8ー4 代償ですか?
8ー4 代償ですか?
「入れ」
部屋の中から声がして俺は、ドアを開いて中へと入っていった。
部屋の中は、カーテンが締め切られ薄暗かった。
数本のろうそくの炎に照らされている部屋の中央に置かれた大きなベッドの上に勇者は、いた。
勇者は、明るい茶髪の髪を肩までで切り揃えた、色の青白い青年だった。
暗い青色の瞳は、きょときょとと落ち着かず辺りをうかがっている。
勇者は、ケガを負っているのか、手足に包帯を巻いていた。
「お前が新しい従僕か?」
かすれたかん高い声で勇者が訊ねたので俺は、答えた。
「クロージャーです。よろしくお願いします」
「まだガキだな」
勇者が侮るように俺を見た。
「お前に俺の従僕がつとまるのか?」
「もちろんです」
俺がこくりと頷くと 勇者は、冷たい笑いを浮かべる。
「なぜ、俺の従僕に?隙があったら俺を殺すためか?」
バレてる?
俺は、あわてて返事をした。
「そんなこと」
「嘘をつくな、ガキが」
勇者は、せせら笑いを浮かべると俺のことをじろりと睨んだ。
「この街のたいていの奴らは、俺を殺したいと思っているだろう?」
勇者は、続けた。
「正直に言え!言わなければ殺す!」
勇者の威圧に膚がぴりぴりとする。
俺は、息を飲んだ。
これが、勇者、か。
俺は、腹をくくった。
「殺したい」
俺は、勇者に向かって呟いた。
「お前は、最低な奴だ。死ねばいいのにと思っている。だけど、仕事だからな」
「仕事、か」
勇者がにやりと笑う。
「いいだろう。側に置いてやる。しっかり働け!ガキのトカゲもどき」
「はい」
俺は応じると勇者にきいた。
「まずは何をしますか?」
「包帯をかえてくれ」
勇者は、手足の包帯を指して俺に命じた。
俺は、ベッドに足を投げ出して座っている勇者の側に近づくとベッド脇に置かれたテーブルの上から包帯を手に取る。
「失礼します」
俺は、勇者の手足に巻かれた薄汚れた包帯をほどいた。
勇者の手足はどす黒く変色していて、すえた臭いが鼻をつく。
俺は、あがってくる胃液を堪えながら新しい包帯を巻いていった。
「ふん。驚いたか?」
勇者が自分の包帯を巻かれた手をかざして俺に見せる。
「これが、魔界国に行った代償だ。笑えるだろうが!魔界国に行き、一体の魔族も、魔物すら倒すことなく、この有り様だ」
勇者は、続けた。
「俺は、勇者なのに!この世界の奴らは、俺を使い捨てようとしやがった。だから、その代償を奴らにも支払わせてやる!」
マジですか?
俺は、汚れて酷い臭いがする包帯を持って部屋を出た。
背後で勇者の笑い声がきこえた。




