Organization
つたない文章かもしれませんが、温かい目で見てくだされば幸いです。
修正:全サブタイトルの日本語訳ver.を前書きに追加。ただし、
物語の内容からそのままの日本語訳とは限りません。
間違いなどありましたら、お気軽にコメントに書き込んで下さると、
幸いですッ!!
サブタイトル『Organization / 結成の時』
12月24日。クリスマスイヴ。雪が降る夜、街は明るく、カップルやなにやらで賑わっているはずだった。
しかし、街中を闊歩するような人はいない。なぜなら、この世にゾンビという脅威的な存在が現れたからだ。
テレビは全く使いものにならず、ラジオもしかり、電話もつながらず、電気的な通信手段を断たれ、
ただやつらから逃げ回るばかりなのかと思っていたが、とある人間との出会いで逃げ回る事から、
戦う事へと変わったのであった。事の発端も今日12月24日。数時間で激変したこの世は、
全人口の内の偶然にも生き延びた人間達を更に追い詰めていく……!
俺、新堂 幽は事情で逃げ回っていた挙句、とある人に助けられ、
今はとある3階建ての建物の暗い1室に4人の人が集まっていた。
外はつめたそうな風が吹いていて、静けさが漂う。明ける事がないような世界に放り込まれたような感じだ。
一人の男が口を開いた。
「4人…………か。とりあえず、全員無傷なのかどうか確認してくれ。小さなかすり傷でもあれば、
今すぐにでも言ってくれ。」
「俺は無いな。」
「俺もだ。」
「見当たらないよ。」
「そうか……皆、良く聞いてくれ。すでに知っている通りだが……この世は地獄になっちまった。」
重い雰囲気が辺りを包んだ。
「……だな。まさか、あんなのに襲われるなんて思いもしなかった。」
「他の人間は、もうあんなのになっちまっているのか……。」
「……父さんも母さんももう………。」
「そう、やつら、ゾンビが現れた途端に日本のシステムは完全に崩れた。
電話も不可能、電気も使えない。おまけに生き延びた人間はほんのわずかで武器もない。」
「俺達、どうすれば……?」
「どうするこもうするも、生き延びなきゃ始まらん。だから、生き延びる手段を探すんだ。
ここに集まった4人で!」
「生き延びる手段……。」
「そうだ、考えるんだ。こうしてる間にも、街中にはやつらがうろうろしてやがる。いつ、
ここを襲うかもわからん。」
「戦う、しかないと思いますよ。」
「ゾンビ共相手にか? 4人で一体どれくらい始末できるのか考慮しての回答か?」
「何も、街中をうろつくようなことはしないだろ。それに、やつらにもしっかり弱点がある。」
「そ、そりゃ街のど真ん中を行くわけじゃないだろうけど……。で、弱点ってなんなんだ?」
「まず、大抵のゾンビが器官をやられてるってことだ。見えないだの、聞こえないだの、
症状は個体によって違うが、確実なのは知能だな。ベースが人間ってのも、
あるから火に弱かったり、知能がないから溺死させることも可能だと思うんだ。細かい動作も無理だろうしな。」
「なるほど……つまり船で海に出れば安全ってことか!?」
「食糧があるうちはだけどね。」
「だが、油断は禁物だ。ゾンビは全個体共通で強靭な肉体を持っているぞ。海に出た後の事じゃなく、
そこまでの過程を重視すべきだろう?」
「そうでしたね。まずは武装する準備を整えましょう。」
「そうなると、狙うは大型のショッピングモールか?」
「ですね、4名というのはある意味で好都合かもしれませんよ。小数精鋭…つまり、あまり気配が出ないので、
隠密行動もできると思います。できればどこかでトランシーバー等も確保できればいいのですが……。」
「よし、まずはショッピングモールだな。」
「そこに行くまでの道のりはどうするんだ? ここにあるもので武装するしかないからな……。」
「多分、大丈夫だ。ショッピングモールはすぐ近くにあるし、ゾンビ共は人間しか食わないからな。
あさりに来るなんてことは無いだろ。」
「……ショッピングモールに訪れた人間をあさりに来るってのは想定しておいた方がいいですよ。」
「と、いうことはやはりまともな武装がないと整えるのも無理ってことか……。」
「武器は……そうだな。ここにあるものではどうしようもない。書類ばっかりだからな。
どこかの民家で調達する事にしよう。手短に手に入るのは包丁といったところか。」
「そうだな。善は急げという 諺 もあるから、さっさと行こうぜ!」
「その前に、自己紹介ぐらいはしておこう。俺は大門 将。
サラリーマンをしていて今は27歳だ。」
「俺は藤島 満。高1だ。」
「僕は岸田 吉成。中学2年です。」
「俺は……新堂 幽。高2……と言っても、多分知ってるやつは知ってるだろ?」
働いている大門さんにはわからないのも当然だろうな。だが、学生なら知ってるはずだ。
「え……? 新堂って、あの新堂……!? 『地区最強』の……幽!?」
「そうだ、一応言っておくけど、俺は多少の事じゃ荒っぽい事なんかしないから安心してくれ。」
「え、そうなのか? 噂じゃ物凄く荒れてるって聞いたぞ。」
「もとは向こうから吹っかけてくてるんだよ。全部な。いきなり殴りかかってくるもんだから、
こっちも仕方なくやってるだけなんだ。」
「君って、喧嘩強いの?」
「ん、ああ、そこそこ強い方だと……思う。」
「謙遜しても意味ないんじゃない? 地区最強なんだろ?」
「まぁ、そうなんだが……だけど、俺はこうして素性も明かしたんだし、この4人で生き延びて行こうと思う。」
「俺も助力を惜しまないつもりだ。よろしく頼むぞ。」
大門さんが言う。
「ああ! 地区最強がいれば頼もしい限りだ!」
藤島が言う。いや、ゾンビは人間とは違うから! 強みにされても期待にこたえられるのかどうか……。
「皆さん、よろしくお願いします。」
ちょっと礼儀正しい言い方は岸田吉成君か。
「俺も、チーム優先で行きたいんで、よろしく頼みます。チームのリーダーですけど、
とりあえずは大門さんという事で。俺達をここに呼び集めてくれた人だし。」
「う、うむ。」
「ええ、新堂が、……新堂さんがリーダーじゃないんですか?」
「いや、ここは大門さんの方が……それと、あまり堅苦しくならなくていいよ。
普通に友達みたいに接してくれて大丈夫。安心していいよ。」
「え、あ、……そ、そうか。」
「とりあえず手順を説明する。民家までの道のりは不備な状況だから最短ルート、最短時間で行く。
武器の調達具合で民家1軒で済むかもしれないし、もう1軒回るかもしれないから、
最後まで気を抜くなよ。包丁意外は何も取らなくてよし。あ、できれば灯りも欲しいな。
でも包丁が最優先。灯りは余裕があればでいい。」
「分かった。」
「了解。」
「OKです。」
「それじゃあ、荷物をまとめよう。ちなみに皆、今何を持っている?」
これを聞かないとな。場合によっては危険を冒すリスクの大きさも把握できるかもしれない。
「俺はほとんど何も……。慌てて家から逃げるときに取ってきた携帯と、こういう時の為と思って、
小型の懐中電灯が1つくらいだ。」
大門さん、ナイス! 灯りについては少し余裕が出来たな。
「懐中電灯、上出来です! これで灯りを手にれる為のリスクがだいぶ減ります。」
「俺は……そこに立てかけてある木刀だけだ。以前習い毎の為にと親が買ってくれたもので、
もしもの時の為にと持ってきた。度胸がないから実戦で使った機会はまだないんだが……。」
藤島もナイス! 最低限の武器がもうここにあるとは!
「木刀か、大丈夫だよ。長さも十分だし、武器としては優秀だ。」
「ちなみに2本ある。お前には、少し長めのこっちを使ってくれ。」
「すまない、恩にきる。」
これももしもの時の為だが、こうしている間にも襲ってくるかもしれないゾンビを攻撃できるように、
事前に手に持つことにした。強さの面で信頼を寄せてくれているなら、それにこたえなくては。
「僕は特に何ももってません……。」
役にたてなくて落ち込んだような表情になる。
「落ち込まなくても大丈夫。普通はみんな持ってないからさ。その点俺達は恵まれてる。」
表情が明るくなった。しかし、勝負はここからだ。顔つきが真剣になる。
「暗くて見えない時は、大門さんが懐中電灯で照らして下さい。いつでもできるように準備を
しておいてください。」
「……よし、ちゃんと付く! いつでも行けるぞ!」
「では、いざという時にはお願いします。さて、外は一体どうなって……。」
窓から外を眺める。目先の事しか分からないであろうゾンビ。うわ、ここの目の前にも1体うろうろしてる!
外はやはり静かなままだ。目の前の1体のゾンビをどうにかすれば、もう周りにはいなさそうだ。
民家はショッピングモールとの距離からも考えると、遠回りになるけどショッピングモールを無視して、
多少距離はあるが民家を目指そう。ショッピングモールには大量のゾンビが予想されるからな。
いや、そうでなくても突然の次第に対応するためには相応の準備が必要だ。
『備えあれば憂いなし』という言葉はいつでも役に立つ格言だと改めて認識される。
「目の前に1体ゾンビがいます。個体によって器官が機能したりしなかったりするとのことなので、
追ってこなかった場合は無視します。道はショッピングモールを通り越して民家に行きます。
距離がありますが、民家までの辛抱です。頑張りましょう!」
「お、おう。」
「ついに出発ですか。」
「うし、俺も戦ってやる……!」
「木刀は俺と藤島が持ちます。点灯は大門さん。荷物等の回収はできれば各自で……だけど、
もしまとめる機会があったら……岸田。君が荷物を担当してくれ。」
「分かりました。後、僕の事は吉成と読んでください。」
「分かった。吉成。もしもの時は頼む。」
「はい!」
木刀を構えて俺が先頭に立つ。喧嘩の時もこんな感じだった気がする。俺一人身だったけど、
今と似た感覚だ。冴えている。ああ、そうだ。これだけは言っておかないと。
「ああ、そうだ。もしゾンビに関して気付いた事があったらいつでも教えてくれ。
かなり有力な情報だからな。後ろに控えている事になるのは吉成になるけど、
吉成はできるだけ観察じゃなくて後方の見回りをしてくれ。左右は大門さんと藤島で。」
「いよいよか。」
流れに任せて俺が指揮を取る形で表のリーダーは大門さん。
調達と整理は岸田吉成。
戦闘員は俺と藤島。
4人だけではたしてどこまでいけるのか……。
喧嘩に散々付き合わされていたせいか、やけに落ち着いているな俺。
ちらっと思った事があったっけな。『どこまでいけるのか試してみたい』って。
喧嘩が強いのは全部親父のおかげ。剣術やら柔術、必要性のない弓術まで教わったおかげで、
大体の相手なら負ける気はしない。弓術は体力よりも精神力を問われるので、
精神面でも冴えていて冷静を欠くことも無くなった。
おかげで中学時代まで拳法まっしぐらで中学時代から喧嘩を吹っかけられるようになった。
一人やればまた連鎖的に襲いかかってくるアホ共は今となっては飽き飽きする。
高校からは穏やかな生活を送りたいという願望で少しだけ学力の高い高校にしたんだ。
これでも勉強というか、学力は並々だったんだが、頑張って入学したんだ。
そこからは喧嘩も少なくなった。中学時代は皆俺から遠ざかっていて、友達なんていなかった。
だけど、高校に入ってからは違った。皆俺の事を知らなくて、親しくしてくれて、
過去に例がないくらい友好的だった。おかげで友達はすぐにできたし、平和だった。
だけど、もう、俺の友達はここには…………。
「それじゃ、階段を下ります。扉を開けて安全を確認するので合図で行動してください。
皆さん、視力はどれくらいですか?」
「俺は0.7だ。」
大門さん0.7っと……。
「俺は1.3。」
藤島1.3か。
「僕は0.5です。」
0.5だな。
「それじゃ、藤島が俺の合図を良く見てくれ。藤島が動いたら皆も動いてくれ。俺だけにゾンビが
気づいて襲ってきたら、皆は黙って見てるか逃げてくれ。犠牲者はできるだけ減らしたいし、
巻き込むのは少々気が引ける。」
皆、それを聞いて無言でうなずいた。緊張が伝わったのだろうか。
とにかく意図を理解してもらえてよかった。この状況じゃ理解力が欠けると面倒だからな。
あえてリーダーを大門さんにして、戦闘員を2人にしたのも俺が欠けた時に自力で何とかできるように
するため。単独でもなんとかやっていけた経験があるのに対し、他の3人は平和的に暮らしてた人だ。
1人じゃ危険すぎる。
「それじゃ、階段を下ります!」
暗くて下がうっすらとしか見えないが、少しすれば闇にも目がなれるだろう。
俺達、いや、俺はすぐに覚悟を決めて歩いた。皆も後ろについてチームを乱さないようにしていた。
そしてついに扉の前まで来た。
「いいですか……? それじゃ、開けます!」