7ー7 勇者の進軍
7ー7 勇者の進軍
夏のくる頃、勇者一行は、やっと重い腰を上げて魔界国への進軍を開始した。
しかし、勇者たちが魔界国の国境を越えても魔族たちからの攻撃は一向にされる気配もなかった。
アナトリア公国側の砦を出てしばらく行くと魔界国の国境の砦が見えてくる。
勇者たちは、魔法兵団を先に出すといっせいに魔法で攻撃を仕掛けた。
魔界国の砦は、簡単に崩れ落ち勇者たちは歓喜したが砦の中に入るとそこには人影もなかった。
「おかしいぞ、アロイス」
勇者一行のメンバーである魔導士でありラミアトス王国の宮廷魔導士でもあるハーフエルフのサハロフは、勇者に進言した。
だが勇者は、頑としてサハロフの忠言に耳を傾けようとはしなかった。
「臆病風に吹かれたのか?」
勇者は、サハロフに言い放った。
「勇者のパーティーに臆病者は必要ない」
そうして勇者は、魔界国への進軍を開始した直後に魔導士サハロフを自分のパーティーから追放した。
サハロフは、勇者のパーティーの治癒師であり聖女でもあるラミアトス王国の王女エスメラルダ・ラミアトスに一度国へと戻るべきだと忠告したが、勇者に傾倒している王女エスメラルダは、聞く耳持たなかった。
勇者は、砦を越え魔界国へと兵を進めていった。
途中、勇者のパーティーの雑用係であり荷物持ちである奴隷ロイズが瘴気にやられて病に倒れた。
勇者は、ロイズを道端に置き去りにしてなおも進軍した。
魔界国の中心へと進むにつれて瘴気は濃くなり、屈強な兵士たちの中にも病に倒れる者が出てきた。
だが、勇者は、歩を緩めることはなかった。
「兵士など必要ない。勇者であるこの俺が無事ならそれでいいんだ!」
だが、ついには聖女であるエスメラルダ姫も病に蝕まれていった。
瘴気に侵され美しかった顔がみる影もないほどに醜く腫れ上り手足の指は腐り落ちていく。
「見ないでください、勇者様」
エスメラルダ姫は、懇願した。
「私の姿を見ないで」
最初、姫の具合がよくなるまで魔王城へと向かう途中の街へ駐留していた勇者たちだったが、悪くなる一方のエスメラルダ姫の様子に業を煮やし、姫を街に置いたまま出発することにした。
「俺は、必ず魔王を無事に倒して戻ってくる。それまでには、エスメラルダ、君の病も癒えることだろう。待っていてくれ」
勇者は、エスメラルダ姫の寝所の外から優しく囁いた。
エスメラルダ姫は、気丈にも微笑みを浮かべ、勇者に告げたという。
「どうか、ご武運を」
エスメラルダ姫は、涙を隠して勇者を送り出した。




