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マリー暗殺

物語終盤、テンションをあげつつ書いて行きたいと思います。

この話は残酷な描写を含みます。苦手な方はご注意を。

読みたくない方の為に後書きにてあらすじを書いておきます。

「あれがターゲットっすね・・・」


 暗めの茶色いローブを羽織り、路地裏から半身だけ出してポツリとつぶやいたのは、シノビのドロシー。

 皇帝が帝都に招くと聞いてから、毎日門の近くで見張りをしていた。


 帝都の出入り口は一つしかない。円形にできたこの首都の、大きなレンガ造りの外壁は上ることが困難であり、上には兵士が駐在している。

 それに外壁の外側は谷になっており、落ちると下を流れている流れの速い川にあっという間に流されてしまう。

 首都の中央に大きな城が聳え立ち、それを囲うように町々がある。


 ドロシーが見つめるのはマリーだった。

 レンと手を繋ぎ、何か話しながら歩いていた。


「まったく・・・()()を生かしておくなんて・・・尻拭いする私の身にもなってほしいっすよ」


 そう小さな声で愚痴を吐き、マリーとレンの後ろをついて行く。

 人ごみに紛れ、気配をなるべく消し、ただただついて行く。


 一瞬のスキをも見逃さないために。



 するとマリーが人気のない路地の店を指さし、レンの手を引いて走る。


「あの男は・・・剣士?まあ覇気もないですし、無視でいいっすね・・・っと!」


 ドロシーは壁を蹴りあがり、屋根の上に上がる。

 そして二人の周りに人が消えた瞬間。懐から尖った鉄の棒を取り出し・・・。


「これで任務完了っす!!」


 一足にそれを投げる。狙いはマリーの後頭部。


 それがマリーに刺さり、マリーは絶命する。




 そうドロシーは思っていた。


「っ!?」


 小さな鉄杭が、マリーに当たる寸前で消え・・・。

 反対にありえないほどのスピードで鉄杭がこちらに飛んでき、ドロシーの首をかすめてどこかに飛んで行ってしまった。





「どうしたですレン?急に黙って・・・」


 レンは目を細め、完全にドロシーを見ていた。


「・・・ならいいんですけど。こう言う隠れたところに名店はあるんです!!私の鼻がそう言ってます!!」


 そして再びマリーはレンを引きどこかへ消えていく。





 ドロシーはその場に腰を降ろし、大量の冷や汗をかく。


「な・・・なんですか・・・あの男はっ!?」


 一瞬だけ当てられた殺意に体が震え、ふいに両手で自分の体を抱く。

 

「でも・・・まだチャンスはあるっすよ・・・この程度であきらめるほど私は弱くないっす」


 震える体を叱咤し、立ち上がる。そしてそのまま屋根を降り、ドロシーは人ごみの中に消えていった。







 

 少しさび付いた古い宿屋に、レンとマリーは来ていた。


「風情があっていい宿じゃないですか。あ、二部屋一番安いところで!」

「かしこまりました」


 宿屋の受付嬢が部屋の鍵を二つ渡す。


「うっ・・・まぁ節約は大事ですからね。私もちょっとだけ甘味は控えます・・・分かってるです・・・」

「お客様?」

「なんでもないです!独り言です!」


 マリーとレンがそれぞれ鍵を受け取る。


「ふぇ!?ままま・・・まだそう言うのは早いです・・・覚悟が・・・え?そう言う意味じゃない?・・・だめですよ!レンもちゃんとベットで寝ないと・・・」


 マリーが一人でぶつぶつと喋るのを不思議そうに見る受付嬢。


「とにかく!まだ二人で一緒の部屋は・・・エルフの里?あれは仕方なく・・・まぁレンがどうしてもって言うなら・・・そこまででもない!?なんでですか!!私の魅力にメロメロでしょう!?あ!鼻で笑いましたね!!むぅ~~!!」


 そう言いながら、二人は二階の部屋へと向かって行った。








 太陽が沈み、月が空の真ん中で輝く頃。宿の廊下を足音の一つも立てずに歩く人が一人。

 この宿屋の受付嬢だった。そしてマリーの泊っている部屋の鍵を静かに開け、扉を音もなく開く。


「ふぇぇ・・・レン・・・アーンはまだ恥ずかしい・・・です・・・んまい・・・ですけど・・・」


 ぼそぼそと寝言を言うマリー。そしてその寝ているマリーの横に立つ受付嬢。


 受付嬢は懐から短刀を取り出し、鞘を抜くと・・・マリーの心臓にめがけて振り下ろす―――






 瞬間。受付嬢の視線が変わる。見下ろしていたはずのマリーが徐々に上に上がっていき、いつしか視線はベットの下に・・・。

 そして見る。横にある自分の体を下から見上げる様に・・・。


 そして・・・頭を失った首の断面からは・・・大量の血が噴き出て――――。







「はっ!?」


 あまりにもリアルな光景だった。今自分は首を斬り落とされて死んだ。間違いなく。


「はぁっ!はぁっ!」


 首に冷たいものを当てられている。そして血が滴っているのを感じる。朝方鉄杭が掠めた場所と同じところに、剣の刃が当たっている。


 ガシッ!と後ろから首を手の平で掴まれる。あまりの握力に声の一つも出せず・・・。

 持ち上げられ、宙ぶらりんのまま、受付嬢は宿の外へと連れ出されていった。






 乱暴に投げられ、受付嬢は即座に受け身を取り、体勢を低く短刀を構える。


「なんなんっすかお前は・・・」


 月明かりが照らす中、目の前にるレンが木の板を掲げる。


『朝、マリーを殺そうとした奴だな』

「・・・」


 レンは持っていた木の板を反転させる。


『宿で殺さなかったのは、マリーに血がかかるのが嫌だったからだ。言ってる意味は分かるな?』

「・・・いつでも私を殺せるってことっすかね」


 レンは木の板を横に投げ捨て、剣を抜く。いつもの父の形見(ロングソード)ではなく、少し短めの錆び付いた剣だった。


 じりじりと詰め寄るレン。受付嬢・・・ドロシーはその場から動かない。否、動けずにいた。


 あと数歩で剣の間合に入る・・・その瞬間、ドロシーは袖に隠していた小さな球を地面に投げる。


(無理無理無理無理!!逃げ一択っす!!死にたくないっす!!)


 圧倒的な実力差を感じたドロシーは最初から逃げるつもりだった。今回失敗したら諦めて、マリーを放置することにしていたのだ。

 だからこそ隠していた逃げるための道具。


 地面に投げつけられた玉からは大量の煙が上がり、範囲10メートルほどが真っ白い煙で埋め尽くされる。


「がっ!?・・・・なんで!!」


 スンッという剣の風切り音と共に、かかとのあたりに痛みを感じ・・・足首から先が動かず、たまらず転ぶ。


 無様に這いつくばりつつも、少しでも距離を・・・と思ったドロシーだったが、前を向いていた鼻先をかすめる様に剣が刺さる。


 見上げると、そこには無表情のレンが、ドロシーを見下ろしていた。


「ひぃ!?・・・いいい・・命だけはどうか・・・」


 レンはしゃがみ、地面に文字を書いていく。


『俺の大事な人を殺そうとしたのに、お前は殺されたくない?』

「すいませんすいませんすいませんすいません!」

『普通殺すのに失敗したら殺されるだろ。人も魔物も戦いの終わりはどちらかの死でしか終わらない』

「許してください・・・仕方なかったんです・・・アレは・・・危険なんです」

()()?』


 レンはガシッ!とドロシーの髪を乱暴につかみ、頭を地面に叩きつける。


「ブッは・・・マリー様です・・・」

『どう考えても危険なのはお前だろうが』

「多数の人の為に・・・仕方なく・・・」

『だったら俺が、その多数の人を全員殺してやるよ。全員俺の前に連れて来い。善人悪人、老若男女全部殺しつくしてやる』

「ひぃ!?・・・どうか許してください・・・何でもしますからぁ・・・」


 ドロシーの顔は涙と鼻水と鼻時でぐちゃぐちゃになっており、レンが切った足からはだらだらと血が流れていた。

 レンは少し長めに息を吐く。

 

『これが最後の忠告だ。次はない』


 そう書くと、持っていた剣をポイッとドロシーの前に捨て、カバンから瓶を取り出して、中の液体をドロシーにぶっかける。


 するとドロシーの怪我が治っていく。足の血も止まり、潰れた鼻も元通りに・・・。


 驚き、顔をあげたドロシーの前にすでにレンはいなく・・・。



 体を起こし、目の前に捨てられた剣を拾い、胸に抱くドロシー。





「レン様・・・」





 そうポツリとつぶやくドロシーの声は、どこか熱っぽかった。

ドロシーはレンによりマリー暗殺を阻止される。

レンにボロボロに負けたドロシーは、なぜか恋する少女のようにレンの名前を最後に呟いた。


簡略化すると二行で終わるという・・・なんか悲しい・・・。

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