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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.2:Daily of a new base
37/73

Start of the game

サブタイトル『Start of the game / 遊戯の始まり』

「さて、始めましょうか。秘密裏の羅刹遊戯(ジェノサイド)をね……ッ!」

「……硲めッ!」

誰か、気づいてくれ! アジトの皆! 侵入者の存在に気づいてくれ!! 頼む!


くそ……! 誰か、この状況を知る人間は他にはいないっていうのか!?












「何がジェノサイドだ! ここで何をしようって言うんだよ!」

東条 春がギラつく目つきで硲に向かって叫ぶ。

「ゲームですよ。あなたはここ一帯を使って私とゲームをするんです。」

「何がゲームだ! 付き合ってられるか!」

「強制はしません。その場合は私がこの辺にいる人間を片っ端から殺していくだけですから。」

「ふっっっっざけんなッ!」

「まったく、……本当の辛さも知らない餓鬼(がき)が……ッ!」

ギンッ! 硲の目が、急におぞましい雰囲気を放つかのように……!?

東条は片言もしゃべらなくなり、勢いも凍結したかのようになくなった。

「……ようやく、静かになりましたね。」

冷たい空気が辺りを包む。啓は以前のまま、爪を立てている。佐久は動けないままだ。

「さて、ゲームの説明ですかね。 ルールは至ってシンプル。

私達が鬼。で、君達が鬼を捕まえる。たったそれだけですよ。」

……鬼ごっこ?

「鬼ごっこ、か?」

「その通り。私たちをとらえる事が出来れば勝ちです。ただし、私たちは捕まるまで

通りすがりの人間を片っ端から始末していきます。もちろん、(はば)むなら貴方達にも

容赦はしません。簡単な事でしょう?」


……こいつ


かなりの勝算があるみたいだな。

「制限時間は30分。経過後、すみやかにこの場は離れます。ご理解いただけましたか?」

しかも、30分という、長期戦。一筋縄ではいかないな。

問題は、通りすがりの人間を始末していくという事だ……。

それとアジトの人間は、自由に能力は使えるのだろうか?

自由に使えないなら、この現状にも気づかないのも合点が……。

警戒に関しては怠りが無いはずなんだ。つまり、そういうことなのか?

能力に頼り切ってまともにゾンビとの戦いをしたことがない連中もいるとしたら、

相当な被害が出る……!! 瞬殺されてしまう! どうすればいい……最善の策は一体……!?

「真剣な面持ちですね。幽君?」

「……。」

「なら、こうしましょう。私はここから動きません。貴方達は味方に知らせるなり、

攻めるなりご自由にどうぞ。」

……本当に自信満々なんだな。付け入る(すき)は大きい……か?

「ただし、ゲームが始まってから15秒だけです。ゲームスタートの合図は啓君が拘束解除後、

私の下に到着してからです。」

ッ!!?

あっさりスタートだと!?

「分かった分かった。」

バサッ


啓が、瞬時に消えた……?

どういうことなんだ。


「はい、スタート。」


は?


振り向くと、硲の隣に啓の姿があった。


「いつの間に……!」

「……5秒経過。」

クソが……!

「急いで事態を知らせろ! 戦闘員を非戦闘員のやつらの近くにまとめとけ!」

俺は力の限り叫んだ。

「わ、わかった!」

東条が走り出す。俺達も行かなきゃな!

「いくぞ、聖奈、日向!」

「う、うん!」

「承知!」

全力で走る。  ……走っていて気付いた。聖奈が、俺達と同等の速度で走っている……。

今まで無我夢中で気付かなかったが、聖奈……いつのまにそこまでの筋力を!?


「佐久! 『マインド』で見張ってろ! 動きがあったら知らせてくれ!」

「分かった。……『心眼(マインド)』!」

佐久の雰囲気が少しばかり異様になった気がする……目が少し変わったな。

「んで俺は……『咆哮(シャウト)』!」

「正気か!? 位置がばれるかもしれないんだぞ!」

「言葉を乗せなきゃバレないって……!」


能力者は走りながらでも能力を使えるのか。自由に能力は使えるみたいだな……。

だとすると、知ってる人は他にもいるはずなんだが……。


走っていると、突然に人影が見えた。俺達はすかさず止まった。


「よう、お前ら。 ……なんだ、お前らも一緒か。」

「な、お前は座光寺(ざこうじ)……!」

確か鋭い眼光を持ってて、関わりたくないような重要メンバーだったか?

醸している空気がお前らしいけど、今は構っている暇は……!

「新堂 幽といったか? お前。」

「あ、ああ。そうだ。」

「お前と話がしたくてな。」

「……座光寺。今はそんな悠長なことしてる場合じゃねぇンだ。話は後にしてくれ。」

「何不安そうな目つきしてんだ? 眼を見たらわかる。相当な実力者だと――――」

「悪い! 俺達は先を進む! お前も早く逃げろ!」

そう言って俺は走った。すると、皆も足を進めた。座光寺を横切ろうとすると……


ガシッ


腕を強く掴まれた!


「な、座光寺!?」

「待てよ、『地区最強』。」

阻まれて、皆が足を止めてしまった。これはマズィ!


「皆、先に行け! 俺の事はほっとけ!」

「わ、悪い!」

東条は続けて走った。そして河上も東条の隣で動き出した。

……聖奈と影山さんは残ったか。




「15秒! さぁ、ジェノサイドの始まりですッ!」




笑い声とともに硲の声が聞こえてきた!

やばい! クソ、こいつ何なんだよ!

「そう慌てんなよ。侵入者は他のやつらが始末してくれんだろうが。」

「今回はわけが違うんだ! いいから放せよ!」

「だから、いままでそういうゾンビとか、強盗が入ってきてもな。

一人たりとも逃がしてねぇンだ。安心しろよ。」

こいつ、他人事のように言いやがって……自分で警備した事は無いんだろうな。

この口ぶりから察するに、上から高みの見物をしていたわけだ。

「付き合ってられるかッ!」

腕を振り(ほど)いた。

すると、


ガシッ ドスッ


「うぐっ!」

「幽にィ! ちょっと、何するのさ!」

「小娘は黙って見てろ。邪魔だ。」

こいつ……! 平気で掴んで蹴り飛ばしやがった!

「けほっ!  何するんだ!」

「話を聞かねえからだよ。黙って聞けよ。せっかく俺が話してやってんだからよ。」

な、なんだこいつの性格は……。 何がしたいんだよッ!

「……。」

こいつは、きっと、仲間を……こういう態度で接してきたのだろうな。

俺達をまだ部外者だと思っているのか? ありえない。リーダーと接触したんだ。

一応……仮ではあるが仲間だろ? 狂っている。こいつは、間違いなく、『害悪』だ。

「幽にィ! 大丈夫ッ!?」

「小娘、俺はそいつと話してんだ。だまってそいつから離れろ。話が出来ねぇじゃねぇか。」

やめろ、聖奈。離れろ! そいつは普通じゃない! 暴行に出るかもしれない!

「聖奈、……大丈夫だ、離れてくれ。」

「良かった……!」

「茶番はもういいだろ? ほら、どいたどいた。」

それにしてもこの座光寺とかいう人間……人としては最悪だ。

仲間を信じているのか? 助けているのか? 協力しているのか? ……してないだろ?

「……おい、座光寺。」

「ああ? 新人よぉ。普通そこ『先輩』って呼ぶんじゃねぇのか?」

「……ざ……な。」

「何言ってんのか聞こえねぇよ! そしててめぇは邪魔なんだよ! 小娘ぇぇッ!」


ガッ


「や、め……!」


「カハッ……」


「な、な……!」


ドサッ


せ、聖奈……?  聖奈が、目の前から急に……右に動いて……?


右に向くと、ぐったりと横たわっている。苦しそうに、両手で腰を抑えている。


こ、こいつ、何をした? まさか……『聖奈に手を出した』のか?


この光景から、目が反らせない。涙が、にじみ出て……


「もう面倒くさくてしょうがねぇ! あのなぁ! どけっつったろ!

さっさとどけば蹴られずに済んだのによぉ! バァカ!」


言葉を聞いた瞬間、俺は……『俺』でなくなった。


何か、こう、頭の中で弾けるような、そんな感覚。

そして同時に抑えていたものがなくなったような、開放的で不思議な感覚。

しかし…………心地は良くないな。

座光寺、お前は俺達にとって害悪にしかなり得なかったようだ。

だから、もう手加減もしないし、奥手にもならないからな。


「……ふざけんな。」

「あ?」

「何したんだよ……お前。」

「小娘蹴り飛ばしたんだよ。見えなかったのか? もっかいやってやろうか?

ああ、お前たちの面子の一人か。こうしてみると、無能な(くず)にしか見えないが……

生きているだけでも感謝するんだな。小娘。」


何勝手な事言ってやがる……!!


俺は、もう自分を抑えれねぇ!  分かる、自分でもわかる。


この感覚。 感情に呑まれていく自分自身が!


覚悟しろよ、座光寺。 てめぇは……俺の領域に踏み込んだんだからな。


「覚悟しろよ、座光寺。」

「新人が、いきがってんじゃねぇぞ!」

俺は矛を構えて一直線に走った。矛先を前に向けて、両手でがっしりと掴む。

座光寺は矛の動きにだけ目が言っている。おまけに矛先しか見えてねぇな。

俺は矛を左手だけに持ち替え、矛を左に水平にして持った。

目線が、大きく左にずれる。


俺を怒らせたんだ。ツケはしっかりと払ってもらうからな!


「ゴフッ ケホッケホッ!」

俺は目線が反れた座光寺に向かって思い切り蹴りを入れた!

「武器を使うのかと思いきや、いきなり肉弾戦か……! なめやがって!」

「お前、弱いな。 口先だけか。」

よろめく座光寺に、今度は思い切り横薙ぎの一撃を加える。

「ウゴッ! ハァ、ハァ。」

脆い……脆すぎる。

「俺が、アジトの中枢だと知っててやってるのか?」

「知るか、雑魚が中枢とはとんだお笑い草だ! 聖奈を蹴った分まで、

お前の体で償えッ!!」


ゴスッ


クソ野郎が!


「うおおおおお!」


俺には、怒りしか見えていなかった。

完全に我を忘れていた。


「うらぁッ!」

思い切り蹴りあげた。

建物の壁に座光寺が叩きつけられるかのような音を立てて地面にへたり込む。

「こ、の、野郎……派手にやってくれたな……ッ!」

「まだ足りねぇよ。こんなもんで済むと思うな。」

償え、聖奈に、謝れ! ゲス野郎……!

「……『身体強化(アップデート)』。」

……何か、能力を持っていたみたいだな。関係ねぇ。捻り潰すまでだ。

「おらッ!」

矛で薙いだ!  ……が、手ごたえが以前より少ない?

「へへ、こうなったら、良い勝負できると思うぜ?」

「ふんッ!」

余裕でしゃべっている間に、腹部に突きを入れる。が、これもダメージはいまいち……?

「この状態だと、お前すらも小物に見えるぞ!」

今度は蹴りを喰らった。向こうの反撃が、思ったよりも早かった!

「ウグッ! ガハッ!」

そして、想像以上に重い……!

「ヒハハハハハッ! どうだ、思い知ったか! バァァカ!」

「……そういやよ、話ってなんだ?」

「んあ? 話? ああ、どんぐらい強ぇのか腕試ししたかっただけ。それだけ。」

「……(くず)が。」

「は?」

もう、関係ねぇ、邪魔はさせねぇ。キレたぞ! 俺はキレたぞ! 座光寺!


まだ見ぬ自分の中にある何かが伝わってくる。これが……『覚醒』なのか?

分かる。どうすればよいのかが、自然と入ってくる。  ……やってやる。

「お前の命で償え。……『覇命剣(ティルフィング)』。」

この時の俺の脚は、蹴り飛ばされた距離から容易(たやす)く俺を座光寺のもとへと運んだ。

そして、放った蹴りはいとも簡単に座光寺を吹っ飛ばした。

「グァァァッ! な、何が……!?」


……落ち付いている。俺は怒っているはずなのに、やけに冷静だ。

「ゲホッ 痛ぇ……クソ!」

そして、また俺は瞬時に座光寺から一気に距離を狭め、拳を突き出した。

「ゲホォッ な、なんで急に強くなったんだ……!?」

「謝れ。」

「……はぁ?」

「聖奈に、謝れ……!」

ぎらついた目線で、座光寺の顔を掴んで、地に叩きつけた。

そして、無我夢中で蹴りと突きを繰り返した。

ゲシッ ゴスッ ゴッ ガッ 


「ゴブッ」

いよいよ、座光寺はもがき苦しむまでに至った。

「ガブッ も、もうやめてくれ! ま、参った……!」

「ふざけるな……!」

涙を一筋、頬を伝った。お前は、間違っている。

「頭を下げる相手が、違うだろ!」

矛で薙いだ。渾身の力で叩いた。

「ウガァァァァァ!! 頼む、もうやめてくれぇ!」

「黙れぇぇぇぇ!」

矛を思い切り振りあげて、下ろした!


「もうやめてぇぇぇぇぇ!」

聖奈の声が響く。矛が、ぴたりと止まる。

「幽にィ! もうやめてよ!」

「な、聖奈……。」

「もういいの! もう、いいから……!」

「本当に、いいのか?」

「お願いだから、もう……。」

聖奈、なぜ、何故泣いているんだ……。

憎き奴の敵を打っているのに、なぜ、止める……?

……やめろというのなら、これ以上は無意味か。

「分かったよ……済まなかった、聖奈。だから、もう泣かないでくれ。」

「幽にィ……!!」

俺に抱きつく聖奈。……ごめんな。聖奈。お前の本当の気持ちがわかってやれなくて……。

こいつはもう放置でいいだろう。気を失いかけているし。

俺も、聖奈を痛めつけたやつを……解決したからと言って救おうとするほどできた人間じゃない。

聖人君主は、俺には無理だ。 恨むなら、自分の愚かな行為を恨め、座光寺。


「幽、いまのでかなり時間を消費してしまった。……あの人間は、どうするのだ?

『ジェノサイド』とやらは、もう始まっているのだぞ……!!」

!!!!


しまった!


俺とした事が、座光寺にかまっている間に相当時間が……!!

クソ、クソぉぉぉぉぉ!


「……日向さん、聖奈を連れて安全な所で待機していてください。

俺は、硲を追います……!」

「それでは、幽の身が――――」

「俺の事はいいです。今は、任せてもらえませんか。」

……聖奈に、これ以上は……。  積荷は俺が背負う。

「分かった。必ず生きて帰ってくるのだぞ。幽……。」

「ああ、必ずだッ!」


そう言って、途中で別れた。走っていると、よくわかる。

周りがつかめてくる。硲、必ずお前を始末する……!!


スタートから今に至るまで、すでに7分30秒が経過していた。残り時間 22分30秒。

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