雪姫との出会い
いやー遅くなりました。
評価・ブクマしてくれた方ありがとうございます。
「ふわぁぁぁ。……ん? 知らない天井だ……」
べ、別に言いたかっただけというわけではないよっ!
いや、ほんとに知らない所なのだ。
僕は壁も天井も石造りだったあの宝物庫みたいな場所で寝たはずなのに、
今は木造の部屋に居て、しかもふかふかのベッドの上に寝かされていたのだ。
──ああ、誰だかわからないけど僕にこのような天国に寝かせていただきありがとうございます……
実は冒険してる感を出すために、カッコつけて壁にもたれ掛かって寝たけど
凄く眠りにくかったのだ。
「はぁ……ふかふか……しあわせ~」
──ビタァァァン
(!……えっ、何!? ってまた扉かーい)
扉に驚かされまくっている気がする……
「やぁぁぁっと、起きたね! 何が仮眠する、ですか。十分熟睡してたよ!」
「……えっ、えっと……どちら様ですか?」
えげつない勢い──恐らく挟まれたらあの世行きレベル──で扉を開けて
入ってきたのは17歳くらい少女だった。なぜか怒っている。
薄い色の綺麗な金眼金髪で髪は横で結っている。
幼さの残る顔は今はなぜか膨れっ面だが、可愛らしい。同年代というよりも妹などを
見ているようだ。
100人中90人は可愛いと言うだろう。
ていうか、そんなことどうでもよくて、本当に誰なんだ?
「どちら様? と聞かれたら、答えてあげるが世のなさっ……グフッ」
知らないだろうけど、どこかで聞いたことのある悪党三人衆の登場セリフだったから
頭にチョップを入れておく。
「いたた、ひどいじゃないか! せっかくセリフ考えて来たのに!」
知らないはずなのに、同じようなセリフが出てくるのは凄いけど……
「……そんなのいいから普通に自己紹介してください」
「むぅ……まあ、いっか。ふっふっふー、聞いて驚きなさい!
そう、私こそかつては“雪姫”なんて言われた魔法剣士、アルベナ・アングレイジだよ!」
……誰だろうか?
こちらの世界の有名人は知らないが、結構凄そうだ。
「お、おぉ。なんか凄そうだ……
あ、えっと、僕は葵っていいます」
「アオイちゃんだね。って、もしかしなくても私のこと知らないの?
……ここに閉じこめられてからあまり経っていないはずだけど……ぶつぶつ……」
何かぶつぶつ言って、目の前の少女はしゃがんで何か考え込んだ。
ていうか、ちゃん付けなのは……
「え、えっと……その、ほら。僕は辺境から出てきたばかりだから知らないだけかもす。それと、僕は男です」
「なるほど……って、え? 男の子? その見た目で? グフッ」
頭にチョップを入れる。
この人、パクりに続いて人のコンプレックスをさらっと……
「……で、何か用事があるからこんな所に連れて来たんだよね?」
「いったた。そんな可愛いみっ……ブフッ」
何か言われそうだったので、早めにチョップ。
「痛いじゃないかっ! 初対面の人に対してそう何回も手刀を打ち込むのは
失礼じゃない? 最初のに至ってはなぜ打ち込まれたか分からないし」
うーん、強いて言うなら手刀してくれていいよ的な雰囲気がだったからだろうか。
そんなこと言ったら、また怒りそうだから言わないけど。
「最初のは、その……ごめんなさい。何か言ってはいけないセリフな気がして……」
「……まあ、謝ってくれたし何でもいいか。なんで言ったらダメなセリフなのかよく
分からないけど……って、そうそうアオイちゃん達をここに連れてきた
理由なんだけど、実はね──」
名前の後に何か付いていた気がするが、どうせなに言ってもちゃん付けするつもり
だろう。
なぜ僕をここに連れてきた来たのかを説明し始めたアルベナさんの声に耳を傾ける。
──毎回、説明を要約してる気がするが、アルベナさんの話を要約すると
こんな感じだ。
まず、アルベナさんは結構名の知れた冒険者兼鍛治士らしく、討伐依頼を受けたらしい。
その討伐目標を見つけたと思ったら急に眠くなり、気づいたらここにいたと。
それでここから出して欲しいらしい。
自分で出れば? とは思ったが、三重の結界があり、結界の解除に詳しくない
アルベナさんにはそれができない。
それで、結界の解除を頼める人物を連れて来て欲しいと、そういう話だった。
やっぱり、あるんだね冒険者。異世界転移と来れば冒険者だろう。
おっとと、話が逸れた。
「……なるほど。うーん……別に良いですけど……」
「本当!? 体感で一年くらい閉じこめられてて、炉や金床がなかったら
暇過ぎて死んでいたよ。でもやっとここから出られる~」
「……ただし、何か報酬が欲しいです」
「報酬ならあげるつもりだけど……そうだなぁ君、何も武器持ってないし服もそんなに
丈夫そうじゃないから、私が作った装備一式、なんてどう?
私の作る武器は王国じゃ、結構値が張るよ」
すると、次は先ほど部屋に入って来たダルタニャンが口を開く。
「旦にゃ様、この人の腕は確かニャ。《鍛治》スキルを持っていてしかも熟練度が上がり切って
いるのニャ。」
「熟練度?」
「にゃ、ステータスプレートには書かれていにゃいけど、鑑定系のスキルとか魔法
にゃら見れるのニャ」
その後の説明によると、熟練度の数値が高ければ高いほどスキルによる恩恵も
大きくなるらしい。
「どうかな? その熟練度マックスの私が作った装備をあげるけど?」
正直にここはもらっておくべきだろう。
僕のスキルである《剣の心得》なんか全然意味ないし。
「分かりました。その条件でいきましょう」
「よし! じゃあ交渉成立だね。
……えっと、アオイちゃんに合った装備探して来るからちょっとステータスプレート
見せてくれる?」
どうやら、先ほど言っていた暇潰しに作っていた装備を持って来るみたいだ。
「分かりました」
ステータスプレートをアルベナさんに手渡す。
知らない人に自分の手の内を教えることになるが、目の前の少女にはこの情報を
悪用する気がなさそうなので迷いなく渡す。
「意外とあっさり渡すんだね。疑わないんだ?
……ふむふむ、なるほど……君のステータスぶっ壊れてるね。
でも君……魔法剣士の才能があるね」
魔法剣士……絶対強いぞ……
「じゃあ、帰ってくるまでくつろいでいてね」
と言って、アルベナさんは扉から出ていった。
ありがとうございました!
まだ予定ではあるのですが、この作品は色々散らかっているので、後からまた一から書き直すつもりです。