表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/37

第12話 バ◯◯は夢の中で

 廃校のグラウンド。

 桜の木々は、季節外れの暖かさにほころび、ほのかに花を咲かせていた。


「え、春?……いや、これたぶん“二度咲き”ってやつだな」

 リョウが手帳片手に桜を見上げている隣で、ハヤがごそっと腰を下ろした。


「ちょっとだけ、休憩……」

 ポンと地面に座ると、ほんのりと日差しが温かく、気がつけば、瞼が……落ちていた。



 ---


 夢の中


 ――グラウンド。だが、今度は競技用の白線がくっきり引かれた、本物のトラック。


「佐々木!!あと10本だ!!!」

 響き渡るのは、桐谷コーチの怒号。


「は、はいっ……っく、ふぅ、あぁ……!」

 ハヤは汗まみれでインターバルダッシュをこなしていた。

 脚は棒。視界は揺れる。


「あと……2本……っ、ううぅ……!」


 そして――


「ダメ……。もう、ムリ……」

 ガクン、と膝が折れ、そのままトラックの脇に倒れ込んだ。


 そんな彼女の横に、ドスンと落ちる影。

 桐谷コーチだった。


「……佐々木、お前、倒れるまでやったのは立派だ」

 低く、でもどこか温かい声。


「ご褒美だ。バ◯◯、欲しいか?」


(……バ◯◯……?)


「ほら、お前が好きだって言ってたじゃねえか。バ◯◯。陸女には欠かせないだろう?自分に正直になれよ?素直にください、って言えよ?」


「ほしいです! くださいっ、コーチのバ◯◯!!」


 ハヤはもう、恥じらいも何もかなぐり捨て、そう、絶叫した――


「よし。お前の口に今、咥えさせてやるからな…」



 ---


 現実世界


「ほしいです! あなたのバナナが……!!」

 がばっ、と起き上がった早矢の視界には――リョウの呆け顔。


「え、えっ……!? あ、あの……俺のバナナ15.2ですけど……?」

 動揺しつつ、リョウはズボンのジッパーに指をかける。

「待っててね、今出して皮剥くから」


 パアアアン!!


「なぁに出そうとしてんのよォォォォ!!!」


 早矢の拳が空を裂き、リョウの顎を正確に射抜いた。

 もんどり打って地面に倒れ込むリョウ。


「そのバナナじゃないってわかってんでしょ!? なんで毎回そうなるの!?」


「いや……寝言で『欲しい』って……俺のじゃないなら、誰のだったの……?」

 血を流しながら涙目で見上げるリョウ。


「桐谷コーチのに決まってんでしょ!!!」


「…桐谷コーチのはよく熟れてそうだな…」



 ---


 近くでそれを見ていた真帆が、桜の花を1枚つまみながらつぶやいた。


「夢と現実が交錯するとき、人は最も“におい立つ”……文学的ね」



 ---


 ※補足


 ・本日の補食:Doleのバナナ(15.2cm、カーブ強め)

 ・ケガ人:1リョウ

 ・誤解の解消:未達

 ・青春ポイント:+300



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ