4ー3 クッキーですか?
4ー3 クッキーですか?
ふかふかの布団でぐっすりと眠って目覚めると俺は、なんだか胸が騒いですぐにベッドから這い出して窓辺へと向かった。
カーテンを開き、大きな両開きの窓を押し開く。
まばゆい朝の光の中、俺は、ベランダへと出ると清々しい空気を胸一杯に吸い込んだ。
春が近いとはいえまだ早朝は寒くて、俺は、身震いした。
だが、風は、爽やかだ。
俺は、ベランダから下を覗き込んだ。
ラダクリフ辺境伯のタウンハウスの庭は、見事な庭だった。
見下ろすと、一面に春の花である薄桃色のルルカの花が咲いていた。
俺は、空を仰いだ。
遠くから鳥のようなものがこちらを目指して飛んでくる。
だんだんと近づいてくる薄いオレンジ色のそれは、俺の使い魔であるロロだった。
さすが、ワイパーンだな。
小さくても侮れない。
一晩で首都アルディスと遠く離れたトカゲの谷の間を往復するとは、すごい。
「ロロ!」
俺が呼びかけるとロロは、一声高く鳴いて俺のもとへと降り立った。
あれ?
俺は、ベランダの縁にとまったロロを見て何か背負っているのに気がついた。
うん。
なんか、風呂敷のようなものに包まれた物がロロの背に結わえられている。
俺は、手を伸ばしてロロの背に結わえられているものをほどくと布を広げてみた。
それは、麻で作られた布袋と紙きれだった。
紙切れは、広げるとクローディア母さんからの手紙であることがわかった。
相変わらず拙い文字で一言だけ。
『あいたい』
俺は、なんだかクローディア母さんに抱き締められたような気がした。
俺は、この手紙を小さく折り畳むと最近作ったペンダント型の小さな空間収納の魔道具にかざした。
ペンダントが青く輝き、手紙は、収納された。
俺は、麻で作られた布袋を開くと中身を確認した。
その袋の中身は、クッキーだった。
トカゲの谷にいた頃、よくクローディア母さんが焼いてくれたものだ。
俺は、甘い香りの漂うクッキーを一枚つまむとかりっと一口齧った。
甘い、美味しい味が口の中に拡がると共に懐かしいトカゲの谷の思い出がよみがえる。
クローディア母さんの魔法だ。
俺は、幸せな気持ちに包まれた。




