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「せっかく出したのだから、ただ消し去るのも虚しいのお」

「……駄目ですよ。このお金を使っては」

 魔王様、まだ未練タラタラのご様子だ。少しも目を放せない。


「そうではない。……ちょっとだけ……デュラハンよ、突撃してお札の中を泳いでみるがよい」

「お札の中を泳ぐでございますか――!」

 なぜ? せっかく綺麗に積まれているのを崩すのは……片付けるのが面倒になるかもしれません。いや、ならないかもしれません。むしろ私の手で片付けたい。

「ユーチューバーがやっているような楽しい動画が撮れるかもしれぬぞよ」

 ……冷や汗が出る。ネット小説読者がユーチューブに流れてしまいそうで。

「私は全身金属製鎧なので……泳ぎは苦手なのです。なかなか浮かないのです」

 特に息継ぎが苦手でございます。超高速犬かきが必要なのです。

「札束の中なら心配無用だ。息継ぎの必要もない。泳ぎの練習もできるぞよ」

「……」

「それに、最初から顔ないやん。アンデットやん」

 それは言わないで~――!

「顔はございませんが、アンデットでもございません。ここ重要です」

「どうでもよいぞよ。さあ、早く!」

 ……いいのだろうか、お金をそんな使い方して……バチが当たらないだろうか。指に唾を付けて耳に付ける。冷や汗が出る……古過ぎて。今時、唾で耳栓する人っているのだろうか……。意味あるのだろうか。

「顔のない卿が悩むことこそ無意味ぞよ」

「申し訳ございません!」

 私としたことが迂闊でございました。

「さあ、早く! ひょっとすると、耳に水が入るように体の隙間にお札が少しだけ挟まったりすれば……予がお金を消す際に見逃してしまうかもしれぬぞよ」

「――!」

 悪魔の誘惑! いや、魔王様の誘惑――! 一枚や二枚なら……造幣局も怒らない~?


「とぅ!」

 札束の山に体ごとダイブした……というよりは突撃した。最初は硬かったが……塊を次々に崩していくと、たしかにお札の中を泳げそうだ。

 全身を受け止めてくれるお札の感触が……心地良い――! まるで札束の海だ!

 金槌な私も悠々と泳げた……。まさか玉座の間で水泳の練習ができるとは思わなかったぞ! 金さえあれば何でもできるのだ――!

「アーハッハッハ! アーハッハッハ! 気持ちイイ~!」

「……。予も参るぞよ!」

 バッサーン!

 魔王様も札束の海に飛び込まれ童心に返ったようにおはしゃぎになられる。

「プッハー! 世の中、(ぜに)! 銭銭銭(ぜにぜにぜに)ぞよ!」

 魔王様もお顔が緩みっぱなしだ。頬に札が張り付いている。

「なゼニ~でございます~!」

 札束を手ですくってかけられる。ヒャッ、冷たい! いや、冷たくない~気持ちいい~!

「あ、やりましたね魔王様! お返しします、えーい!」

 負けじと札束を手にすくって魔王様の顔にかける。

「無礼ぞよ」

「……申し訳ございません」

 お遊びではございませぬか……。


 札束の海にプカプカ浮かび、ふと気が付いた。

「魔王様、なぜ無限の魔力があるのにお金を出したのですか」

「……」

 考えてもみれば、魔王様の無限の魔力で耐震補強工事を完工したり、ワープできる井戸を作ったり、女子用鎧を並べたり、なんでも自由自在にできるはずだ。魔法で解決すれば何の問題もない。インフレも起こらない。造幣局も怒らない。

 魔王様も札束の海に浮かばれて……波も無いのに浮き沈みしている。

「魔王様のお好きなチートではございませんか」

「予はチートが嫌いなのだ!」

 どの口が言う……。札束の海はチートの真骨頂ではないか! とは言えない。魔王様には魔王様のねじ曲がってひねくれた考えがおありなのだろうか。

「無限の魔力を使えば、必ずや世がチートしたとバレてしまう。しかし、現金なら……」

 現金なら……なんだろう。チートがバレないのか。

「魔王様は……ひょっとして私めをチートの共犯者に仕立て上げるため、あえてお金を出したのでございますか」

 さっと顔を逸らさないで――!

「共犯者とはちょっと無礼ぞよ」

「申し訳ございません! ちょっと無礼でした」

 言葉が過ぎました。

「……デュラハンが一人で罪を被ればノープロブレム」

 ――!

「イエスプロブレムでございます――!」

 問題だらけだぞ! 共犯者を超え犯人にでっち上げられる~! このお札の海が私めのせいでございますか――! ホワ~イ!

「適当なカタカナ英語はやめい。予のために命を捧げられてこその四天王ぞよ」

「ぎょ、御意」

 恐いよお……。恐過ぎるパワハラだよお……。鳥肌が立ちガクガク顎が震える。首から上は無いのだが。

「有難き……幸せで……御座います……」

 四天王って命がけなの――! いや、魔王様のためなら命を捨てる覚悟はありますが……なんかこれは違うぞ――!

 私が魔豚箱で暮らしてハッピーエンド? じゃあ、このお金はどうなるの! おとがめなしなの~!

「ハッハッハ、冗談ぞよ」

「ぜんぜん冗談に聞こえませんでした……」

「有りよりの有りぞよ」

「無しよりの無しです――!」


 ザブンと札束の海に潜るのもやめてほしい。こんな遊びは……駄目だ! どんどん金の魔力に心がすさんでいく。

 ――無限の魔力よりも怖いぞ、金の魔力!


 二度と出られなくなる前に札束の海から抜け出した。

 体中についたお札を払い落とした。適当に……。


読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] もういっそのこと、お持ち帰り厳禁の札束プールを作って観光地化すれば……ww
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