表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/9

5 『行政機構図』

 彩子さんは、〝省庁 変遷〟でGoogle検索して、ヒットした〝国立公文書館デジタルアーカイブ〟というサイトの〝変遷省庁組織変遷図(省庁レベル)〟をクリックした。

「国立公文書館デジタルアーカイブ?」

「そう。国立公文書館は日本の行政資料を保存管理しているところ。そこが公開している〝省庁組織変遷図〟がとっても便利でね。こういうふうに日本の省庁がどう変化したか図で表してくれていて。各省庁には、どういう組織…部局があるのかもわかるようになっているの。昔は『行政機構図』といった資料で確認したものだけど…」

 彩子さんはまず画面の下の方へ。

 〝農林水産省〟に行きあたったら左へ。年数がどんどん昔へ。

「昭和2年だとしたらこのあたりね」

 〝農林省(第一次)〟の文字の前にある◎をクリックすると小さな画面が出た。〝部局レベル〟表示ボタンを押す。

「あったね。〝農務局〟」

 画面には〝設置:大正14/4/1 ~廃止:昭和16/1/21〟とある。

「行政機関は〝内部資料〟として、こういう資料を作成する。読むのは知識がある人だからと、いろんな情報をカットしちゃったのね。発行者を〝農林省農務局〟とはせず〝農務局〟だけにしちゃった資料がこれね。こういう名前を全部覚える必要はないと思うの。ただ、行政機関の名前は変わることがよくあって、今の名前で検索しても、古い時代の資料には行き当たれないことがあることは覚えておいて。資料を探す時の落とし穴だから」

「…落とし穴」

「そう。いろんな落とし穴がある。市や町、地名も変わるからね」

「あっ、そうか。市町村合併!」

「そう、うちの市も合併したものね。実は私も落ちたことがあるの。その落とし穴に」

「彩子さんが!」

「うん。〝A市で昭和20年ぐらいにこういう調査があって論文が出たはず。探して欲しい〟って依頼されて探しても見つからなくて。もしかしてとA市の歴史を調べたら、当時はB村だった地域でのことだったの。村で探したら、論文は見つかりました」

「…落とし穴だぁ」

「そう。資料の探索中、行き詰まったら自分が落とし穴に落ちていないか疑ってみることも必要だと思う」

「了解です。でも、ミステリーみたいで面白いし、見つかった時は嬉しいと思う」

「その通り。ガッツポーズしちゃった。さて『小作法草案』ね。謄写版で、傷みもあって、再製本も必要。つまりボロボロだろうと思われるものが6000円になっているのは、何か理由があるんじゃないかと思う。で、CiNii Booksで〝小作法草案〟で検索してみると…複数のデータがヒットする」

「え? 一つじゃないんですか?」

「草案だからねえ。〝草案〟はわかる?」

「えっと、下書き…叩き台みたいなもの?」

「うん、そんな感じで良いと思う。正式なものになるまで、議論をいろいろする。何度か作ることもあると思う。書き込みがあったり。保存しようと思われにくいから無くなりやすい。決定した法律の資料だけあれば良いという考えの人もいる。でも、研究者は違う。どういう議論があって、最終的に法律化されたかを研究する人もいる」

「…へえ」

「…それに、これはちょっと興味深いネタかもしれない」

「どういうこと?」

「CiNii Booksのデータと日本の古本屋のデータが少し違うの。刊行年は同じだけど、ページ数が違う。数字の入力ミスかもしれないけど、もしかしたら…」

「…別の〝草案〟が存在したかも?」

「そうかもしれない。そうじゃないかもしれない。この草案は、修正案を出されているみたい。もしかしたら、資料を集めた研究者が、草案と修正案を合体させて自分で綴じ直した可能性もあるかもしれない」

「…綴じ直し。そんなことするんですか?」

「研究者によってはね。本に書き込みをする、しない。ファイリングする。積み上げる。極力きれいに使ってすぐ図書館に寄贈…。いろんな研究者がいました。でも、みなさん、すごい記憶力。自分の中に情報を落とし込む方法がそれぞれ違うだけ」

「へええ」

「私が子どもの頃は、謄写版のことは〝ガリ版〟という人が多くてそう覚えていたんだけど、図書館業界や研究者の間では〝謄写版〟と言われることが多かった。図書館で使うデータでも〝謄写版〟とされている。いつか古い資料を探すことがあるかもしれないから、この単語は覚えておいた方が良いかもしれない」

「…わかりました」

「古い資料はどんどんデジタル化されていくだろうけど、資料がどう変化していったかを知っておくと、いろんな落とし穴を回避しやすいと思うんだ」

「いろんなって。彩子さん、もしかして、落とし穴ってたくさんあるの?」

「うん。そもそも、日本語が…言葉が、落とし穴だから」

「えええ!」

関連サイト

・省庁組織変遷図(省庁レベル)【国立公文書館】

 https://www.digital.archives.go.jp/hensen/hensen-index.html

  (アクセス日:2026/1/5)


関連図書

・行政管理庁行政管理局編『行政機構図』

・『小作法草案』農務局 1927.3

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ