8ー10 チャンスは一度だけだ!
8ー10 チャンスは一度だけだ!
俺は、きょろきょろと辺りを見回す。
誰だ?
『私だ、私』
んん?
俺は、じっと白狼の方を見た。
『そうだ。私だ』
気がつくとリリウスたちは、彫像のように固まって動きを止めている。
「みんな?」
『安心しろ』
白狼が前足を舐めながら答える。
『邪魔されずに我々だけで話すために彼らの時を止めただけだ』
マジでか?
俺は、白狼に向き直った。
「なんのつもりだ?」
『お前に話がある』
白狼は、俺に話しかけてくる。
『このダンジョンを守る魔物の中には、もとラダクリフ辺境伯の屋敷の使用人だった者たちと本物のこのダンジョンの作り出したガーディアンとがいる』
白狼は、俺にそう告げると、俺たちの側へと歩み寄ってきた。
ええっ?
俺は、ハトマメで白狼のことを見上げた。
ということは、俺たちが今倒した黒狼たちも?
白狼が頭を振った。
『今、お前たちが倒したのは、このダンジョンの作り出した守護者たちだ。人間ではない。だが、私は、人間だったものだ』
マジでか?
俺は、まじまじと白狼を見つめると訊ねた。
「誰なんだ?」
俺がきいても白狼は答えない。
『我々の口からそれを告げることはできない。だが、もしもお前の口から我々の名を呼ぶなら魔法はとけ、人間の姿に戻ることができる』
なんですと?
俺は、白狼に訊ねた。
「どうやったら誰なのかがわかるっていうんだ?」
『それは、言えない』
白狼がじっと俺のことを見つめる。
『頼む。私の名を呼んでくれ』
はい?
俺には、誰なのかがわからない。
というか、わかるわけがないだろ!
俺は、ラダクリフ辺境伯の屋敷にいた使用人のことを思い浮かべる。
こいつは、誰なんだ?
「ヒント!ヒントをくれ!」
俺が頼むと白狼は、低く呻き声をあげた。
『あれだけ世話をしてやったのに、この私が誰かもわからないのか?お前は、バカなのか?』
「ええっと」
俺は、適当に端から名前をあげていこうとした。
すると、白狼があわてて俺を止める。
『やめろ!お前、今、適当に名前を言っていこうとしただろう?』
「よくわかったな」
俺は、感心して白狼の喉元を撫でた。
白狼は、呆れた様にため息をつく。
『いいか?チャンスは一度だけだ。もし、間違えたら私は二度と戻れない』
マジですか?




