表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある暗殺者の手記 ー崩壊の序曲ー  作者: 眠る人
瓦解 ーCollapseー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/47

手記40

※一部に流血や、暴力的、もしくは生理的嫌悪感を伴う描写がある場合がございます。

苦手な方はご注意ください

 窓の高さは承知の上で、オレ達は建物の中からではなく、音が聞こえたと思われる方向へ、建物の向かって右側から外壁を伝いつつ急ぐ。


 ちなみに、外から行く理由は二つある。


 中から行く場合、どの部屋の窓か確認が出来ないので、より特定に時間が掛かるだろうと考えた事がひとつ。

 

 もう一つは、場所に辿り着きさえすれば彼女一人なら、肩車か何かで部屋へ侵入させる事が出来るからだ。


 無論、とんでもなく嫌そうな顔をされたが、この際ワガママは言っていられないと、無理矢理説き伏せたのは言うまでもない。


「誰だか知らないけれど、恨むわよ!」


「そんなに嫌かな……?」



 何故か不満を漏らす樋口さんと二人、破られた窓が無いかを確認しつつ、暗闇の中を走った。


「何でこんな確認しづらい形してんだ!?」


 ……だが建物の形状ゆえ、外から探してもかなりの部屋数の為に、数分経っても最初にたどり着いた場所しか確認出来ないからか、オレの中に苛立ちばかりが募る。


 どうしてコの字型の袋小路が連なるような形なんだよ!特定しづらいんだって!


 しかも、建物のこっち側だけで同じ通路が六本もある上に、反対側にも同じだけあるし!


 早く見つけないといけないのに、これでは……


「仕方ないわ!二手にわかれましょう!」


「樋口さん一人はダメだ!危険すぎる!」


 どうやら彼女も同様に考えたらしく、酷く焦ったような声色でそんな提案をしてきた。


 いやいや!?だとしても、この状況でキミ一人を行かせるわけにいかないだろ!?


 他にストーカーだって居るかもしれないんだぞ!?


「じゃあ、こっちの並びは私が見るから!マサトくんはそっちよ!これならいいでしょう!?」


「……分かった!」


 なるほど!


 お互い見える位置からは離れないまま、背中合わせにコの字の片側だけを見て行くって事か!


 

 そうやって二本目の袋小路に入った直後に、樋口さんの提案で並走しながらお互いの担当分を確認するが、どうやら此処でもないらしい。


「次よ!」


 しかし、これだけ夜中に騒いでいたら普通、窓から顔ぐらいは覗かせるものじゃない?


 ほら!そこに灯りがついてる部屋だってあるのにさぁ!?


 三本目の袋小路に入ってすぐ、オレが確認している側の部屋のひとつに照明が灯っていたにも関わらず、窓際に人影すら確認出来なかった事に憤りを感じつつも、この袋小路でも無いのかと考えたが、その刹那だった。


「あったわ!」


「今行く!」


 背後から見つけたと聞こえたので、オレはすぐさま彼女の側へと走り、同じように割れた窓へ視線を向ける。


 清水さんの部屋は建物の反対側かつ、こちらは外からでも灯りが確認出来るので、先程聞こえた破砕音の現場で間違いないだろう。


「マサトくん!お願い!」


 しかし自分で言ったはいいものの、小さな子供ならともかくとして、そこそこ身長のある彼女を肩車するのは、重心の問題で危ないような?


 ……なら、こっちの方がいいかな?


 そう考えたオレは、窓の真下に移動した彼女の下半身を抱えて持ち上げ、彼女が窓付近のでっぱりを掴んだのを確認した後で、一度離してから彼女が足を乗せられるよう、壁に手を突き自分の背中を丸めて差し出す。


「これでどう!?」


「少しだけ、我慢していてね!」


 思わず言ってはならない言葉が口をついて出そうになるオレを他所に、樋口さんはそう言うとオレを踏み台にしたまま壁をよじ登ろうとするもーーー


「……もう、いいわ。マサトくん……下ろして頂戴?」


「樋口さん?何があったの?」


 ーーー突然、彼女はそう言うと登るのを止め、掴んでいた手を離して地面に降りてしまった。


 この状況で、急にどうしたの!?


「私達、間に合わなかったのよ……」


 こちらの問いかけに、彼女はやるせなさが籠った呟きで返すと、オレは樋口さんが何を見たのかを悟る。


 何でこんな事に……




「そうだわ……せめて、床ではなくベッドに寝かせてあげないと……マサトくん、館へ入りましょう?」


 新たな殺人事件を目の当たりにした衝撃で何も考えられなくなったオレを他所に、少ししてから樋口さんのみ理性を取り戻すと、被害者がそのままでは可哀想だと考えたようで、そんな提案をしてきた。


「兵士には?」


「……知り合いをぞんざいに扱われるのが分かっているのに、彼らへ教える義理があるの?」


「それもそうか……」


「ごめんなさい……私、今少し感情的になりすぎているみたい……」


「……仕方ないよ。立て続けに、だもの。」


 周りに馴染もうとしなかったオレとは違い、彼女は遠巻きにされていたと言えど元々は交流があるのだから、思うところがあるに決まっている。


 ……しかし、人返りの世話係達は何も知らされていないのに、こちらにまで被害が出ているという事はだな?


 ほぼ確実に、主義者達の思惑通り行動している奴が、クラスメイトの中に居るという事だろう?


 柴田の証言にすら、殺人を唆された言質もあったのだし、最早そこは疑うべくもない。


 ならば、賛同してくれる人だけでも集めて、一刻も早く此処から逃げ出すべきだ。


「マサトくん……?」


「ごめん、考えごとしてた。」


「考え事?」


「うん。危険かもしれないけど、皆と此処から逃げるべきなんじゃないかって。」


 ただ、気になるのは館を囲んでいる兵士が、オレ達をどう扱うかなのだよな。


 というのも、ツルギさんが自身と接触した事は、内密にする方がいいと言っていたからだ。


 これは、普通であれば外の獣人兵士と、オレ達が接触する筈がない……つまりは、交流が起こり得ない……要するに、出会えば無事で済まない可能性が高いという事にならないか?


「……そうね。明るくなったら、皆に声をかけて回りましょう?」


「分かった……でも、その前に……」


「ええ。」


 我ながら、論理の飛躍だとは思うよ。


 だけど、どうにも嫌な予感がするんだ。


 それに、他のクラスメイトと一緒に逃げるにしても、ストーカーや殺人犯が紛れ込む危険だって高いからな……何か対策を考えないと。


 そんな風にどうしたものかと頭を悩ませながらも、オレは樋口さんと共に館の内部へと戻り、遺体がある部屋に向かった。


 だが……




「……何で?」


 ……オレと樋口さんは現場へと辿り着くなり、飛び込んできた光景に思わず絶句してしまう。


 何故なら、兵士が既に来ているどころか、数人が遺体の反応を確かめるように、覗き込んでいる場面だった為だ。


「な、何してるのよ……?ねぇ、アイツらこんな所で何をしているのよ……?」


「分からない……どうして……?」


 コイツら、どうやってこの部屋の位置を特定したんだ?


 オレ達が外から此処に戻ってくるまで恐らくは五分……長くとも十分は掛かっていないはずで、しかもその間一切兵士とすれ違ったり、追い抜かれたりはしていない。


 なのに、オレ達より早くだって?普通、不可能だろ!?


 そうして思わず疑問を漏らしている最中オレ達は、明らかにおかしな方向に曲がっているクラスメイトの首を、兵士がつま先で軽く小突いている様子を目撃してしまう。


 ……直後、隣にいる樋口さんの気配が爆発的に膨れ上がった。


「今すぐにその薄汚い足を退けて、此処から消えなさい!さもなければ……!」


 同時に、彼女は怒声をあげつつ扉へと手を伸ばし、兵士の目前でその一部を消して見せる。


 すると、ヤツらが共通語で何か吐き捨てるようにして、慌てながら部屋から逃げ出した後、樋口さんは急いで遺体へと駆け寄った。


 人の尊厳を踏み躙るような行為にオレだって怒りを覚えはしたが、気になるのはそこじゃない。


「中村さん……そんな……」


 これで二度目なんだよ、彼女が代償無しで力を使っているのは……

 

 カルマが幾ら感情の力かつ、消費するような類いの物ではないにせよ、紛れもなく彼女が反動で動けなくなるのをオレは数度目撃している。


 にも関わらず、二回も前提を無視しているとなれば……もしかして、彼女の力も変質した……?


 いや、それもだがあの兵士達が先回り出来たのって、犯人との繋がりがあるとしか……


「……今は、悲しんでいる場合では無いわね……マサトくん!お願い……!」


 状況に思考が追いつかないながらも、何とか目の前の出来事を整理しようとするが全く思考の纏まらないオレに向け、彼女は懇願するように声を掛ける。


 ……そうだな。まずは考えるより、やるべき事をやろう。


 

 その後、オレと樋口さんは遺体を丁寧にベッドへ寝かせてから、言葉少なに自分達の部屋へと戻り、奥へ入る彼女を見送った後、独りベッドで横になる。



 ちなみに、今回被害に遭った彼女は柴田に操られていた内の一人で、中村さんと言うらしい。


 樋口さんとは過去、ある程度親交があったらしいが、狙われたのは恐らく柴田の洗脳故に孤立し、一人で居たから狙われたのではないかと樋口さんは推理していた。


 一人でいる相手、しかも女の子に対しこんな事を出来るだなんて、やった奴は本当に人間なのかよ……?


 後は、中村さん殺害の手口……短時間での殺害や、首を折るといった行動から見て、清水さん殺害とは違う犯人だと思うが……断言についてはまだ出来ないな。


 しっかし、この短期間に幾度も遺体を直視したせいか、思ったより吐き気を催す事は無かったが、きついものはきつい……



 ……などと考えている内に、精神的な疲労を感じているにも関わらず、オレは眠れないまま朝を迎えてしまう。




「おはよ……」


「おはよう……マサトくん、酷い顔ね。」


「樋口さんだって……」


 アルマとアズサさんが二人で朝食の用意をしに朝早く退室してから暫くして、目の下にクマを作った彼女がゆっくりと奥の部屋から現れる。


 だが、軽口にいつもの覇気はなく、明らかに眠れてはいない様子だった。


 ……人の事は言えないけれども。


「昨晩はストーカーが現れないと思ったら、あんな事があったのよ?仕方ないじゃない……」


「そうだね……」


 何日か前の晩に現れてからは、確かに見てないけどさぁ……これじゃ、ただ追いかけられるよりきついって。



「あらあら〜?どうしたの、二人とも〜?喧嘩はダメよ〜?」


 暫くの間、昨晩の疲労感からか、無言で向かい合いながらソファに腰掛けていると、朝食を乗せたトレイを持って二人が帰ってきたのだが、オレ達の異様な様子を見兼ねたのか声を掛けてくる。


「マサト、ミオ、だいじょぶ?」


 アルマも心配そうにオレ達を交互に見るのだが、別に喧嘩している訳では無いので、億劫に感じつつも返事を返した。


「うん、大丈夫……アズサさんも、喧嘩では無いですから、気にしないでください……」


 心配してくれる人を邪険に扱うようになったら、人として終わりだもの。


「そう……?だったら、いいのだけど〜……じゃあ、ご飯にしましょうか〜。」


 そうして、後々を考えて食欲が無いながらも何とか朝食を摂り終えたのち、オレ達はすぐ様行動を開始する事にしたのだった。

よろしければ、ご意見、ご感想をお待ちしております。

批判などでも構いません。物語をよくする為の貴重なご意見は、真摯に受け止めさせて頂きます。


ブックマークや、評価、コメントは大変励みになりますので、是非よろしくお願いします。


次回更新予定は 2月22日(日)18時となります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ