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3 『人口動態統計』

「go.jpって、省庁のドメインでしたっけ?」

「う〜ん、実はもう少し範囲は広くてね。政府機関という感じ。英語のgovernmentが元だったかな。国立科学博物館や国立国会図書館のドメインの最後もgo.jpなんだよ」

「科学博物館も!?」

「うん、そうなの。で、この画面は〝すべて〟の検索結果を表示しているけど、〝画像〟だけを表示するようにする。その中に、〝出生数・出生率(人口千対)の年次推移〟の図があるのね。これをクリックして表示すると、この図を掲載した行政資料のサイトに辿り着いて、〝戻る〟を押したら、この資料のトップ画面に移動。で、資料名がわかる。日本の出生数の変化の図が載っている公的機関の参考資料が欲しい時に、最短の時間で辿りつける可能性がある。これは〝裏技〟にならないかな?」

「なると思います!」

「そっかぁ。良かった。現在、公的機関の作成資料のほとんどはネット公開されているの。行政機関はわかりやすいようにと図を掲載する事が多い。その掲載箇所を狙う作戦なの。あっ…でも…」

 彩子さんはパソコンの画面を見て、難しい顔になった。

「ごめん、この図はダメだった」

「ダメって?」

 図をよく見ると、空白箇所がある。

「この空白時期…データがないのが問題なんですか?」

「う〜ん、この空白には理由があるからねえ。それよりも参考図として紹介しづらい問題があると思うのね。ところで空白箇所はいつごろのことだろう?」

「図のメモリから見て、たぶん昭和19年ぐらいから昭和21年ぐらい?」

「そう。その頃、日本はどういう状態だったか、学校の歴史の授業で習った?」

「…あっ!! 戦争!」

「そうだね」

 彩子さんはGoogle検索窓に〝人口動態統計 昭和19〟と入れた。「人口動態統計」は、さっきヒットした資料名の一部だ。

 検索結果のトップには、〝グラフの記載がない昭和19年〜21年(1944年〜1946年)は、戦災による資料喪失等資料不備のため、統計が得られていないものである。〟の文章があった。

「さっきの図には、この説明文がすぐ近くになかったの。紹介する図としてちょっと困る。でも、今回ヒットしたこれも空白の説明はあるけど、いきなりPDFの本文だけでは困るなぁ。昔は、このURLを最後から少しずつ消していったら資料名がわかることが多かったんだけど最近は難しくてね。仕方ないので、もう一回。このPDF資料の見出しの言葉で…」

 彩子さんは、〝人口動態調査結果の概要 go.jp〟でGoogle検索した。

「う〜ん、こっちかな」

 彩子さんは、検索結果の中から〝令和5年(2023)人口動態統計(報告書)〟をクリックした。

「で、全体版をクリック。ページ検索で〝戦災〟を探す。よし、あった!」

 〝出生数及び合計特殊出生率の年次推移-明治32~令和 5 年-〟という図があり、図のすぐ下に戦災による資料消失についての注意があった。

「すごい! 彩子さん! でも、どうして、検索結果のトップじゃないのを選んだんですか?」

「あ〜、それは長年の経験というか、〝概要〟より〝報告書〟の方を参考文献にした方が良いと思ったから。いきなりPDFじゃないし。こっちなら全体版があって表紙も奥付もあるし。表紙にはISSNもあるし」

「ISSN?」

「中学生にはまだ早いか。えっと、ISBNは知ってたよね?」

「本についている番号ですよね。カーリルで検索する時に使ってます」

「えらいぞ! で、ISSNの方は逐次刊行物…えっと、雑誌みたいに毎月とか毎週とか毎年とか、定期的に続刊が発行される資料に付けられている番号。この『人口動態統計』は、毎年発行されているのね」

「へええ」

「このサイトは、厚生労働省のサイトだから、ここのページのURLを参考資料としてレポートに書いても大丈夫。これは、日本の人口に関する統計についての基本資料だから、できれば覚えておくと良いと思う。いろんな政府機関で、いろんな調査が行われているけど、欲しいと思える数値が必ずしも存在するとは限らないというお話でもあったんだけど、どうかな?」

「はい、わかりました!」

「それと、Google検索では、同じ検索語を使っても、日によって時間によって検索結果が違ってくる事があるみたい。で、ここまでが中高生向きのお話かな」

「え?」

「実は…裏事情があるのよ」

「は?」

 彩子さんは、パソコン画面を国立国会図書館サーチにし、検索窓に〝人口動態統計 昭和19〟と入れて検索ボタンを押した。

「え!? 昭和19年は焼失したんじゃ!?」

「そう、公式のお話ではね。でも、人口統計はとても重要。だから後になって情報をかき集めたみたい」

 国立国会図書館サーチの画面には、〝人口動態統計. 昭和19・20年〟と出ている。

「二年分?」

「そうみたい。そのあたりの事情説明が資料の最初に書いてあって…」

 彩子さんが、画面を出してくれたが…。

「漢字が…難しい」

「ああ、ごめん。旧漢字がけっこうあるね。ここ…。〝完全性〟〝網羅性について劣り〟って書いてあるの、わかる?」

「はい」

「統計は、同じ条件で調べ続ける事が重要なの。一生懸命、資料を集めたけど、他の年とは状況が違っているという話。だから、そういう事を踏まえて、この資料は注意して利用して下さいということ」

「…彩子さん」

「うん? あっ、ごめん。話、難しかった?」

「いえ、とっても重要な話をしてもらったと思います。でも、これ、絶対、裏技だと思います」

「え? そっかなぁ? 国立国会図書館サーチで出てくる情報だよ? あっ、そうだ! 統計の数値をどうやってかき集めたか、興味ない?」

「あっ、はい! 戦災で焼失って、東京大空襲のせいですよね?」

「たぶんね。ただ、東京が狙われるってわかって行動した人たちがたくさんいたみたい。こういう本があるんだけど…」

 彩子さんが操作したパソコン画面には『疎開した四〇万冊の図書』という書名が出ていた。

関連図書

・『人口動態統計特殊報告』厚生労働省大臣官房統計情報部


関連サイト

・令和5年(2023)人口動態統計(報告書)厚生労働省 令和7年3月

 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/houkoku23/index.html

  (アクセス日:2026/1/3)

 

・『人口動態統計. 昭和19・20年』総理庁統計局 昭和22年11月

 https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000673768

  (アクセス日:2026/1/3)


 初版 2026年1月3日

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