表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

プロローグ

諸葛亮しょかつりょうよ。貴殿の才能は曹丕そうひの10倍はある。きっと国を安定させ、大事だいじを果たすであろう。もしも我が子が仕えるに値するなら、補佐してやってくれ。しかしそうでないなら、貴殿が国を治めるがよい」

「とんでもありません。臣は劉禅りゅうぜんさまを支え、国を守ってまいります」

「……ならば貴殿の好きなようにせよ。後のことは、任せた、ぞ……」

「劉備さま~っ!」


 劉備さまの今際いまわの際に、私はこの国とご家族を託された。

 それは事実上の国主になれと言うに等しく、あまりに重い責任を負わされたことに、しばし呆然としたものだ。

 しかし私は歯を食いしばって国を立て直し、再び兵を出せるようになった。


「臣 亮が申し上げます。先帝におかれては、天下統一の大事業の半ばでお隠れになりました。今、天下は漢・魏・呉の3国に分裂する中で、我が国の力は衰えはて、存続の瀬戸際にあると申せます――」


 私は北伐に際し、その意気込みを知らしめるため、出師すいしひょうを奏上した。

 それはまさに一命を賭した決意の表れであったのだが、北伐は無惨にも失敗し、おめおめと戻るはめに陥った。

 いくら馬謖ばしょくの失態が大きかったとはいえ、彼を将に任じた責任は私にある。

 私は自ら将軍職を降格し、再度の北伐の準備に取り組んだ。




 そうして何度か北伐を試みたものの、どうにも上手くいかない。

 一時は良いところまで行っても、補給が続かないからだ。

 ならば食料を自給しようと、この五丈原に兵を屯田させ、長期の対陣に臨んでみた。

 しかしどうやら、天は私を見放したようだ。


「コフッ」

「大丈夫ですか? 丞相閣下」

「……いかぬな。もう私の命は長くないであろう」

「気弱なことをおっしゃいますな。閣下にはまだまだ、我らを導いてもらわねばなりません」


 配下の楊儀ようぎが冗談めかして言うが、それに付き合う気力すらない。


「私が亡き後は、益州へ退却するがよい。くれぐれも兵を損なわぬよう、慎重にな」

「丞相閣下!」


 いくら配下に望まれようと、この体ではどうにもならぬ。

 私はますます衰弱していき、やがて意識が混濁してきた。

 最後に思い浮かべたのは、懐かしき主君の姿であった。


「申し訳ありません、劉備さま。臣は平原を取り返し、漢王朝を復興させることができませんでした。不甲斐なき臣を、お許し、くだ、さい……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本編を読みたい方はこちらからどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ