ifストーリー『賢者ちゃん』
賢者エリーのifストーリーです。
今後あまり出番もなく、レンとの絡みもほぼないので書きました。
あんなロリびっち救われなくてもいい。と思う方は飛ばしてください。
冒険者学校を卒業したら、魔法学院で魔法の研究をする。それが私の人生の目標だった。そこでの研究が、この国のためになると思ってたから。
賢者という天啓を得た時から私はそう考えていた。
考えることは好きだ。誰にも迷惑をかけないから。
想像することは好きだ。まだ見ぬ何かを創るというのは胸が踊るから。
そして私は決死の覚悟で、卒業過程であるダンジョンに潜ることにした。
死ぬかもしれない。でもここさえ乗り切れば・・・私の好きなことを仕事にできる。
そんな私の覚悟を嘲笑うかのように、魔物は私を蹂躙した。成す術もなく・・・私の人生は終わりを告げた。
かと思ったが、どうやらまだ生きているらしい。
「私・・・生きてる?」
「目を覚ましたかエリー?」
知らない男が私の眠るベッドの横にいた。
金色の髪を輝かせるカッコイイ男性。その後ろには優しく微笑む銀色の髪の女性。
そして・・・部屋の入口にいる目の死んでいるような黒髪の男性。
「えっと?」
「危ないところだったな!勇者の俺が助けに行かなければ死んでるところだったぞ?賢者エリー」
どうやらこのパーティに私は救われたようだ。
「ありがとう」
「別に構わないさ。それよりエリー。俺達のパーティーに入らないか?有名なのはこの辺ですの俺、聖女のアンジュ、そして賢者のエリー!三賢者が揃うパーティーなんて前代未聞だ!」
正直魅力的な話だ。賢者という天啓のせいでロクにパーティーを組めない私、ここを卒業するまでなら加入してもいいかもしれない。
「分かった。よろしく」
「おお!よろしくなエリー!俺は勇者アルフレッド!」
「私が聖女のアンジュよ」
奥にいる彼は何も言わない。寡黙な人なんだろうか?
「えっと・・・後ろの彼は?」
「ん?ああ。あれはどうでもいい。肉壁の奴隷みたいなもんさ。名前すらないよ」
勇者はそう言って、いかに華麗に自分が私を助けたか語り始める。横にいる聖女も勇者をはやし立て、話を盛り上げている。
しかし私はそんな話よりも、何故か後ろの彼のことがとても気になっていた。
このパーティーはかなり強かった。
私が1人で手こずったダンジョンを軽々と制覇し、卒業過程を通過することが出来た。
このパーティーと言うよりも、名前もない彼が、たった1人で全ての魔物を蹂躙していたのだった。
私たちはその後ろを着いて行っただけに過ぎなかった。
しばらくして、冒険者学校を卒業することになった。
私は冒険者になるつもりはなく、この後魔法学院を受験するつもりだった。
卒業日の夜。祝いと称して酒の席に呼ばれた。
相手はもちろん勇者パーティだった。
「卒業を祝って・・・カンパーイ!!」
「カンパーイ!!」
勇者と聖女のテンションが高い。2人は酒を飲み、私は水をちびちびと飲む。
「なかなかハードだったが、ためになる学校だったな!そしてこれからは俺たちの伝説が始まるわけだ!」
「そうねアル!輝かしき三賢者の奇跡!なんて記事も上がるかもね!」
パーティと言う割には・・・いつも最前線で戦ってくれた彼がいない。
「彼はいないの?」
「彼?ああ!アンジュのアレか」
「エリーあれのことは気にしなくていいの。ここは人しか入れないしね。言葉の理解できない獣はお断りなの」
「・・・」
「そんなことよりもエリー!めでたい席なんだから、1杯くらい付き合ってくれよ、な?」
「そうよエリー。もし酔い潰れても、ちゃんと介抱してあげるから」
「要らない」
「まぁまぁそう言わず!」
そう言って勇者は私のコップを取り上げ、酒の入ったコップを目の前に置く。
「要らない。あと私は今日でパーティを抜ける」
「ああ?なんでだよ。これからが楽しいってのに!」
「そうよエリー。考え直そ?ちょっと1年くらい冒険者を試して見てもいいじゃない」
「決めてたことだから。帰る」
正直この2人にはなんにもお世話になっていない。学科の授業では勉強を教えてくれとせがみ、課題は私のものを丸写し。
実技に至っては彼が1人で魔物を蹂躙した。
「はいそうですかって帰すわけ・・・」
「パラライズ」
バリッと勇者の体が痺れ、私を掴んだ手が離れる。
「アル!?・・・この恩知らず!!」
「あなた達に恩などない」
私は振り返ることなく、酒場を後にした。
その後町を散策する。
彼にはちゃんとお礼を言って別れたかったから。
言葉は分からないらしいけど、それでも・・・私がそうしたいから。
街の端から端まで歩いたが、彼の姿はなく・・・諦めるしかないかな?そう思った時、暗闇の向こうで魔物の咆哮が聞こえた。
「誰かが襲われてる?」
自分などが言っても足でまといだが、倒すことは出来なくとも、一緒に逃げるくらいなら・・・。
そう思って私は走り始めた。
「ライト」
辺りを照らす魔法を唱え、魔物の声がする方へと走る。
そこで私が見たものは・・・大量の魔物の死体と、それを解体していた血塗れの彼の姿であった。
私を見つけると首を傾げて、すぐさま作業に戻る。
「こんな夜中に一体何を・・・」
無意識なのか彼は地面に何かを書いていた。
『アンジュに寝る暇があったら稼げって』
彼はハッ!とした顔をし、すぐさまその文字を乱暴に消した。
「言葉・・・分かるの?」
彼は首を傾げる。
「・・・ずっと聞きたかった。名前は?」
彼はじっと私を見る。そして観念したかのように・・・。
『レン』
「レン・・・いい名前。ありがとうレン」
『?』
「私を助けたお礼」
『俺じゃ――』
そう書こうとした彼の文字を手で消す。
「私を助けたのはレン。それでいい」
『君がそう言うんだったらいいけど・・・』
「エリー。私の名前」
『エリー』
不意に血まみれの彼の頭を抱きしめる。
なんでこんなことをしたのかは分からない。
ただ・・・
ここでレンとお別れするのが嫌だった。
「レン。あのパーティーを抜けて。私と一緒に来て」
彼の耳元で囁くように言う。
「話は私がつける。レンは物なんかじゃない」
レンはそっと私の手を解き、地面に文字を書く。
『きっとエリーは苦労する。俺という重荷を背負って欲しくない』
「私は戦闘が苦手。だからレン・・・私を助けて」
『助ける?』
「そう。レンは私を守る。私はレンを守る。お互い様」
しばらく考え込むレン。そして出した答えは・・・。
『分かった。アンジュを説得できるなら、俺はエリーの剣となる』
「剣なんかいらない。私が欲しいのはレン。交渉成立」
翌朝に街の入口で待ち合わせすると約束し、私はすぐさまさっきの酒場に向かう。
「おお〜どうしたエリー?酒に付き合う気になったか?」
「聖女。あなたに話がある」
「何かしら?アルの相手をしたいなら大歓迎よ?」
「違う・・・私にレンを売って」
「は?」
金貨がパンパンに入った袋を机の上に投げる。
「私が魔道具制作で稼いだお金」
「レンを売れだなんて・・・そんなのッ!」
「いいじゃねぇかアンジュ!どうせいつかは捨てるんだし、こんだけ金があれば当分遊べるぞ」
既に勇者は袋を取り、中の金貨を覗いていた。
「うぅぅ・・・アルが・・・そう言うなら・・・」
「交渉成立。用事はそれだけ」
私は酒場を後にする。意外にも聖女はレンに少し執着を見せたが、勇者の方がよっぽど大事なのだろう。
レンを物のように扱うのはこれが最後だ。
これからは私の隣で・・・。
レンと共に行動するようになって数年が経過した。
私は無事魔法学院を首席で卒業し、研究室を1部屋貰えることとなった。
専攻は魔道具の制作。魔力の少ない人や、そもそも扱えないような人の為に作り始めた。
そしてようやく、念願であった魔道具ほぼ完成した。
タイミングよく研究室の扉が開く。
中に入ってきたのはレンだった。
彼は私と一緒に魔法学院へ入学。レンの専攻は魔物研究。入試の時にメジャーな魔物の生態とか詳しく書いてみたら?と助言すると、それが色々新発見だったらしく、彼は入学を許可され、私と一緒に学院生活を送った。
レンは空中に魔力で文字をかける魔道具(私作)を使い文字を書く。
『呼んだかエリー?ハウンドキャットの論文の作成で忙しいんだけど・・・』
「忙しいのにごめん。こっち来て」
レンが私の前に立つ。私の身長はあれから伸びなかったので、レンの顔を見るのにはどうしてもちょっと見上げなければいけない。
「左手出して」
首を傾げつつ、私に向かって左手を出す。
その左手の、薬指に銀色の指輪をつける。
(なんだこれ?)
(聞こえる?レン)
(ッ!?)
私はレンに見えるように自分の左手をあげる。
私の左手の薬指には、レンにつけた物と同じ指輪がハマっている。
(とうとう完成したの。この指輪をつけている人同士なら、意思疎通ができる魔道具)
(・・・)
レンは絶句していた。まさかこんな風に、自分の言葉が伝わる日が来るとは思っていなかったのだろう。
(レン。これが完成したら、言おうと思ってたことがあるの)
(奇遇だな。俺も・・・ずっとエリーに言いたかったことがあるんだ)
お互い見つめ合い・・・
((結婚しよう))
同時に同じことを考える。
そして2人は笑い合い・・・。
(絶対幸せにするから)
(こっちのセリフ)
エリーはそっと目を瞑り、レンはエリーの方に両手を置き・・・。
2人の唇が重なった。




