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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.1:Around the Yokosaka Town
31/73

Trap of logic bomb

サブタイトル『Trap of logic bomb / 遅発性の罠』


※元の視点に戻ります。

……ゾクゾクと嫌な感じがする。暗がりの奥から漂う緊迫する空気。

このまま、1時間後でいいのか? 扉の向こうへ足を踏み入れてよいのか?

不安が尽きないまま、あっという間に1時間は経過した。







「そろそろ時間だ。」

新堂 幽が深手を負って行動に支障が出た今、場を仕切っていたのは(いちじく) (きょう)だった。

藤島は彼の戦闘における評価が高い事もあり今に限り九の提案を受け入れつつあった。

大門、吉成を含む他の面々は表面上は納得していたが、心から信頼していなかった。

警戒こそ、現状ででき()る最も有力な対処なのだ……。

「幽……いけそうか?」

「ああ、俺も行く。」

「体は大丈夫なのか?」

大門さんが言った言葉は恐らく皆を代表した質問だ。

「まだ軋むように痛むけど……『見えたんだ』。」

「見えた……?」

「ああ、扉の向こうが俺には見えた。」

「いつ見たんだ? まさか寝てる間とか言わないよな?」

「勘が鋭くて助かるよ、藤島。」

「ええええ!? 寝てる時にって……どうやって!?」

「俺にも良くわからない。けど、見えたんだから仕方ないだろ?」

理不尽と言わざるを得ない解答しか出ないけど、真実なんだし本当に仕方ないよな……。

でも、信用してもらえずとも俺はいかなくてはならない。

『パスワード』を知らなければ進むことすら最初の扉で諦めざるを得なくなってしまうからな。

「とにかく、もう行こう。扉の最深部まで辿りつけば後はどうにでもなると思うし。」

「そ、そうか。ならさっさと言った方がいいな。」

大門さんが言うと皆も続く。

「だが、新堂。体が痛むのなら先陣は俺達に任せてもらうぞ。いいな?」

「お願いします。」

俺は素直に頼んだ。正直、ガタがきたってレベルじゃない痛みだ……。

骨折とまではいっていない状況だと思うが、下手をするとすぐに折れるかもしれない。

扉の正面まで歩く。途中にゾンビの姿もなく、本当に奇妙な雰囲気だった。

管理者である『江田 硲』無き今も尚、この何とも言えない空間を生み出しているのは……

恐らく原因があるはずだ。まるで本能に直接語りかけられているかのような、

心の奥底を揺さぶられる感覚……一体これはなんなのだろうか?


「ここだな。」

九が言う。先頭は九。その後ろに大門さん、影山さんを含む勢力があり

俺の位置は華憐達がいるような後列だ。矛を杖にしてなんとか歩いていけている。

杖に使わなくてもよかったのだが、体力温存しておきたかった。

いついかなる時でも油断大敵。 今はそういう世の中であり、

今後は更に気を引き締めなくてはならなくなるのかもしれない。

「この先は進んでいい。」

俺が言うと皆が無言で扉へと入っていく。念のため、俺が最後尾を務めた。荷物は待機場所に

おいてきて、他の団員に預けている。今回団員をこれに参加させなかったのは、

大勢で行くと逃げるときパニックになり、危険であることと、慣れないメンバーで

統率が利かなくなるといった事態を避けるためだ。信頼に欠ける(いちじく)を参加させた時点で、

すでに後者の方の説得力が欠けるのだが、戦力的にみると誰にも負けないだろう。

それを見込んで正解だったと今は願いたい。

少し進むと扉が堅く道を塞いでいた。 九が手を掛けるが鍵がかかっていた。

「ん、なんだこりゃ……鍵穴が無ぇ。」

「パスワード式だ。俺に任せてくれ。」

4ケタの暗証番号を入力した。確か最初は『6047』だったな……。


ピーッ ガチャ ロックが解除された音がした。

「パスワード式か。面倒な仕組みだな……。幽、なんでここのパスワード知ってたんだ?」

「実態がある形で残ってるなら『見える』。俺は、このパスワードが書かれた紙を見たんだ。」

皆が驚きの表情を浮かべる。

「な、なるほど……。」

「どうやら、彼無くしては本来ここは進めなかったようだな。」

影山 日向(ひなた)が結論を述べた。 キッパリ言ってることだから、

今の発言にはかなりの自信があったという事だろう。普通は驚いたり、半信半疑に留るかなのに……

影山さんは相当思慮(しりょ)深いと見えた。

過去も持ち前の思考で苦難を乗り越えてきたのだろうか。だとすると、ここまで来れたのは

まぎれもなく自分の洗練された強さがあったから……!

彼女も、九には一歩劣るものの実力の程はもっと高いはずだ。

扉の先の書類の束に皆キョロキョロ見渡していたが、

奥の扉にすぐに目がいった。

俺はパスワードを打ち込む。2つ目はえっとえっと……『3745』。

ピーッ ガチャ ロックが外れた。

「こりゃ、案外楽勝かもな。」

余裕の九。皆は警戒したままだ。もちろん俺も……。

扉の奥で皆は目を見張った。

「培養機……!?」

大門さんが言った。全員がこのフロアに入った時は皆が唖然としていた。

そんな中、俺だけが淡々と次の扉の前へと立って、パスワードを打ち込んでいた。

アルファベット式だったな。えっと……『myhandsishazardmaker』


ピーピーピーッ ガシャ よし、空いた。

「……幽、悪いんだが帰りも頼むぜ。」

「へ?」

「ここにある扉。出る時もパスワードが必要らしい。」

入ってきた扉を見ると、赤いランプがついていた。解除していた時は確か緑に光ってたはずだな……。

仕方ない、帰りも俺が担当するか。

俺が扉の奥に入ると、培養機を見つめていた大門さん達もこっちに来た。

扉の先は比較的狭く、重要な書類だけ。他は、コントロールパネルがあった。

「この先だ……覚悟してくれよ。」

シューー ガチャ 入ってくるときに使った扉が閉まった。間近だと確かに閉まるのが分かる。

パスワードを速やかに入力する。

えっと……『78665-33267』

「お、ここにあるじゃん。パスワードの紙が。まさかこれ見たのか?」

「ああ。」

『08931-43889』

「へぇぇ、なるほどねぇ。結構狭いとこだけど、あいつも御熱心にやってたんだな。」

のんきな事言ってる場合か、九……。強いのは認めるが、もう少し緊張感がほしいよ。

『01029』

ピーー ピッピッ ……あれ、ロックが外れない。

「……おい、幽!」

「ど、どうした?」

「そのパスワードは……! 数字の後に追加のパスワードを入れないとダメだ!」

「本当か! パスワードを教えてくれ!」

「……分からない。」

「え……?」

「ここにある紙に目を通したが、どこにも書いてねぇ!」

「ど、どういうことだ……!?」

九が俺に紙を手渡した。4枚の用紙。それぞれに個々の用途、それからルール等。

パスワード等も書かれてある。が、最後のプリントに確かに書いてあった……。


『最終キーの入力は追加パスワードの入力が成功して初めて安全の元で扉のロックが解除される。』

し、しまった……! 余計な置き土産残していきやがって……!!


『尚、3回の誤入力又は1分の経過から何も応答が無かった場合はプロトタイプの《V-Viltis》を

培養機から開放されるようにプログラムされている。

パスワードのキャンセルコードは〔14892-22490-90129-31807-34271〕』

「キャンセルコード! これだ!」

「ダメだ、間にあわねぇ! 探すのに時間がかかりすぎた!」

ピー! プシューッ 扉が開かれた。奥に見えるのは、一つだけ、液が抜かれていく培養機。

「……撤退するぞ!」

俺は扉の奥に入らず、すぐに振り返り、パスワードを入力した! 『myhandsishazardmaker』

ピーッ ガチャ 走って次の扉の前に行く!

そして素早く入力に専念する。だが、九だけは最深部の扉の奥を見据えていた。

「急げ、幽! 液がもう半分以上減ってる! それに、開けた扉が閉じないぞ!」

ッ!! パスワードの入力が遅れるとあのゾンビ……『V-Viltis』と遭遇してしまう!

『3745』

ガチャッ 開いた直後にまたすぐ次の扉で入力する。

『6047』

ガチャッ よし、全部開いた! 後は荷物を持って、団員たちに伝えて解散できれば!

走ってエスカレーターのところまで全員着く。九はいつの間にか俺達の後ろにいた。

急いで登った。そして、大声で言った。

「皆! ヤバイゾンビが出来あがっちまった! 急いでここから逃げる準備して、逃げてくれ!」

「何ッ!? それは本当か!?」

「本当かどうか確認する暇も無いです! とにかくここから離れるんです!」

俺達は各自の荷物を全てまとめて、ショッピングモールの外へと出た。

「こ、今後はどうすれば?」

団員が俺に聞く。

「ここからずっと遠くにまで離れるんですよ! ここからかなり遠くまで逃げることだけ、考えてください!」

「わ、わかった!」

団員が伝えに走った。

「俺達も、ここを離れよう!」

「ああ。」

「先を急ごう。」


俺達は少し走った後は歩いた。少しだけなのは、体力温存のためだ。

次の脅威は、一体いつどこから来るのか見当もつかない。

結局安息の地と思われた場所は、扉の開放により一気に危険地帯と化した。

硲が残していったあの個体の詳細は謎に包まれている。が、今はそれはどうでもよいことだろう。

今は、皆が少しでも多く休めるような場所が必要なのだ。

全ては、仲間と、未来の為に…………。










一方、ショッピングモール内。

扉の奥から、やや人間と比べて背丈が高い何かがあるいて出た。

始めてみる風景。始めてみる品物。そして、初めてみる外の世界の光。

静けさしか残っていない場所。そこが、生まれたての彼の全ての始まりだった。

「・・・・・・ウウ、アア。」

生後として間もない彼が、声を発するというのは目新たしすぎる行為である。

慣れない感覚で己を満たす。慣れない世界の始まりで経験を満たす。

何も思わない彼にとって、本能は自分の全てだった。


そして、彼は……その世界の全てを噛みしめながら、ショッピングモールを後にした。

その行く先、行方を知る者はこの世の誰でもない。唯一無二の存在の彼だけである。

5話分を長い間で開けてしまったため、少し理解しにくいかもしれません。

思い出しながらで読んでいただけると幸いです。


感想募集しています。お気軽にどうぞ。

突然長期間も開けてしまい、申し訳ございませんでした。

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