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インフレる?


 玉座の間の大扉には鍵を掛け、カーテンはキッチリと閉められている。外から絶対に見られてはいけない。レベル1のスライムにも見られるわけにはいかない。


「もし見つかればきっと魔造幣局が怒ってきます。『勝手にお金を作るな~!』と怒鳴り込んでくるでしょう」

 他にも怒ってくるところは数多くあるだろう。泥棒とか遠い親戚とかも多数押し寄せてくるだろう。赤の他人も。女勇者も。

「魔造幣局には別の仕事を与えればよかろう。勲章作りとかオリンピクピク記念硬貨作りとか」

 ピクピク記念硬貨ってなんだ……。

「仕事を奪うとかの問題ではありません! 本来は無いはずの現金が魔王様の手によって大量に作られれば、お金の価値が下がり物の値段は跳ね上がります」

 俗にいうインフレーションです! 略してインフレです。インフルでもタミフルでもキャビテーションでもありません。

「ポテチ一つ買うために札束を持って歩かなくてはならなくなります」

「デュラハンよ、別にわざわざ札束を持ち歩く必要はないぞよ。PaiPaiでよいぞよ」

 ――キャッシュレス決済! たしかに札束を持ち歩く必要はない――んが!

「冷や汗が出ます。さらには『i』ではなく『y』です」

 パイパイってなんだ……パイパイって!

「どっちでもよいぞよ。電子マネーなら札束を持ち歩かなくてもよいぞよ」

 誇らしげな顔をしないでいただきたい。

「お金の価値が下がる根本的な対策にはなっておりません。それに、だったら……何故ゆえにこれほどたくさんの札束を玉座の間に出したのですか――!」

 電子マネーなら少なくとも私にはバレずに済んだものを……。


 玉座の前で跪く私の背後には、数メートルの高さまで積み上げられた札束がキッチリ正方形に置かれている。

 見上げるくらいに積まれている~! 移動するにはフォークリフトが必要なのではないか……。だがここは四階だ。魔王城にはエレベーターなどありはしない。


 巨大な札束の山は……見ていると頭がおかしくなりそうだ。

 ……魔が差しそうだ。


「そうそう! そこぞよ! 我らは魔族ぞよ。魔族にちょっとばかり魔が差しても誰も文句は言わぬぞよ」

 魔族に魔が差すのは正論と言いたいのですか。

「でもコレは、ちょっとどころの魔ではございません! ごっぞり魔がさしてもこれほどの現金を魔法で出してはなりませんっ!」

 いったい幾らあるのだろう。ひいふうみいよお……にいのしらみのむしたのやいたのとったの……ひょっとすると全世界に出回っている札の量を凌駕しているのではないだろうか。魔銀行の魔金庫にもこれほどの札は置いてないだろう。


 魔王様は玉座で寂しそうに呟かれた。

「はあー。予は、いつも……迷惑ばかり掛けている卿や他の四天王、魔王軍の皆に素直に喜んで欲しかっただけなのだ」

「……魔王様」

 たしかにいつも迷惑ばかり掛けられている。いつもいつも迷惑ばかり掛けられている。そして今日も……。

「お年玉を貰った童のように、ただただ無邪気に喜んで欲しかったのだ」

 ……そうでしたか。魔王様の目が潤んでいらっしゃる。

「申し訳ございませんでした……。せっかくのお心遣いに素直に感謝できず……」

 魔王様のお心遣いに……目頭が熱くなる。


 魔王様は本当に耐震補強工事を進め魔王城の安全を第一に考えておられたのだ。

人間共との無益な戦いを止めてから魔王軍の収入が減り、士気が下がる魔王軍を活気づけるために必死でおられるのだ。


「そのお気持ちだけで十分でございます。我ら魔王軍は一丸となって魔王様のために働くことをお誓いいたします。お金などは要りませぬ」

 魔王様からのお年玉は、お心遣いだけで十分でございます。

「お年玉を……母親が全部没収してはならぬ」

「はっ! はあ?」

 ――ちょっと待って、なんの話だ。お年玉の話って……もう正月をとっくに過ぎているのですぞ。

「貯金すると嘘をつくのはよいとしても、せめて1割は子供に還元してやらねば子はグレる」

 ――たしかに!

 一円も手元に残らなければ必ずグレる! グレてやる! ポチ袋すら貰えない! ポチ袋だけなら要らない~!

「子供の頃に貰う50円と大人になってから貰う50円とでは価値が違ります! ……嬉しいけれど」

「……。今頃50円貰って喜ぶ童はおらぬ」

「――!」

 いや、普通に嬉しいぞ! 50円あれば……指で弾いて回したり、真ん中の穴に糸を通してネックレスにしたり、匂いを嗅いだり5円玉と戦わせてみたり、おはじきのように遊んだり……。

「丸一日は遊んで暮らせます」

「50円で遊んで暮らさないで――! ……卿はハイブリッドよのう。開いた口が塞がらぬ」

「お褒め頂きありがとうございます」

 私は褒められてのぼせるタイプでございます!

「うむ! 褒めてはおらぬ!」


読んでいただきありがとうございます!


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