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なぜ、私は血を流して、死にかけているのだろう。
「君は遺体さえ確認しなかったな」
ヨセフ。
生きてた。
「どうしたんだ?不思議そうな顔をしているぞ」
「君を殺すのはお門違いだって??そう思ってるんだろ??」
「あの女への一番の復讐は、お前を殺すことだ」
あの女?誰のことだろう。
「知ってるか。お前が死ねば、お前はあの夫と葬られるんだ」
ああ。そうだ。私は夫と同じお墓に入るだろう。
この人は何が言いたいのだろう。
「もう彼女には触れられない。遠い所へお前は行くんだ」
「知ってたか。俺はお前を救おうなんて最初から思ってなかったのさ」
「俺はあいつをガキの頃から知ってるが、あいつは昔からいい奴だった」
「なのに、お前はあいつより、あんな女に媚びへつらって」
「俺はお前も許さない」
「もちろん、あいつを破滅に追い込んだ、あの女もな」
ヨセフの声が頭の中でグァングァン響いてる。
うるさいなぁ。
静かにしてくれないかな。
昔々。
丘の上の大きなお屋敷に、女がひとり住んでいた。
そこで、一人のメイドが死んだ。
屋敷の女主人はたいそう悲しみ、彼女の棺に涙を落とした。
人々は使用人を思う女主人の優しさに感動した。
これは遠い遠い、昔の話。