。そしてその上に羽織っているローブ。

黒くて長い髪。場違いな笑顔。

「間違いありません。彼女の名は――――」

この女性の名は……!

Minelie(ミネリー) Candorre(キャンドーレ)……!!」

「御名答。」

ミネリー・キャンドーレ……。外国の名を使いながらも日本を活動の拠点として、

ゾンビに深い関わりを急に持ち始めた謎の多い女性のはずですが。

「素晴らしいわね。能力と力の併用ってものは。完璧に人類を超越しているのよ。」

「能力名は……『氷結魔術(ブリザード)』でしたか?」

「正解。あなたって、どこまで知っているのかしら?」

「だいたいわかりますよ。顔を見ればそういう表情をしていますから。」

「へぇ。つくづく情報網が広いのね。感心するわ。」

「フフ、これくらいできなくてどうします?」

本当は『解明(クリアコード)』で読み取っているだけなんですがね。

この能力。相手の能力を読み取る能力ですが、脳内で唱えると劣化するんですよね。

脳内詠唱だと相手の『能力の名称と大まかな用途』しかわからない。

口で唱えるとこれに加えて『詳細』と『対象の能力段階(レベル)』までハッキリと伝わってきます。

これが欠点であり、長所でもあるんですが……隙あらば唱えたいですね。

「あなたは、何か能力があるの?」

「ええ。『視察系(インスペクト)』の能力ですけどね。」

「……訂正するなら今のうちよ?」

「何のことですか?」

その瞬間、ミネリーの左腕が何かを示唆する動きを見せた。その次には、

喉元に飛びつかんとする何者かが動き出していた!

「フラーウィンド! ジュミネィ! 今すぐに拘束なさい!」

「はい!」「了解!」


「ッ!?」

後ろですと!?

念入りに準備をしていたとは……。

ガッ 喉元に爪があてられている。これでは身動きが……。

「嘘ばっかり。」

ミネリーは続けた。

「あなたは厄介な存在になると思っていたわ。現に、能力も知られちゃてるわけだし。

でも、だからって嘘をつくのはよくないわよ。」

「グ……何を今更。あなたは、どういった経路かは断定できませんが、自分の情報を流出させた。

その結果が招いた末路ですよ。あなたは、自分のミスを私に押し付けようとしているだけにすぎません。」

「言いたいことはそれだけ?」

本格的に……!

私には、まだ計画が……!! こんなところで、死ぬわけには……!

啓も、冷静を装ってはいますが、動けないのでしょう……。

「あまり、恐怖ってのは好きじゃないんだけど……。その子達。感染者だから気をつけてね?」

「……!!」

感染する可能性も否めない……!

治す方法は……聖奈の血しかないですか。世界は複雑に回っていくことになりそうですね!

もう、もうすぐ……今すぐに動かなければ、計画が無駄になってしまう!

そんなこと、あってたまるものですか!!!

「……。」

不思議な、理念に捕らわれない何かが、私の欲望を支配する!!

「話しましょう。」

「そう、それでいいのよ。」

「私の能力は――――」

そう、これが、創造の力。

「『領域網羅の幻想系譜(ボーダーリズミック)』……あなたが恐れる恐怖とやらですよ!!」

硲が、状況を踏まえても尚、とたんに笑みを浮かべた!

「お、おい、硲?」

啓の呼びかけにも笑みを浮かべるだけで無気味であった。

「……見せてみろ。」

「フフフフ、ハハハ!」

ミネリーの声にも応答なし。

「……もういい、()れ! これだから恐怖というのは……!」

「はい!」

爪が振りろされる刹那でも硲は笑みを止めなかった。


シュッ


「な、な……いない!」

「一体どこに――――」

すると、別の場所から声が聞こえてきた。

「ここですよ。ミネリーさん。」

「!?」

硲は無傷でそこにいた。余裕の笑みを含めながら……。

「ククク、短時間とはいえ、ずいぶんと節操のない真似をしてくれましたね?」

「あなたいったいどうやって……。」

彼女の質問は、すべてが終わってから余裕の笑みでこたえて差し上げましょう。

「このご恩、全てをそっくりそのまま……私の施しを加えてからお返ししてあげますよ!!」

硲の眼が不敵な笑みで、且つ鋭くミネリーを睨みつけた!

「『領域網羅の幻想系譜(ボーダーリズミック)』の力を見せてあげましょう!」


現在、スタートから27分01秒が経過していた。 残り時間 2分59秒。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ