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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.1:Around the Yokosaka Town
26/73

Observers of occurrence Scene.1

サブタイトル『Observers of occurrence / 観測者の出来事』

『Scene.1 / 回想1』

江田(こうだ) (はざま)視点&番外編です。

前回の続きを読みたい方は『Trap of logic bomb』からどうぞ。

「新事実……ですと?」

「ああ。いよいよ本格的に動くみたいだ。」

「なるほど、そうですか。クク、もう動くとはねぇ。上も相当ウズウズしていることでしょうね。」

「まったくだ。……覚悟はできてるか? 江田(こうだ) (はざま)。」

真剣な面持ちは当然の場だが、彼だけは不敵な笑みを忘れなかった。

「改まってどうしたのです? 我々はこういう……クク、非常事態の時に如何様(いかよう)にも、

行動の幅を増やせる立場にいるというのに。(みさき)君。」

クク、こういう非常時に人ってのはどうしてこう簡単に素を浮かび上がらすのだろうか。

全ての人間は必ず非常時には化けの皮を()がす。私はそのような人々を見てきた。

(かつ)ての私はとてもつまらない事だと思っていたが、見てみると面白い。

……いや、興味深いというべきでしょうか。どちらにしろ見てて飽きませんねぇ、これは。

いつもはカメラ越しでしたが……。自然と笑みってのは出てしまうみたいですね。

毎回思う事は、笑みを堪えるというのはかなり辛いということですか……。

「では、私も改まったほうがよろしいでしょうかね? 坂木(さかき)、岬君。」

「……君に言われるとこう、背中がむずむずと来るよ。」

「クク、すみません。こういうの、ガラではないものでして。」

「まったく、君らしいな。用件はこのプリントを見てくれ。僕もこれを(くま)なく見渡して、

対策を練るよ。後、これを見た後……できれば君の意見も聴かせてほしいな。」

「気が乗った時にでも話して差し上げますよ。岬君。」

「そうか。では、失礼した。」

ドアを開けて部屋は彼一人となった。

「フゥ、それにしてもまたプリントですか……。」

作業用の台の(すみ)に重ねられたプリントの数々を見て硲は嘆息した。

「通知ぐらい(じか)でやってもらいたいものですねぇ。」

愚痴をいれつつも、プリントを眺めた。つまらなさそうな目線で文字の列を眺める。

「? これは?」

プリントには見間違いを覚えるような字列があった。


『人体におけるViltisの効果』


「おかしいですねぇ。『被検体』じゃない……?」

被検体じゃないとなると、生身の人間ってことですか? ……クク、機会があるなら是非見てみたい!

さてと、続きを読まなくては。

『Viltis使用時における周囲の人体における変化とその効果――――――――』

堅苦しい文面はいつ見ても堅い。もう少し、ソフトな文字列にはならないんですか?

『Viltisの被検体とは別に人体にも危機的状況において、新たな症状が――――――――』

……せめて、坂木氏が訪ねてきたときぐらいは噛み砕いた説明があってもよいかもしれませんね。

『今回判明した症状については今後、更なる解明についての研究を早急に進める方針を――――――――』

見るに堪えない文面。これも昨日見たプリントと同じで、ほとんど意味なしでしょうに……。

すると、硲の目がとまった。

『尚、判明した症状は以下の通りである。


1.人体の体力面での大幅な向上

2.人体の覚醒


詳細は別途にて記載または公開するものとする。    ――――Team.Viltis――――』


「ククク、面白そうですね……!」

熱心に読み返すが、間違いではない。まぎれもなく書かれていることは事実。

すると、ドアがノックされた。

「……岬君?」

「ああ。中に入れてもらえないか?」

「いいですよ。」

ドアが開かれる。せっかちな男だと思って腕時計を見たが、別れてから30分も経過していた。

「意見は固まったか? 硲。」

「私の意見頼りですか? それでいいのですか?」

「心配するな。口外しないさ。」

「まぁ、知り合ってからそう短い仲でもありませんし、良いでしょう。」

「すまない。恩に着る。」

「クク、詳細はプリントには書かれてませんが、いくつか予想できます。

まず、人体って表現でしょうかね。」

「被検体とは別だってことは僕にも分ったよ。」

「ほう、……次に『周囲の人体』というところでしょうか。範囲はかなり限定されるようですね。

次に肝心(かんじん)な所です。『危機的状況』って箇所(かしょ)、覚えてますか?」

「あ、ああ。使用した時のことか? 曖昧(あいまい)な事しか書かれていなかったが……。」

「なにはともあれ、危機的状況に追い込まれないと症状はでないみたいですねぇ。

最後に、『今後、更なる解明』ってところですよ。上も明確には把握しきれていないみたいですね。」

「なるほど、いつも君は頭が冴えるな。的確に突いてくる。」

「クク、いつでも冴えていないと上に飲み込まれますよ?」

「はは、そう思うとひやひやするな。……それと、連絡事項だ。

『午後9時15分にて、大講義室で今回の件における詳細を公開』。出席の有無は、

研究者の都合上有無は問わないし、公開途中での早退、途中入場もOKとのことだ。」

「分かりました。通達、ご苦労でしたね。」

「ハハハ、君の意見が聴けるなら安いもんさ。それじゃ、僕はこの辺で。」

「はい、御苦労様でした……。」

岬がドアを通り、また彼一人の空間となった。

「……これは、上を出し抜ける……いや、上層部よりも一歩リードできるかもしれませんね。」

万遍の笑みが硲の顔に浮かび上がった。これは爽快だ!

今回はなかなか面白くなってきましたねぇ。クク、私は慎重に立ち回る準備でもしなくては……。

しかし、この成果を公で使えないとは。……もっと、国単位で見える隙があれば、

この均衡(きんこう)に終止符を打ち、

まだ見ぬ未曾有(みぞう)領 域(テリトリー)に踏み込めそうなんですがねぇ……。




現在の時刻8時34分。現在の日時6月18日。

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