3ー6 トカゲの谷の意思
3ー6 トカゲの谷の意思
俺は、エディットに同情するつもりはない。
だって、エディットにもチャンスはあったはずなのだから。
城から逃げることだってできたはずなんだ。
それを運命だからと受け入れたのは、彼女自身だ。
そして、人間の中に戻らず、このトカゲの谷に残るということも彼女の選んだことだった。
でも、このトカゲの谷の者となった以上は、俺たちの家族、仲間だ。
エディットにも幸せになってほしい。
俺もクローディア母さんたちもそう思っている。
だから俺は、俺とリリウスが魔法学園の入学試験を受ける予定だということにエディットが興味を示したとき、彼女も魔法学園の入学試験を受けることをすすめた。
なんでもエディットが住んでいたカトラーシュ王国では、魔力を持つのは王族だけなのだという。
なのに、平民の血が流れるエディットが兄妹たちの中で一番魔力量が多かったということも彼女が疎まれた理由だった。
だから、エディットは、トカゲの谷にくることになった。
ちなみにエディットの持つスキルは光魔法だ。
光魔法は、使い手が少なく、いてもすぐに女神様の神殿とかに連れて行かれてしまうから、どっちにしてもエディットには、カトラーシュ王国にいたら明るい未来はなかったのかもしれない。
俺は、これらのことを全て隠すことなくエディットに話した。
たぶん、彼女が国に戻れば大切にされるだろうからな。
それでもエディットは、帰りたいとは望まなかった。
それからは、俺とリリウスとエディットの3人で一緒に魔法学園の入学試験のための勉強をすることになった。
エディットは、真面目で賢く、リリウスのいい教師となった。
根気強く、決して諦めることなくリリウスが理解するまで教えることのできる彼女を俺は、尊敬せずにはいられない。
おかげでリリウスは、ラダクリフ辺境伯のもとへ出発する頃には、なんとか試験を受けられるレベルの学力がついていた。
夏が過ぎ、秋が来る。
トカゲの谷が黄金色に染まり、人々が田畑の収穫に忙しい頃、俺たちが3人揃ってマリージアのライディアのもとへと旅立つときがきた。
俺たちは、トカゲの谷へと穀物などの仕入れにやってきたライドウの荷車に乗せてもらってマリージアへと向かった。
「クロージャー!」
クローディア母さんがライドウの荷車に乗り込もうとする俺を抱き締めた。
ティミストリ父さんも見送ってくれた。
ちなみに俺たちの学費と生活費は、ラダクリフ辺境伯が援助したいと申し出てくれている。
だけど、俺は、一応、魔石を売って得た金で俺とリリウスとエディットの学費とかを賄うつもりだ。
ただほど怖いものはない。
このことは、ティミストリ父さんとクローディア母さんも承知の上だった。
「誇り高い我々トカゲの谷の者が人間などに隷属してはならない」
それがトカゲの谷の意思だった。




