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ある暗殺者の手記 ー崩壊の序曲ー  作者: 眠る人
瓦解 ーCollapseー

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手記43

※一部に流血や、暴力的、もしくは生理的嫌悪感を伴う描写がある場合がございます。

苦手な方はご注意ください

「ア、アンタって本当に嫌な奴ね!?」


「お互い様ではないかしら?それに、私は事実を言っているだけよ。今更貴女達にどう思われようと、私の知った事ではないわ。」


 こんな風に二人の言い争いがますます加熱する様相を見せたかと思った直後、君嶋さんは少し怒りを飲み込むようにしてから目を閉じた後で、妙な笑みを浮かべる。


 何だ?急にどうしたんだ?


「ふぅ〜ん……そう?だったら、アンタが人殺しだって、証明してあげればいいんでしょ?」


「証明?見てもいない貴女が?そもそもやってもいない事を、どうやって?」


「そんなのカンタンね!アンタをいじめの主犯に仕立て上げたのは清水だし、中村はその協力者だった!だからよ!」


「……ハァ?何言ってんの?」


 君嶋さんの発言に、オレは苛立ちから樋口さんより先に思わず口走ってしまうが、当の樋口さんは難しい表情で黙って君嶋さんを見つめるだけだった。


 いやいや、言うに事欠いて、その程度の話で樋口さんが犯人だとでも?


 コイツ、どんな思考回路してんだ?


 まず、その話自体の根拠は何よ?


「何も知らない奴は黙ってて!」


 いやホント、こういう女子無理だわ……


「……有り得ない。アカリが、自分からそんな事する筈が……」


「何?アンタ……もしかして、橘が仕組んだとでも思ってた?」


「それは……」


 タチバナ……?記憶に無い名前だけど、樋口さんのこの様子では、こちらに来ていないというもう一人の幼馴染の事かな?


 いやしかし……本当に何なのだろうね、この話は?


 殺人犯と全く関係の無い内容になってるのだが……


「それこそ有り得ないって!アンタ、自分が他の子からどれだけ嫌われてたか知らないの!?橘がお守りしてたから、何とかなってただけなのに!?」


 樋口さんも樋口さんで、今は関係無い話だと切り捨てればいいのに、黙ったら余計調子づかせるだけだよ?


 こういう場合は大体、大分誇張して言っているか、本人の感想でしかないのが殆どだし。


「アンタの家の事情か知らないけど、橘がアタシらとの間に居たからやってこれたの!その橘から見捨てられたから、こんな事になってんのよ!」


 だからさぁ……何で今そんな話をする必要があるの?君嶋さん、それ言いたいだけでしょ?


「それに、おかしいとは思わなかったんだ?」


「……おかしい?何が?」


「あのセンセにチクった後、アンタ以外の誰かがいじめられている場面を見掛けたりした?」


「え……?」


「見た覚えないでしょ?そりゃそうよね。中村とかは、いじめられてるように見せかけてただけで、実際は清水に協力していたんだもの!パシリにしても、物隠すにしても、アタシら後で全部返していたんだから!」


 うわ……マジか。


 コイツら、結託して樋口さんを嵌めたって事かよ。


 更に言えば橘さんとやらではなく、実は付き従っていたと思われていた清水さんが首謀者で、更には中村さんや君嶋さん達まで協力していた、と……


 えげつないな……それが中学生のやる事?


 とはいえ、その事実を樋口さんは知らなかったのだから、根拠どころか状況証拠にすらなっていないのだが、樋口さんはさっきから青い顔で口を開いたり閉じたりして何も言えなくなっちゃってるし、どうしたものかね?


「それに、アタシら皆知ってるんだよ!昨日夜中にアンタが外で騒いでた事!だから、高橋や南もアンタがやったんだ!」


 確かに昨夜遅く、外で騒いでいたのは認めるけどさぁ……キミら外から入る大変さとか、全く考慮してないよね?二メートル近くある高さの窓を簡単に登れるとでも?


 他にも、高橋くんの次は南だって?


 誰だよ!?こちとら、名前すらまともに知らないぞ!


 ……と、言い返したかったものの、いつの間にか君嶋さんの後ろには、部屋の奥に居たと思われる女子が四人ほど並びながらこちらを睨んでいた為に、オレは何も言えずに黙り続けるしかなかった。


「高橋くんの、話は……さっき、小川くんから聞いたけれど……南くんも……?」


「まだしらばっくれるの!?呆れた……アンタ、女優にでもなったら?……柴田や南達とアンタ達が食堂で揉めてたのも、アタシらは知ってる!これでもアンタじゃないって言うなら、今度はアンタが証明してみせなさいよ!」


 なるほど……南くんって、会話の流れを読むに、柴田と一緒に食堂にいた内のもう一人の男子か?


 この話を信じるなら、昨晩までで食堂に居た連中が全員殺されたと?


 嘘だろ……?


 ただまぁ、この程度を根拠だと言い張って犯人扱いしている辺り、下手に反論してもコイツらは聞かないだろうな。


 何とか聞き返しはしたけど、どうやら樋口さんは清水さんが冤罪の首謀者だと知った所為で、まともに反論出来そうには無いみたいだし、この場合はオレから話すべきだろう。


「君嶋さん、だっけ?演説の途中で悪いけど、清水さんの時も中村さんの時も、現場に行く際はオレも一緒だったから、樋口さんじゃないって断言出来るよ?後、清水さんの時は彼女の部屋の前で森田くんと会って、彼から清水さんが亡くなった事を教えられてる。だから、間違いなくオレ達は無関係だって言い切れるけど?」


 疑うのであれば、きちんとした証拠を出せ……という意味を込めた言葉を伝えるも、やはりと言うべきか、君嶋さんは全く聞く耳を持たないまま、今度はオレに向け声を荒げる。


「だったらアンタも共犯でしょ!!」


「違うって……だから、森田くんに確認して貰えばと……」


「何でアタシらが確認しないといけないのよ!アンタらで証明しなさいよ!」


 あー……ダメだわ、コイツ。


 自分が何言ってるか、まるで理解してねぇや。


 そもそもの話、自分の中の論拠だけで樋口さんを犯人だと決めつける事しか考えてないみたいだしな。


 論理もクソも無い奴は、これだから本当に面倒くさい……


「ほら見なさい!何も言い返せないって事は、アンタ達が犯人なんじゃないの!」


 何より一番困るのは、この場で樋口さんが完全にシロだと証明する手立てが無い事だよ……どうしよ、コレ?


 オレから見たら無実だと言い切れるが、この場合明らかに中立では無い人間の証言じゃあね……


 こうなっては仕方ない、か……複数人で居る君嶋さん達が襲われる事は無いだろうし、樋口さんもまともに会話出来る状況でも無いから、とりあえずは彼女を連れてこの場から離れよう。


 今離れたら余計に噂を広げられてしまうので拙いのは分かっているけれど、あちらもこちらも冷静では無いこの状況で、オレ一人じゃコイツらの相手は無理だもん。


 それに、後から森田くんに頼んで、証言して貰えばいいだけだしな。




 そうして考えた末にオレは、未だ君嶋さんに何かを言いたげにしている樋口さんの手を掴み、君嶋さん達の前から立ち去ろうとする……すると、当然の如く背中から非難の声を浴びせ掛けられた。


「何!?逃げるの!?」


 うん、逃げるよ?キミらの相手なんかしてられないもん。


「やっぱり、アンタ達が犯人ね!」


 もうそれでいいから、黙って?


 背後から掛けられる君嶋さん以外からの心無い声に内心だけで反応しながら、オレは樋口さんと共に自分達の部屋へと引き返す。




「ただいま。」


「おかえりなさい〜……あらあら〜?」

「おかえり、なさい……ミオ!?」


 オレが戻った事を告げると、ソファに腰掛けて会話していたらしい二人が揃ってこちらへ視線を向けたのだが、オレに手を引かれながら俯く樋口さんを見るや否や、二人は心配そうな様子で掛け寄ってきた。


「ちょっと色々ありまして……今はそっとしておいてあげてください。」


 暫く話せないだろうから、とりあえずは樋口さんを休ませないと。


「……分かったわ〜。そうねぇ……だったらアルマちゃん、ミオちゃんを休ませてあげてくれるかしら〜?」


「それが良さそうですね……アルマ、オレからもお願い出来る?」


「はい。」


 どうやら、アズサさんも樋口さん一人では心配だと感じたようで、オレと二人でアルマに付き添いを頼むと、アルマも樋口さんを放っておけないのか真剣な表情で頷いてから、青い顔で俯く樋口さんの手を取り、二人で部屋の奥へと入っていった。


 樋口さん、大丈夫かな……?信じていた事と事実とのギャップの所為だから、誰にもどうしようもない話なのだけどさ?


 やるせないな……


「それで、マサトちゃん〜……何があったのか、お姉さんに教えてくれる〜?」


「あ、はい……分かりました。」


 奥に消えていく二人の背中を見送っているオレに、アズサさんが少し難しい顔をしながらも問い掛けたので、オレは彼女へ事情を話す事にした。


 

よろしければ、ご意見、ご感想をお待ちしております。

批判などでも構いません。物語をよくする為の貴重なご意見は、真摯に受け止めさせて頂きます。


ブックマークや、評価、コメントは大変励みになりますので、是非よろしくお願いします。


次回更新予定は 3月15日(日)18時となります

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