3ー7 亜人
3ー7 亜人
俺とリリウスは、子供の頃から過ごしてきたトカゲの谷を後にした。
ライドウの荷車の端っこに腰かけて俺たちは、遠ざかっていくトカゲの谷をいつまでも眺めていた。
トカゲの谷からマリージア近くの街道までは、森の中に荷車が1台通るほどの小道を俺が土魔法で作っているのでライドウの荷車も森に阻まれることなく行き来できた。
だが、ライドウ以外には、街道を行く人々は誰も危険な森へと好んで入ってくる者はいなかった。
それに、俺が招かれざる客が来ないように結界の魔法をかけているしな。
マリージアへの旅は、エディットにとっては何もかもが初めてのことばかりだった。
エディットのいたカトラーシュ王国は、亜人というものがほとんどいないらしい。
いても奴隷かなんかだったのだという。
だから、亜人が多いアナトリア公国は、エディットからすれば驚きの連続だった。
竜人には慣れてきていたエディットもライドウの様な犬の亜人などは初めてだ。
そのふさふさの耳や尻尾は、エディットからすればすごく物珍しい。
「これ、触ってもいいですか?」
ライドウの尻尾に興味津々のエディットが訊ねると、ライドウは、ぎょっとしてわめいた。
「尻尾は、ダメだ!絶対に触っちゃダメ!」
「なんで?」
きょうとんとして問うエディットにライドウは、珍しく頬を赤らめて答えた。
「とにかく、ダメなもんはだめなんだっ!」
ライドウに拒否られてしゅんとしているエディットにリリウスが、慰めるように声をかける。
「あんなに嫌がってるんだ。仕方ないよ」
うん。
俺は、頷いた。
確かに、仕方がない。
普通、亜人の尻尾っていうのは、性感帯のことが多い。
だから、恋人とか伴侶以外には触らせないもんだ。
もちろん、俺たち竜人族だってそれは同じなんだがな。
俺は、落ち込んでいるエディットに話しかけた。
「ほら、エディット、あれ」
俺が空を指差すとエディットは、天を見上げた。
そこには、巨大な竜の姿があった。
「まあ!あれは、何ですか?クロ様」
エディットは、俺のことをいつ頃からかクロと愛称で呼んでいた。
そのせいか、最近は、リリウスたちまで俺のことをクロと呼ぶようになっていた。




