2ー9 菓子ですか?
2ー9 菓子ですか?
オルティスは、長い廊下の外れにある大きな両開きの扉を開くと俺たちを案内した。
明るいサンルームの窓辺のソファに腰かけて本を読んでいるライディアの姿が目に飛び込んできた。
日の光に黄金色の髪が煌めいてこの世のものとは思えないほど美しい。
俺が言葉を失っていると、ライディアが本から顔をあげることなく言葉を発した。
「ちょっと待って。今、いいところなんだ」
「ライディア様」
オルティスが咎めるように声をかける。
「お待ちになっていた方が見えられましたよ」
オルティスのその言葉にライディアがはっとして顔を上げた。
「来てくれたのか、クロージャー」
「ああ」
俺は、ライディアの方を見て目を細めた。
「約束していたからな」
ライディアは、すぐにソファから立ち上がると本が膝から落ちるのもかまわずに俺の方へと駆け寄ってきた。
「よく来てくれたな、クロージャー」
「褒美とやらを受取に来ただけだし」
俺がそっけなく答えるとライディアは、すねたように口を尖らせた。
「つれない奴だな」
ライディアは、気を取り直すかのように微笑むと俺とリリウスをソファへと招いた。
「君が来ると思って特別に美味しい菓子を用意させていたんだ」
俺とリリウスがソファに腰かけるのを待ってオルティスがお茶の入ったカップを差し出した。
「さあ、召し上がれ」
ライディアに言われたが、俺は、菓子にもお茶にも手をつけることを躊躇っていた。
だって、もしかしたら何かの罠かもしれないし。
俺は、リリウスにもそうするように促そうとしてちらっと横を見たが、リリウスは、すでにテーブルに置かれた皿の上の菓子に手を伸ばして口に頬張っていた。
マジですか?
リリウスは、パクパクと菓子を両手にもってパクついている。
信じられない思いで俺が見ていると、リリウスは、にこっと笑った。
「うまいぞ、これ!」
俺は、遠くまでひいていた。
それは、こんがりと焼き上げられた甘い匂いのする焼き菓子の様だった。
確かに、菓子なんてないトカゲの谷から来た俺たちにとっては、信じられないようなご馳走かもしれない。
だが、そんなにがっつくことはないだろうが!
俺がリリウスをじとっと睨み付けていると、ライディアが微笑んだ。
「気に入ったなら、いくらか持ち帰るがいい」
俺は、顔から火がでそうなぐらい恥ずかしくって頬が熱くなる。
マジで、リリウスが幼馴染みの友人でなければもう二度と口をきかなかったかもしれない。
俺は、手にしていたカップのお茶を一気に飲み干すとどん、とテーブルに叩きつけた。
「で?褒美は?」




