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Death such as in nightmare  作者: C.コード
Episode.1:Around the Yokosaka Town
10/73

Road walker

サブタイトル『Road walker / 道を行く者』

平穏を取り戻した街の人々は周辺一帯を制圧したと言える。

紛争はもう起こりえる状態ではなく、完全なる人間の勝利という形で幕を閉じた。

彼らは今後、一帯への警 備(パトロール)を実施することを決め、ゾンビ達への防御態勢の強化を図った。

彼らは現段階ではまだ街に滞在するみたいだ。けが人の傷が癒え次第、安住の地を求めて

本格的な大移動に移るそうだ。


一方俺達はというと、飽くなき旅路を歩いていた。

もう、どれくらい時間が経っただろう。まだ日は明るく、空も少し雲があるだけで青い景色が

そこに展開されている。

しかし、寒い。いかに日が当たると言っても流石に冬の昼間というのはこんなものか。

「あ~、寒い寒い!」

藤島がついに口を開いた。あまり考えないようにしていたんだがなあ、寒いってこと。

「言うな……余計に寒くなるぞ。」

大門さんもついに口を開く。

「でも、この気温でずっと歩いていたんですから、仕方ないですよ。」

吉成も言う。ああ、ダメだ。俺も寒くなってきた……。

「なぁ、なんか他に言うことないのか?」

「んなこと言ったって寒いもんは寒いんだから仕方ないだろ!」

「いや、そんな強調されたって困るぞ……。」

「それじゃ、何かするか。」

「手軽に歩いてできることと言ったらしりとりぐらいしかないだろ。」

「うわ、なんか普通すぎて嫌だ。」

「普通でいいだろ?」

「まぁ、いいんだけどさ。」

「……まぁいいや。俺、大門さん、吉成、香憐、藤島の順番で行くぞ~。」

「俺最後か!」

「何か異論でも?」

ギロリと俺が藤島を見る。異論があるなら言ってみてほしいものだがな。

「クッ……卑怯者(ひきょうもの)め!」

「勝負で先に卑怯な手段を使ったのはお前だろ! 石投げの飛距離勝負でどこか怪しいと思ってたら、

吉成にアドバイスもらってたじゃねーか!」

「あ、あれは吉成が俺に言いたい事があるって言ってたから仕方なくだな……!」

「嘘つけ! そう都合よく事が運ぶか! ……ま、吉成のアドバイスありでもお前には勝っていたがな。」

「マジでどういう鍛え方してんだよ……スペシャリストの助言があっても勝てないなんて想定外だ!」

「なにはともあれ、先に反則したのはお前だ。当然の処置だろ? このくらいで済んだら

安い方だと思え!」

「ま、まさかもっと思い罰があるっていうのか?」

「さぁ、どうだろうなぁ……」

ここで極めつけのポイントが『相手にニッコリと陰謀めいた笑顔を見せつける』。

これの有無で相手の心の揺れ具合が変わるんだ。不安になって惑え、藤島ぁ!!

「な、なんだよそれ……どんな罰があるんだよぉ!?」

「それは受けてからのお楽しみじゃないか。それとも、今体験してたい?」

笑みで明るく言った。どうだ、流石のお前も恐怖には勝てまい!

「う、…そ、それは……。」

「なら、お前が一番最後な。しりとりの『り』から始めるぞ。『リ』ス。」

「『ス』イカ。」

「『カ』ラス。」

「『ス』トロー。」

「『ロ』マンス。」

「『ス』チール。」

「『ル』ス(留守)。」

「『ス』リッパ。」

「『パ』ルス(英語『Pulse』訳:脈拍)。」

「『ス』ランプ。やけに『ス』が多いな。」

「『プ』ラント(英語『Plant』訳:植物)。」

「『ト』ロッコ。」

「『コ』ショウ。」

「『ウ』ス(臼)。」

「『ス』カイ。(英語『Sky』訳:空)」

「『イ』ス。」

「『ス』キマカゼ。」

「『ゼ』ニ。」

「『ニ』ス。」

「『ス』ス(煤)。」

「『ス』コップ。藤島、スからスでバトンを渡すのは邪道だと思ったことないか?」「どこがだよッ!」

「『プ』ラス。」

「『ス』カーフ。」

「『フ』カヒレ。」

「『レ』スリング。」

「『グ』ライド(英語『Glide』訳:すべる)。」

「『ド』ス。そろそろきついな……。」

「『ス』イス。」 「これは邪道じゃないのか?」「小さいことは気にするな。」「こんなの差別だ!」

「『ス』カート。」

「『ト』マト。」

「『ト』ウガラシ。」

「『シ』マウマ。」

「『マ』ウス。」

「『ス』ライドガラス。」

「『ス』、ス……ス…………『ス』ッ!?」

「アウトー! まだまだ甘いな、藤島ッ! そんなことじゃ俺には勝てないぜ!」

「どこに接点があるんだよッ!? てか何故に『ス』を意識した勝負になってるんだ!」

「ローカルルールでやるからそういうことになるんだ。中学校じゃよくあることだぞ。」

「ちゅ、中学校?」

「最近の主流は何かひとつを絞って頻繁に使う戦法があって『字連魔(ジレンマ)』って戦法なんだよ。

やらなかったのか?」

「知るかぁァァァァァァァァァァ!! 皆も知らなかっただろ!?」

「僕は知ってましたよ。」

さわやかな顔で吉成が言う。

「俺も一応知ってはいたぞ。」

大門さんも続く。

「私も知ってましたよ。」

香憐さんも続く。

「え、ええ、なんでみんな知ってるんだ!?」

「全く中学生の時一体何をやっていたんだ? 暇つぶしの主流といえばどう考えても『しりとり』だろ。

まさかやってなかったってことは無いだろ?」

「やってなかったよぉぉぉぉ!」

「……ゾンビだ。藤島が大きい声出すから気付かれただろ。」

「……言いたいことは(こら)えておいてやる。」

グシャッ ……ふぅ、頭を狙うことには慣れたけど、ゾンビってのは全然慣れない。

「他にはもういなさそうだ。さ、続きを始めよう。」

「……まだやるのか?」

「「「「もちろん!」」」」

藤島以外が一致団結した瞬間だった。趣向的な意味で。




そして、しばらくたった頃。

「『カ』……『カ』ラーコンタクト!」

「『ト』ウカ。 そろそろ詰まってもいいんだぞ、藤島?」「ここで(つまづ)けねぇんだ、俺は!」

「『カ』ンコーヒー。」

「『ヒ』リョウ(肥料)。」

「『ウ』ンドウカイ。」

「『イ』カ。」

「『カ』ラ(殻)。」「ちっ、しぶとい!」「浅い策略なんかじゃ俺は沈まねえよ!」

「『ラ』イト(英語『Light』訳:光)。」

「『ト』ンネル。」

「『ル』リイロ(瑠璃色)。」

「『ロ』カ(濾過)!」

「『カ』ロリー。」

「『リ』チウム。」

「『ム』ラサキ。」

「『キ』カ(気化)。」

「『カ』…………!?」

「アウトー! これで藤島のアウト6回目だ。」

「ぐぅぅぅぅ、しりとりがここまで奥が深いゲームだったとは……!」

「『しりとりを馬鹿にする者、しりとりに泣く』という格言の偉大さが(うかが)えますね。」

「まさに、経験がモノを言うゲームだな。」

「大丈夫です、藤島君。私も最初は全然でしたから。」

「い、いつになったらこの負け組のレッテルから脱出できるんだ……!」

「さぁな、ただ一つ言えるとすれば……お前が俺達の知りえる戦法を理解したところで

勝率が5分5分になるだけだということだ。」

「ぬぅぅぅぅぅぅ……一体どうすればいいんだ……。」

「……これはひどい有様だ。」

「ああ、確かにこれはひどい結果さ、だが、次は必ず勝つ!」

「そっちじゃねぇ、向こうを見てみろ。」

「え?」

歩き着いた先は、火の海と化した街だった。

燃え上がる炎、倒壊した建物、死体、ところどころへこんでいてフロンドガラスが割れた車……。

人の姿は無く、ゾンビが(うごめ)いている。

ここでも激しい闘争があったのだろう。武器が地面に落ちている。

死体の手にしっかりと握られているものもあるということは、戦いはゾンビの勝利……。

「お、おい、あれ!」

藤島が指差した先には、巨大な体を持つ何かの姿があった。ま、まさか……!?

「新堂、あれはヤバぃって!」

「あいつ……街まで襲いやがって……!」

「あのゾンビ、普通とどこか違うとは思ってはいたが……まさか知能があるとは。」

「え、知能?」

「見ろ……かつてない凶悪な組み合わせだ。」

「グッ…………あれってマジかよッ!?」

巨大なゾンビは手に大きな何かを持っていた。

「武器まで使うってことか!?」

「同じ条件じゃ、勝ち目は薄いですね……。」

「ねぇ、どうするの?」

「街の人間は壊滅状態……ゾンビの手に渡った危険な場所を通るメリットは薄いからな。

少し遠回りで進もう。」

「そういえば、結局どこに行くんだ?」

「祖父の道場、かな。」

「そこには何かあるのか?」

「祖父は道場やってるっていってただろ? 生半可な鍛え方してないから祖父の道場は

きっと人員がそろってると思うんだ。それに、この状況は一刻も早く知らせたい。更に言うと、

弟がいるかもしれないからな。」

「新堂の親族の安否を確かめるのも兼ねてということか。」

「そういうこと。」

「ヤベ!」

「どうした?」

「あのゾンビ、こっちを向いてるぞ!」

「隠れろ!」

全員身を低くして物陰に隠れた。

「こっちに向かって歩いてたぞ!」

何!? またあいつか! くそ、マズィ、本格的にマズぃぞ! どうする、どうすれば……!?

遠回りをするにしても物陰から出て一旦街の方に続く道路を横断しないとならない。

確実に、目に入る。このまま隠れていた方が安全か?

いや、見つかったらアウトだ。見つかる距離まで来てしまったら逃げる場所がない!!

どうすれば、どっちに向かえば見つからずに逃げ切れるんだ……!?

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