使い魔誕生!
評価・ブクマありがとうございます!
やる気がわき上がって来ます。
◆◇◆◇◆◇
「ご報告致します! 先ほど情報部の方から、複数人の“異世界人”を確認したという
情報が上がってきました」
「そうか……まあいい。予定通りヤツにアレを渡して泳がせろ……行けっ!」
「はっ! 畏まりました!」
フードを目深にかぶった男が一礼し、部屋を出ていった。
「…………やはり来たか。しかしこちらは既に対策済みだ。せいぜい、操り人形のように用意された舞台で立ち回っていればいいさ……ククッ……フハハ……」
黒ずくめの男はそう言って、闇に紛れて消えていった。
◆◇◆◇◆◇
黒い穴に全身が入ったと思うとその瞬間、特に痛みも感じず地に立っていた。とりあえず彼ら──女神とその使い魔のルーは──信用…………できないらしい。
うん、周りを見れば生かす気が全くないことを窺える。いや、ランダムな場所に召喚されるのは聞いていたけどね? これはヒドイ……
一応、少しは信用できると思ったんだけどなぁ……というのも僕が降り立ったのは暗く、等間隔に壁に掛けられている松明くらいしか明かりが無く、ポチャンポチャンと水の雫が滴り落ちる音が微かに聞こえるだけの洞窟だった。周りに出口っぽいのも見つからない。
え? 普通のファンタジーなら始まりの草原とか……RPGの種類によれば街から始まるものもあるよね? なのにこの状況……RPGなら難易度ハードを通り越して、ホラーゲームにジャンルチェンジしているよ! すごいね、暗いんだよ! うん。
とりあえず、僕は近くにあった松明を拝借する。さあ暗いの暗いの飛んでいけ~! あれ? 違う? ごめんなさい……
うーん……まずは何をしたらいいだろうか? とりあえずの目的はこの洞窟から出ることだけど……食料も何にも無い手ぶら状態だ。見たことは無いけどおそらく存在する魔物を避けるためにさっさと脱出してしまおう。
「その前に……まずは自分に何ができるか確かめるのは大事だよね。《ステータスプレート》……うわっと、当たりだったみたいだね」
ステータスを見ようと思ったけどルーから聞くのを忘れていたね。今回はうまくいったけど、これ知識の無い人なら詰んでいるよね? 説明していないことに気づいていない線もあり得るけど……なんせ、対応にマニュアルが必須とか言ってる女神の使い魔だからね。
まあ、それも今となってはどうでも良いことだ。そんなことよりもステータスだ。ステータス! あの女神たちが信用に値するかこの目で確かめなくては……!
という訳で唱えたと同時に手渡されたカードが出てきた。そしてそのカードから発せられた光によって空中に“ヴォンッ”と音を立てて目の前に水色の半透明の板が現れる。覗き込むと、そこにはご丁寧に日本語の活字で色々な数値やスキルが書かれていた。
____________
名前:アオイ・カワサキ 性別:男 年齢:17 種族:人族
レベル:1 魔法適正:氷/光〈双属性〉 魔法タイプ:魔導書型
〈能力値〉
筋力:25 耐久:25 敏捷:200 魔素量:620 操魔力:780
(一般的な人族の能力値はすべて20前後)
〈使用可能魔法〉
無し(魔導書を入手してください)
〈所持スキル〉
【剣の心得】【操魔】【言語理解】
〈ユニークスキル〉
【使い魔召喚】【能力値倍化】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【能力値倍加】new!
▪二種類のステータス値を二倍ずつ、または一種類のステータス値を四倍することができる▪
【剣の心得】new!
▪あらゆる剣をうまく扱える▪
【操魔】new!
▪操魔力が増え、魔法的なセンスが上がる▪
【言語理解】new!
▪あらゆる言語を理解、また意識せずとも相手の扱う言語を話す事ができる▪
【使い魔召喚】new!
▪使用者の一番求める姿、能力を持つ使い魔を召喚する。また使い魔の強さは魔素量、操魔力に影響される▪
____________
なるほど……ステータスの数値だけを見れば、僕は一般人と比べると大分強いらしい。能力値的から考えて、元の世界での得意不得意が影響しているようで、敏捷と耐久の数値なんかは良い例──短距離走は速かったけど、長距離走は苦手だった──だね。
しかし、しかしだ、諸君。僕のステータスとスキルの相性悪いと思わない? 剣士として前線で戦うには耐久が心配だし、かといって魔導士としてやって行くにしても〈魔導書〉とやらが必要みたいだし……まあ、レベルという概念があるからこれからもステータスは伸びていくだろうけどね。
んじゃ、ステータスは未来に期待ということで、早速アレ行きますか。ん? アレだよアレ。手動で発動する系のスキル──アクティブスキルと言えば分かるのかな?──は1つしかないでしょ。うん、みんなは分かったよね~? せーの【使い魔召喚】しかないよね~
……あれ? 何やってるんだ、自分?
すーはー……うん、大丈夫。上がり切ったテンションをとりあえず落ち着かせよう。そして、スキルを……って、そういえばスキルの使い方もルーに聞いてなかったね。まあ、ステータスプレートは唱えれば出てきたし、同じようにスキルの名前を唱えたらいけるか。
「【使い魔召喚】」
『……ユニークスキル【使い魔召喚】の使用を確認』
僕がそう言うと同時にスキルが発動されたようで、頭の中に機械的な声が聞こえてくる。どういう原理で生物を生み出すのか分からないが、そこもスキルがうまくやってくれるようだね。
『使用者の魔素を代償に肉体を形成……成功しました。次に自立式の擬似人格を形成……成功しました。召喚に必要な肉体及び人格の形成完了。余った魔素を装備品形成に流用します……形成完了しました。これより使い魔を召喚します』
「……お、おおっ! なかなか本格的だね」
さあ、一応要望としてルーのような猫が良いなと、こんな感じ! というイメージ像は考えておいたけど、スキルの説明通り僕の求める姿になっているだろうか。恐ろしい化け物が出てきたりはしないよね? そうなれば、いよいよホラーゲームになるからね。全力疾走だね。
と僕のそんな思考も杞憂に終わり、地面に白い魔法陣が浮かび上がって想像通り……ではなく想像していた姿──黒いモフモフ(コレ重要)とした毛にルーとは真逆でルビーを彷彿とさせる瞳──に、赤く染められた革製のつばの広い羽根付きの中折れ帽と同じ素材を使っているであろう、金糸により刺繍が施されたコートを羽織っていた。
もうね、格好良過ぎて声も出ないね。なんとなくだけど中世のフランスとかにいそうな格好だね。背中には確かレイピアという名前の刺剣の一種を背負っているし、二足歩行してるしで、何かのゲームで見たことがあるような風貌だ。
____________
名前:ダルタニャン 性別:メス 年齢:無し 種族:無し(使い魔)
レベル:25 魔法適正:水〈一属性〉 魔法タイプ:基本型
〈能力値〉
筋力:250 防御:200 素早さ:500 魔素量:200 操魔力:170
(一般的な人族の能力値はすべて20)
〈使用可能魔法〉
水属性(中級)
〈所持スキル〉
【鑑定眼】【千里眼】【夜目】【魔眼】【弱点看破】【超嗅覚】【刺剣使い】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
やけに『眼』に関するスキルを推してくるな。ただまあ索敵に向いてそうなスキル構成だ。大方名前通りの効果で唯一分かりにくい【魔眼】の効果は基礎魔素量が増え、魔素の流れから敵の位置を特定するという便利スキルだ。
「君があたしの旦にゃ様かニャ?」
と目の前の猫が話し掛けて来る。えっと、喋り方が非常に特徴的だね。猫であることを主張しているかのような、何というか少しあざとい……まあそこは重要なとこでは無いか。
「えっと……よろしくダルタニャン」
「よろしくニャ」
でも、これ強いスキルだね。魔素さえあれば使い魔を喚び放題な訳だ。ていうか今回は猫型にしたが、これ僕の想像力次第では、人型やもっと言えばドラゴンなんかも喚べるんじゃないだろうか。まあサイズ的に僕の魔素量でも無理があるだろうけど。
凄く強いよね、ダルタニャン。ステータス値も結構バランス良くなっているし、スキル構成も『The・索敵』といった感じの構成になっているしね。僕の話し相手だけにしておくのは勿体ない。てか今思ったんだけどダルタニャンのそのスキルで出口分かったりしないんだろうか。
「ねぇ、ダルタニャン。君のスキルでこの洞窟の出口が分かったりしないかな?」
普通に声を出すと響いて、魔物を呼んでしまうかもしれないので─魔物は未確認だが念には念を押して──ヒソヒソと話す。
「すまにゃいニャ。あたしも生まれたばかりの身だニャ。この世界に対する知識も旦にゃ様と同等かそれ以下にゃのニャ。面目にゃいニャ……」
やっぱり無理か。まあ少しくらい欠点がないと、このスキルは強すぎるか。ということは地道に道を潰しながら出口を探すしかないのか……食料も水もないけど大丈夫だろうか、僕。最悪ここでのたれ死んで……いや、ネガティブ思考はダメだね。気合だ、僕! そう考えて僕は異世界に対する期待と不安が詰まった一歩を闇へと向けて踏み出すのだった。
ありがとうございました!
ここはこうした方がいいよ、などの意見があったら言っていただけると嬉しいです
スキルや操魔力の細かい説明は後々させていただきます! 5/6に大幅改稿しました。