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第31話 青春埋葬!リョウ、インリンと共に眠る

 廃校探索――それは青春のロマンだった。

 リョウも、そんなことを信じていた。今までは。


 ――だが、今日だけは違う。


 今、彼の手には、埃まみれの、

 しかし表紙だけやけに綺麗な一冊の雑誌が握られていた。


 そこには、圧倒的なまでのインパクト。

 伝説のグラビアアイドル――インリン・オブ・ジョイトイ。


 しかも。


 M字開脚。


 ページいっぱいに広がる、世界が止まったようなその姿。


「……マジか……」


 手が震えた。


 気づけば、リョウはそっとそのページを顔に近づけていた。

 鼻先が紙に触れる。

 深く、深く――吸い込む。


 インクと埃と、そこに確かに微かに残る、思春期の匂い。


「ッハ……っ、ふぁ……!」


 ほおずり。

 すりすり。

 全身の神経が脳に直結して暴走していく。


 そのときだった。


「……なにやってんの」


 背後から、冷ややかな声。


 振り向くと、そこには――

 両腕に筋肉をみなぎらせたハヤぴが立っていた。


 雑誌を抱えて固まるリョウ。

 無言で歩み寄るハヤ。


 そして。


「リョウ……私のM字開脚じゃ、ダメ?」


 え。


 リョウの脳が一瞬で真っ白になる。


 ハヤぴは、にっこりと微笑むと、

 自分のスカートの裾を、そっと、めくり上げた。


 ――そこには、

 体育会系の短パン。

 だが、圧倒的なまでのむちむち太ももが、

 目の前に迫り出してきた。


「ふふ……見たいんでしょ……?」


 挑発的に、スカートをふわふわ揺らすハヤ。


 リョウは、生唾を飲み込んだ。


 だが――。


 次の瞬間。


 ガシィッ!!


「……捕まえた」


 ハヤぴが、信じられない速度でリョウの首に自分の太ももを巻き付けた!


 鋼鉄の挟み込み。

 動けない。

 呼吸すら困難。


「うぐ……が……っ!」


「青春を、甘く見た罰だよ、リョウ♪」


 ハヤぴは、そのままリョウの首を太ももで絞め上げながら、

 プロレスの匍匐前進スタイルで、校庭へと引きずり出していった。


 がしっ……ずるっ……がしっ……ずるっ……


 地面に擦れるリョウの靴。

 必死にもがく手。

 その手から、なお離さない雑誌――インリン。


 校庭の片隅、スコップが用意されていた。


「さあ、リョウ。

 未来の誰かに、この熱い青春、届けようね!」


 ハヤぴの満面の笑み。


 そして――

 リョウとインリン雑誌は、丁寧に穴に押し込まれ、

 無情にも、上から土をかけられた。


 リョウは最後の力を振り絞り、呟いた。


「……平成の奇跡……インリンさん……

 僕は、ここに、眠ります……」


 さらば、青春。


 さらば、インリン。

【後書き:インリン・オブ・ジョイトイとは?】

 インリン・オブ・ジョイトイは、2000年代中盤に活躍した伝説的グラビアアイドルです。

 その過激なポーズ、特に「M字開脚」は、日本中の思春期男子を惑わせ、

 一躍カリスマ的存在となりました。

 現在は台湾で活動しつつ、母親としても活躍されていますが、

 かつてのその輝きは、今なお色褪せることがありません。

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