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帝国民になった

 豪華絢爛な城の一室。黒髪で筋骨隆々の大柄の男が真剣な顔で手紙を読んでいた。


「ほう。ここに書かれていることが真なら・・・誰か!」

「はっ!」


 声をかけるとすぐさま背後に立って膝をつく執事服の男性。


「ガゼル。お前なら魔の山を踏破することが可能か?」

「・・・補給線を維持できるならば」

「単独でだ」

「不可能でございます。最速で走っても一週間はかかり、一瞬たりとも気が抜けません。常に死と隣り合わせ、人の域ではとても・・・」

「それを成したかもしれない人物が王国から亡命してきたらしい」

「・・・冗談にしては笑えないかと」


 ゴクリと生唾をのむガゼルと呼ばれた男。


「そいつの処遇をどうするか。お前はどう思う」

「もしそれが本当なら、すぐにでも貴方様直属の兵士にするべきかと」

「そうだよなぁ・・・しかしそいつは声が出ないようだが・・・」

「その程度で何か問題でも?」


 ふむ。と大柄の男は少し考え・・・。


「しかし、デル爺は国民権だけ与えて放置しろという。なんともったいない事よ」

「デル様が・・・」

「そこでお前に王命を与える。レンとやらの国民権の発行と監視を言い渡す」

「はっ!」

「もし我に仇成す存在なら消せ。益をもたらすなら良し。逐一報告せよ!」

「はっ!皇帝陛下の御心のままに」


 そう言うと執事の男は姿を消す。そして誰もいなくなった部屋で皇帝、カリニュールは大笑いする。


「王国とは馬鹿が治める国らしい!唯一無二の強さを持つ存在を追放とは!ははははは!!」


 もし魔の山を越えられるほどの戦力を持っているなら、すでに戦端は開かれているだろう。それが無いと言う事は・・・。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「レン!喜べ!皇帝直々に国民権が発行されたそうだぞ!今日からお前も立派な帝国人だな!」


 そう言ってレンの元に走ってくるのはグラス。赤い短髪で鉄の胸当てと皮の軽装備で身軽な格好をしている。


 剣の素振りをやめ、首をかしげるレン。何の事だろう?という顔だろうか。


「喜べよ!?王国から亡命したんだろ?」


 するとレンは膝を折ってしゃがみ、地面に文字を書く。


‘何の事だ?’


「ええ!?デルさんからそう聞いてたんだけど・・・ひとまずこれ渡しとくな」


 グラスはポケットから銀色のカードをレンに渡す。


「無くすなよ。それがお前の身分を証明するものだからな!」


 レンはそれを受け取り、じろじろと見て、自分のカバンに乱暴に突っ込む。


「レン。お前さんはこれで好きに帝国を動けるようになる。そこでわしから提案だ」

「うぇ!?デルさん!?いつの間に・・・」


 いつの間にかグラスの後ろに立っていたデルがレンに話しかける。


「この村の東から続く街道を道なりに行くと、大きな町がある。そこの冒険者ギルドで冒険者として登録するといい。お前さんも仕事はあった方がいいだろう?」


‘まだあなた達への恩を返せてません’


 レンはそう地面にかく。


「律儀な男だ。別に出世払いでもいいぞ?お前さんなら名のある冒険者になるだろうし」


‘俺みたいな喋れない奴が 冒険者になれるのでしょうか’


「関係ないだろ?王国はどうか知らないけど、帝国の冒険者は来るもの拒まずだぜ?戦えなくっても、仕事はあるからな」






「大量の魔物がまた来やがった!!動ける奴は援護頼む!!」


 弓を背負った男が村を走りながら大声で叫ぶ。


「最近多いな・・・それじゃあ俺は行ってくる!」


 そう言うと村の外へと走っていくグラス。レンも手伝うためには知ろうとするが、ガッとデルに肩を掴まれて止めれらる。


「あいつらの仕事を取ってやるな。こんなのこの村じゃいつもの事だ」


 そう言われて力を抜くレン。再びしゃがみ、地面に文字を書いていく。


‘大量の魔物の発生がいつもの事ですか?’


「ああ。いつもの光景だな」


‘この辺の山の魔物は殺したと思ったんですが’


「山の魔物はな・・・この近くには捨てられたダンジョンがあるんだよ。そこから溢れてきているんだ」 


 ダンジョンは貴重な宝や素材が豊富であるが、そこに住む魔物はかなり強い。

 ハイリスクハイリターンなダンジョンもあれば、危険は少なく見返りも少ないこともある。

 

 ダンジョンが捨てられる理由は二つ。敵が弱く、得られるものがない。もしくは、敵が強すぎる割に道中に何もない。

 敵が弱すぎるなら、ダンジョンの入り口をふさげば魔物は溢れないが、溢れているということは後者なのだろう。


‘なるほど’


「だからわしらの事は気にせず、東の町へ行くといい。そこでお前さんにとってきっといい出会いがあるはずだ」


‘わかりました 明日出発します’


「うむ。そうするといい」


 そう言ってデルは診療所に戻る。

 

 レンはというと、村の外へと歩いて行く。誰にも見つからない様にこっそりと・・・。

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