9ー6 女神の慈愛の光
9ー6 女神の慈愛の光
俺は、ライディアのことをぐるりと見回した。
どこにも目立つ怪我などはない。
少しやつれているけど、無事なようだった。
「これが」
ライディアが左手の中指にはめた俺が送った指輪を指し示した。
「私を守ってくれた」
そうか。
俺は、とりあえずホッとしていた。
だが、ライディアは、表情を曇らせた。
「私は、大丈夫だが、叔父上が」
ライディアの視線の先には、薄汚れた掛布にくるまれて地面に力なく横たわっているラダクリフ辺境伯の姿があった。
俺は、わあわあ騒がしい中、エディットを探した。
「エディット!」
エディットは、すぐに牢の奥のラダクリフ辺境伯へと歩み寄ると、膝をついて手をかざした。
ラダクリフ辺境伯の勇者の聖剣によって焼かれた癒えない傷がエディットの力で癒されていく。
聖なる光が薄暗い地下に溢れだす。
「この光は?」
セツラが大事そうに抱えている世界樹の枝がどんどん成長していく。
「これは、女神の慈愛の光か?」
驚いている人々を俺とロナードは、助け起こしていく。
みな、怪我などはないようだったが、軽い傷程度ならこのエディットの癒しの光で治っていく。
「暖かい」
ダークエルフたちが口々に呟く。
これが、うちのエディットの力だ!
なぜか、俺がどや顔になってしまう。
すぅっと光が消えていきラダクリフ辺境伯がぱちりと目を開く。
「ライディア?」
「叔父上!」
ライディアがラダクリフ辺境伯に抱きついていく。
俺は、抱き合っている二人を微笑ましく見守りながらみなに告げた。
「ここから脱出するぞ!」
地下室の入り口の方が騒がしくなってきて、兵士がなだれ込んでくる。
灰色狼たちとダークエルフが兵士と交戦している。
俺は、兵士たちとみなの間に土の壁を作り上げて、兵士たちを阻んだ。
「このまま転移する!」
俺は、叫ぶと、術を発動した。
ぐん、と空間が揺れて、俺たちは転移した。
まばゆい光に目を細める。
次の瞬間には、俺たちは、トカゲの谷の村の広場にある大きな風車の前に現れた。




