7ー9 魔王
7ー9 魔王
勇者が国境の街であるマリージアへと戻ってきたのは、もう冬が訪れようとしている頃のことだった。
身も凍えそうな北風の吹く薄曇りの日のこと。
魔界国との国境を守るマリージアの外れの砦の前に勇者が1人、帰ってきたのだという。
だが、その異様な風体に誰もが一目ではそれが勇者だとはわからなかったらしい。
だが、その持っていた聖剣によって勇者であることが認められた彼は、マリージアのラダクリフ辺境伯の屋敷へと案内された。
その時には、すでに勇者のしてきた悪行は、もとパーティーメンバーであった魔導士サハロフや、剣士スクルドたち、ひいては兵士たちの口からみなの知るところとなっていた。
なにより瘴気によって二目と見れない姿に変貌した聖女エスメラルダ姫のために人々は、怒っていた。
「こんな奴が勇者なわけがない!」
「奴こそが悪魔だ!」
マリージアの人々は、勇者を捕らえ裁くことを求めた。
だが。
勇者を捕らえようとしたラダクリフ辺境伯の騎士達はことごとくうたれ倒れた。
「ラダクリフ辺境伯こそが魔族に魂を売った悪だ!」
勇者は、そう叫びマリージアの街を焼いた。
そして、勇者だった者は、逃げ惑う人々を見てせせら笑いながら叫んだ。
「ラダクリフ辺境伯たちを捕らえよ!」
勇者だった若者の力に恐れを抱き彼に従う者が現れる。
それは、マリージアの隣の領土の主であるラドス男爵だった。
常々、マリージアの領土を手に入れようと狙っていたラドス男爵は、この機を逃さなかった。
「魔族と通じて勇者様をおとしめた非道の輩」
としてラダクリフ辺境伯とその甥であるライディア王子を捕らえると勇者と共に宣言した。
「この裏切り者共を処刑する!」
勇者の乱心とラドス男爵による行為は、ライドウによってトカゲの谷へと伝えられた。
俺は、魔法学園に戻っていたんだが急遽マリージアへと急いいで向かおうとした。
なんとかしてラダクリフ辺境伯とライディアのことを助けなくては!
俺は、転移の術を使って首都アルディスからマリージアへと移動しようとした。
だが、それをロナードたちに止められた。
「今、マリージアにお前が行くことは危険すぎる」
「それでも、いかなきゃ!」
俺は、ロナードを振り切ろうとしたが、リリウスとエディットにも反対されて思い止まった。
「考えてもみろ。今の魔王は、どう考えても『魔王紋』を持ち、魔族たちを守るお前だ!クロージャー!」
リリウスが俺に言い放つ。
「お前が捕まれば、もともこもない!」
「そうです!クロ様!」
エディットが叫んだ。
「クロ様にもしものことがあれば、トカゲの谷のすべての者が同じ運命を辿るのですよ!」




