1ー3 村へ帰ろう!
1ー3 村へ帰ろう!
「この実を食べたから、私たちは、みんなと違うものになったの?」
母さんがきくので俺は、うなづいた。
「たぶん、そうだと思うよ、母さん」
「じゃあ、みんなにもこの実を食べさせれば、みんな、この姿になるのかしら?」
それから、俺と母さんは、2人で協力してピッカリンコの木に登るとその金色の木の実をとって周囲を取り囲んでいたトカゲたちにも次々に食べさせていった。
みな、俺たちが木の実を差し出すとおっかなびっくりで匂いを嗅いだりしていたが、そのおいしそうな匂いに負けて、口にしていった。
トカゲたちは、次々と光に包まれて竜人へと進化していった。
最後まで口にしようとしなかったのは、俺の父さんトカゲでこのトカゲ族の王であるトカゲだった。
だが、その父さんトカゲも渋々ながらもピッカリンコの木の実を口にした。
こうして、その場にいたトカゲ族は、みな竜人へと進化した。
俺たちは、みな、裸で、今までのような硬い鱗におおわれた体とは違って人間のように柔らかい肌に変化していた。
鋭い爪も失われ、牙も短くなっていた。
トカゲたちは、困惑していた。
こんな姿になってこれからどうして生きていけばいいのか。
しばらくすると、トカゲ族の王である俺の父さんがみんなに命じた。
「とにかく、この姿のまま森に留まることは危険だ。ひとまず村へと戻ろう」
俺は、近くにはえていたカシワリの木の風呂敷みたいに大きな葉にピッカリンコの木の実を集めて包むと蔓で縛って背負った。
だって、村に残されているトカゲたちもいるからね。
進化するならみんな一緒にしないと。
俺たちは、村への帰路についた。
今までの硬い鎧のような皮膚に比べて、今の俺たちは、無防備でみな無事に村へと戻れるか不安でみな、少しの物音にも怯えながら村へと戻った。
慣れない二本足で歩いての移動には、かなりの時間がかかって俺たちが村に戻る頃には、すっかり辺りは暗くなっていた。
俺たちは、切り立った岩場の中腹にある洞窟に住んでいたが、なかなか人の姿では、そこへと登ることができずに手間取った。
なんとかそこに登り洞窟にたどり着くと、俺たちは、残されたトカゲたちにもピッカリンコの実を与えて進化させた。
そして、それが終わるとみな、ばたばたと崩れ落ちるように眠りに落ちていった。
俺も眠気に逆らえずにその場に倒れ込んだ。