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彼女が泣いている。
「夫が・・・夫が死んだのです」
「そう。かわいそうに」
「奥さま、私はどうしたら良いのでしょう」
「頑張って生きることです。あなたのご主人もそれを望んでいらっしゃるはずよ」
彼女はまだ泣いている。ほんとに泣き虫なんだから。
彼女の顎を掴んでこちらを向かせる。泣き腫らした目が大きく見開かれる。
「女ひとりでは心細いでしょう」
「そうだ。ここには部屋も沢山あることだし、ここに住めばいいわ」
彼女はひくっと嗚咽をもらして、息をととのえながら答える。
「でも・・・そんな。悪いです。奥様にそこまでの迷惑、かけられません。」
こんな時まで遠慮しちゃって可愛い人。どこまでも私に甘えてくれていいのに。
「遠慮することないわ。夜遅くに一人で帰られる方が私は心配だわ」
そう。あなたは一生、私の屋敷で暮らせばいいのよ。