2ー11 勇者様でもできやしねぇ!
2ー11 勇者様でもできやしねぇ!
俺は、褒美の品を丸っと空間収納へと取り込むとラダクリフ辺境伯の屋敷を後にした。
俺は、そのままトカゲの谷へと帰りたかったが、リリウスに反対されていったんライドウの家へと戻ることにした。
「あいつの力になってやれよ、クロージャー」
ライドウの家へと帰る途中でリリウスは、俺に脳天気なことをのたまわった。
「そうすれば、もっといいことがあるかもしれないぞ」
「ああ?」
俺は、お気楽なリリウスが羨ましかった。
確かにライディアのくれた褒美は、十分すぎるほどのものだった。
騎士団の騎士様たちが乗るような立派な馬のひく荷馬車2台分の食料と塩、香辛料、それに穀物の種の入った革袋が数袋。
そして、なぜか騎士が持つような大剣が一本。
これは、ライディアの産まれた時に有名な賢者と呼ばれる人が贈ったものらしい。
柄を握り、そっと抜いてみると刃が黒い美しい剣だった。
『神剣 メイヤー・クリストフ』
頭の中で声がする。
『魔王のダンジョンで勇者が手に入れたといわれる剣。この世界の物で切れぬものなし』
俺は慌てて剣を鞘に戻した。
こんなもん、受け取れねぇし!
俺は、剣を部屋の隅に投げ捨てるとベッドの上に横たわった。
まったく、どうしたものか。
考えているとリリウスが俺のことを覗き込んできた。
「何、悩んでるんだよ、クロージャー」
リリウスは、俺を焚き付ける。
「別にいいじゃね?あいつの味方になってやれよ」
「簡単そうに言うな」
むくりと起き上がると俺は、リリウスに向き直った。
「あいつの味方をするということは、いずれこの国を二分する戦に巻き込まれるかもしれないってことなんだぞ!」
「だから?」
リリウスは、平然としている。
だけど、こいつには、何もわかってはいないんだろう。
俺は、諭すようにリリウスに話した。
「いいか?俺たちには、トカゲの谷のみんなを守るという役目があるんだぞ。こんなことに巻き込まれたら、みんなただじゃすまねぇし!」
「なら全部まとめて守ってやればいいじゃないか」
リリウスが俺をまっすぐな瞳で見つめた。
「俺たちトカゲの谷の者も、ライディアも、みんなまとめて丸っと守ってくれよ、クロージャー」
「何、無理なことを!」
俺は、ぷいっとそっぽを向いた。
「そんなこと勇者様でもできやしねぇし」
「でも、トカゲの谷のクロージャーならできるんじゃね?」
リリウスがにっと笑った。
「勇者様に無理なことでもお前にならできるって」
勇者様にできないことが俺なんかにできるわけがないって!
俺は、ぼふっとふかふかのベッドへと倒れ込んだ。




