7ー11 嘘
7ー11 嘘
「ラダクリフ辺境伯とライディアは?無事なのか?」
俺は、ライドウにきいた。
だが、ライドウは、頭を振った。
「わからない」
ライドウには、ラダクリフ辺境伯たちの状況はわからなかった。
ただ、ラダクリフ辺境伯が勇者の手で切りつけられたことだけは、わかっていた。
そして、近い内に2人が処刑されるだろうこと。
それだけしか俺たちにわかっていることはなかった。
「もっと情報がほしいな」
俺は、呟いた。
マリージアへ行こう。
俺は、ひそかに思っていた。
実際に行かなくては、何もできない。
それまで黙ってきいていたクローディア母さんが口を開いた。
「マリージアへ行ってはいけないわ、クロージャー」
「母さん」
俺は、クローディア母さんを見た。
「俺は、行かなくちゃいけないんだ。だって、俺は」
俺は、そこまで言って口を閉じる。
俺は、魔王じゃないんだ。
だけど、この状況は、たぶん俺にも責任があるんだろう。
俺が、魔族をトカゲの谷に迎え入れたことが勇者を狂わせる原因の一端になったのだろうか?
俺が。
ちゃんと魔王じゃなかったから、勇者は、おかしくなっちゃったのかな?
「俺は、魔王じゃない。けど、俺には『魔王紋』が」
「クロージャー」
クローディア母さんが少し怖い顔をして俺を見つめている。
「たとえあなたが魔王であったとしても、あなたを今勇者のもとへと行かせることはできないわ。だって、私は、あなたのお母さんなんだから」
クローディア母さんがうっすらと涙ぐんでいる。
「誰の親だって、なんの理由もなく街を焼き、人を殺そうとするような人間のもとに自分の子供を行かせることなんてできないでしょ?」
クローディア母さん。
俺は、クローディア母さんを抱き締めたいと思った。
抱き締めて言いたかった。
俺は、クローディア母さんの子供でよかったって。
ほんとに、ほんとに、愛してくれてありがとうって。
だけど、俺は、マリージアへと行かなくてはならない。
俺には、このままライディアたちを見殺しにすることはできない。
俺は、嘘をついたんだ。
俺は、クローディア母さんにできない約束をした。
「俺は、マリージアには行かないよ、母さん」




