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7ー8 勇者の存在理由は。

 7ー8 勇者の存在理由は。


 魔王城に近づくにつれて瘴気は、強くなるが街にも村にも魔族どころか魔物の一匹すら見かけることもなかった。

 「いくらなんでもこれはおかしいぞ、アロイス」

 剣士でありラミアトス王国の宮廷騎士団の団長でもあるスクルド・ライアーニは、勇者に提言した。

 「兵士も多くが病に倒れた。サハロスは、お前に追放され去ったし、エスメラルダ姫も病に倒れてしまった。ここは、いったん引き返すべきだ!」

 だが、勇者は、スクルドの言葉も無視しようとした。

 なぜなら彼は、勇者であり、勇者は、神々の加護のもと魔王を倒す運命であるのだ。

 「俺が魔王に負けるわけがない」

 自分の言葉にも心を動かさない勇者にスクルドは、嘆息し、そして、1人エスメラルダ姫のもとへと引き返していった。

 最後にたった1人になった勇者は、魔王城へとやっとの思いでたどり着いた。

 勇者は、万感の思いを込めて魔王城の城壁をくぐった。

 が、やはり城の中には、人影すらなくもちろん魔王の姿もなかった。

 勇者は、憤った。

 ここで魔王を倒さなくては、自分の存在理由を失ってしまう。

 勇者の脳裏にこれまでの旅が走馬灯のように思い出された。

 最初に魔導士であるサハロフを追放した。

 「あれは、奴が臆病風に吹かれたからだ!」

 次に、雑用係で荷物持ちのロイドを道端に捨てた。

 「病にかかった奴隷などなんの役にも立たない!奴隷なんかいくらでも買える」

 そして、自らの婚約者でもあり、将来の玉座を約束してくれる存在でもあったエスメラルダ姫を置き去りにした。

 「置き去りにしたのではない!病の身の上では我々の進軍についてくることは不可能だったから、待っているようにといってきたのだ!」

 最後に、剣士であり友でもあったスクルドに去られた。

 「奴は、エスメラルダに横恋慕していた。だから、俺が魔王を討伐してエスメラルダを妻に娶ることをよくは思っていなかったのだ!」

 勇者は、魔王城の玉座を前にして崩れ落ちた。

 なぜだ?

 勇者は、思っていた。

 俺の何が間違えていた?

 勇者の胸の奧からふつふつと怒りが沸き上がってくる。

 俺は、悪くはない!

 なぜなら、俺は、勇者なのだから。

 神々に愛され、その加護を受けし者。

 俺だけが魔王を討伐することができるのだ!

 勇者の体を闇が蝕んでいった。

 漆黒の闇に飲み込まれた。

 ソウダ。

 勇者は、消えていく意識の中で思った。

 スベテ、魔王ガ悪イノダ。

 「俺は!」

 勇者は、叫んだ。

 「必ず、魔王を倒して全てを手にいれて見せる!」


 

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