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6ー10 迎えがきました!

 6ー10 迎えがきました!


 ほえっ?

 俺は、衝撃を受けていた。

 『魔王紋』ですと?

 マジで?

 もしかして俺、魔王になっちゃったの?

 ロナードは、にんまりと笑った。

 「これは、面白いことになったな」

 ええっ?

 この状況で、喜んではるんですか?

 鬼や!

 俺は、心の中で呟いた。

 こいつは、鬼や!

 そのときだ。

 誰かが部屋のドアをドンドンっと乱暴にノックする音が聞こえた。

 俺たちは、目配せしあった。

 しばらくしてリリウスがドアを開くとそこには茶色のローブに身を包んだ見知らぬ少女が立っていた。

 少女は、ドアの前に立っていたリリウスを押し退けるとずかずかと部屋の中に入ってきた。

 そして、俺の方へとまっすぐに歩み寄ると俺の正面で跪く。

 「お迎えにまいりました、魔王様」

 はい?

 

 少女は、ラーズと名乗った。

 銀色の月の光のような美しい髪を腰まで伸ばしているそのほっそりとした美少女は、夜の闇のような黒い瞳で俺を見つめてきっぱりと言い放った。

 「さあ、共に魔界国にお出でくださいませ。そして、この人間の世界を滅ぼし我ら魔族の世界を作ろうではないですか」

 はぁ?

 俺は、心の中で百ほども突っ込みをいれていた。

 なんで俺が世界を滅ぼさなくっちゃいけないんだ?

 というか、魔界になんて怖くていけねぇし!

 「俺は、どこにも行かないからな!」

 俺は、男らしくきっぱりくっきりと返事をした。

 俺は、魔王なんかじゃねぇし!

 俺は、心の中でシャウトしていた。

 俺は、トカゲの谷のクロージャーだ。

 それ以上でも以下でもない。

 俺の返答をきくとラーズは、信じられないという様な顔をした。

 「なぜです?魔王であるあなたが、なぜ、そんなことを?あなたは、魔族を率いて人間たちを蹂躙したくはないのですか?くそ生意気な勇者たちを這いつくばらせて踏みにじってやりたいとは思わないのですか?」

 はい?

 今度は俺が信じられないという顔をしていた。

 いやいやいや。

 俺には、そんな趣味はないんですけど。

 俺は、普通にトカゲの谷でのんびり、平和に暮らしたいし!

 戦争なんて考えたこともねぇし!

 ラーズは、そういう俺を見てますます信じられないという様子でのたまわった。

 「信じられません!魔王たるもの、こう、もっと魂の奥からどす黒い欲望が溢れだしてきて、すべての人間どもを苦しめ、泣きわめかしたいとか思ったりはしないのですか?」

 「思わねぇよ!そんなこと」

 俺は、ラーズに告げた。

 「頼むからもう魔界だかどこだかに帰ってくれ!そして、そこで好きなように楽しく暮らしてくれ!」

 「そんな!」

 ラーズを部屋から追い出そうとする俺にラーズは、すがり付いてきた。

 「見捨てないで!魔王様!」

 「俺を」

 俺は、ラーズを部屋から押し出しながらわめく。

 「魔王と呼ぶな!」

 「魔王様!」

 ラーズは、なんとか追い出されまいとしてドアにしばみついていた。

 「お願いします!どうか、私を捨てないで!」

 宿の廊下を行き来する魔法学園の生徒たちが足を止めて俺たちを見ていることに気づいて俺は、ひきつった笑顔を浮かべた。

 「大丈夫ですから!違いますからね!これは、別に痴情のもつれとかじゃありませんから!」

 廊下にはいつの間にか人集りができていた。

 俺が困ってしまってフリーズしていると、ラーズがうるうるした瞳で跪いたまま俺を見上げて俺の腰にすがりつく。

 「魔王様ぁ・・なんでも言うとおりにしますから見捨てないで・・」

 俺は、深い深い溜め息をついた。

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