1ー2 進化の実?
1ー2 進化の実?
「母さん、大丈夫。大丈夫だよ」
俺は、そう言うとその首の辺りに少し赤っぽい差し色のある小さめのトカゲに向かって手を伸ばした。
母さんトカゲは、俺にそっとよってくると俺の手に頭を擦り寄せてきた。
「ぐるる」
俺は、母さんトカゲの背を優しく撫でながら声をかけた。
「母さん、俺、大丈夫だから」
なんで、こんなことになったのか。
それは、俺たちが食糧難だったことが原因だった。
俺たちの住む土地は、痩せていて、食べるものがあまりなかった。
だから、俺たちは、森を越えて遠くの人間たちの村へと食料を求めて旅しなくてはならなかった。
だが、人の村に行くのは危険が多い。
毎回、多くの仲間たちが人間の手で殺されていた。
俺は、まだ子供トカゲだったから今まで遠征には行ったことがなかった。今回の遠征から初めて加わった。
そして、森の途中で俺は、それを見つけてしまったのだ。
それは、ピッカリンコと輝く金色の木の実のなる奇妙な木だった。
その暗い森の中でもその木だけはイルミネーションのように輝いていたが、俺の仲間のトカゲたちは誰もそれに近寄ろうとはしなかった。
だが、俺は、ついついその実のおいしそうな匂いにつられて近付いてしまった。
そして、その黄金色に輝く木の実をパクッと口にしてしまった。
とにかく、すごく旨かったことを覚えている。
その木の実は、甘くて、口に含むと溶けるように消えていった。
夢のようにおいしかった。
その後は、今に続くというわけだった。
俺は、トカゲから竜人へと進化してしまい、そして、転生前の記憶を思い出したのだった。
俺は、抱き締めていた母さんトカゲにピッカリンコの実を一つ拾い上げると差し出した。
「食べて、母さん」
それは、ひとりぼっちになって寂しかったからかもしれない。
母さんたちの言葉も理解できなくなって、俺は、どうすればいいのかわからなくなていたんだ。
母さんトカゲは、俺が差し出した木の実を戸惑いながらも口にした。
そして。
母さんトカゲの体がピッカリンコと黄金の光に包まれたかと思うと、その場に金髪に白い肌の、美しい青い瞳をした女の人が現れた。
「私の子!」
俺と母さんは、裸のまま抱き合った。
俺は、柔らかい母さんの体に抱き締められて、なんだか、恥ずかしいような気持ちになっていた。