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最強武器から始まる異世界転移~装備したら女の子になってたんだけどっ~  作者: べちゃっとパンケーキ
雪の国ノールと冒険の始まり
1/13

異世界転移!

書く側って結構つらいですね。

 八人の高校生が突如、姿を消した。

 痕跡が残されている訳でもなく、原因さえ掴めない。

 しかし、たとえ痕跡があったところで誰も彼らを探そうとはしないだろう。


──彼らを覚えている者は、誰一人として存在していないのだから……




「う、んん…………って、やばっ! 寝過ごした!?」


 今日は中学卒業から会えていなかった親友達と昼に集合して一緒に夏祭りに行く予定だった筈だ。


 そのために、バイト先の喫茶店の店長──隆々とした筋肉やスキンヘッド、子供に会った瞬間、泣かれるであろう事が容易に予想できるほどの超強面の……優しいおじさん──に頼んで休みをもらったのに、寝過ごしてしまっては親友達に迎えに来てもらうという、恥ずかしい思いをしなければならない。


 あいつらの事だ、『高校生にもなって一人で起きることもできないの? ププッ』みたいな感じで弄って来るのは目に見えている。


 どうであれ、起きて時計を見ないことにはなにも分からない。

 僕は眠い目を擦りながら、ふっかふかのベッドの上で上半身だけを起こす。


「……ん? ふかふか? ていうか、ここどこ!?」


 僕が居たのは壁から家具に至るまで真っ白などこか神聖さを感じる部屋だった。もちろん、この飾り気のない部屋が僕の部屋、という訳ではない。


 あまりにも非現実的な光景を前に、手が勝手に自らの頬をつまむ。


「いたい……ということはこれは夢ではないと……」


 しかし、昨日は普通に自室の布団に入った筈なんだけどなあ。

 もしや、拉致……はないか。それならそれで、手足を縛っておくなりする筈だ。今の状態は監禁というよりは軟禁といったところだし。


「……ていうかこの状況どうすれば良いの? 警察に通報?」


 まあ、スマホは無いんだけど……なにもできないし、このふかふかのベッドでもう一眠りしようかな。僕はバイトと勉強の両立で疲れているのだ。これくらいのお休みは許されるだろう。


 もう一度、ベッドに横になり目を閉じて、起きたらどうにかなっているでしょう、という考えのもと二度寝コースに入ろうとする。


 と、その時どこからか男性と女性、二人の声が聞こえてくる。


『……ルーナ様! 彼が目を覚ましたようです。準備をしてください』


『え!? ルー、彼に少し待って貰って下さい! 私愛用のマニュアルを無くしました!』


『……はあぁぁぁぁ、まったく……ルーナ様、そろそろアルト様にいただいたマニュアルなんて無しで転移者の対応をしたらどうです?』


『ち、違いますよ、ルー。完璧主義の私は常にかんっ『その言い訳は何度も聞きました。』』


『……良いです。彼には待ってもらいますが、準備が出来たら来てください。後、彼があちらに行った後は、溜まりに溜まった仕事をしてもらいますからね』


『……はい、申し訳ないです。オシゴトモガンバリマス……』


「………………」


 はあ……寝ようとしていたところにコレだよ。しかも、話の内容がただの説教と

いう……


 と、心の中で文句を言っていると、白い壁にこれ以上ないというほど黒い、四角形の穴がポッカリと空き、そこから白猫──壁に溶け込んでよく見えないが手入れの届いた白銀の毛並みに宝石を思わせるスカイブルーの瞳をしている──が出てきた。


 急に出てきた怪しさ満点のその猫に警戒をするが……


「そう警戒しないでくれ。急に出てきてすまなかったな」


 世間一般的にイケボと言われるであろうよく響く声が部屋に響く。僕はそれが意味することを理解するのにたっぷり十数秒ほど要した。


「……へ? 猫が喋った!? 近くで人がしゃべっているとかじゃなくて?」


「ああ、言葉を発しているのは間違いなく俺だ。まあ、俺は猫じゃないのだがな。

動揺しているのは承知の上なのだが、これから話すことをしっかり聞いていてくれ」


 うん、これは予想以上に面倒なことに巻き込まれている気がする。白い空間に喋る猫だよ? 面倒じゃない訳ないじゃないか。


「……その前に質問。ここはどこなの?」


「……あー、簡単に説明するとそうだな……神が作った異界といった認識で大丈夫だ」


 かみ……神……神様ねぇ

……うん、これいちいち理解しようとすると頭がおかしくなるヤツだ。よし、聞き流そう。


「君には異世界に転移してもらう。ある条件を果たさなければ、帰ることはできない。といっても、こちら側が勝手に決めていることだ。多少優遇はさせてもらう」


 聞こえませーん。僕はなにも聞いていない。異世界? ナニソレオイシイノ?


「おーい、聞いているか? 言っておくが、一定時間経ったら強制的にあちらに転移させられるからな。聞いていなくて苦労しても俺は責任を取らないぞ?」


 はい、正座してきちんと聞きますとも。ええ。

 苦労と面倒事は極力避けるように生きていきたいんでね。そのために、今できる事をすぐにする、これ重要。

 ていうか、すでに神様が作った異界とやらに居るというのに異世界に転移するとはこれいかに。


「よし、聞く気になったみたいだな……とりあえずこっちに座らないか? ずっと正座というのもキツイだろう?」


  僕は目の前の猫に勧められるがまま、そこにあった白い椅子──手で触った感触では固かったのに、座った瞬間グニャリと沈み込んでお尻にフィットしたので凄く驚いた──に座る。


 目の前にはこれまた白い丸テーブルとティーセットがあり、フワフワと浮いているポットが僕の前にあるカップへと紅茶(さすがに茶色だった)を注いでくれる。


 うん、もうそんな事じゃ驚かないぞ。なにせ、目の前には喋る猫が居るからね。


「そう言えば、自己紹介がまだだったな。俺はルーという。ここ《月の神界》の主、女神ルーナに作られた使い魔だ」


 僕も礼儀に倣って自己紹介をする。


 他人が見ると猫と話す奇妙な少年だな……という客観的な視点での自分に少し恥ずかしさを覚えるが、まあ誰も見ていないし、気にしなくとも大丈夫だろう。


「えっと、川崎かわさき あおいです。趣味は読書とゲームを少し……」


 ちなみに、学校ではこの名前と見た目も相まって教師に女子と間違えられたり、友人が非公認のファンクラブを作っていたりという事があったりしたけど、それを除けば普通(?)の男子高校生だ。


 まあ、そんなこともあって自分の容姿がコンプレックスなのだが。


「それで、本題に入っていくが先ほども言った通り君には異世界に転移してもらう。もちろん、一人でとは言わない。君が今日、会う予定だった友人達もあちらに行く事になっている。まあ少し前に全員行ってしまったんだが。つまり、君が最後ということだ」


 あいつらが居るのか……各々クセが強くて一緒に居れば退屈はしないんだけどな。

手綱を握るのが僕という……一応、常識人はもう一人居るけど、自分に飛び火が来そうになるとすぐ逃げる。


 といってもあの頃のように騒げるとなって素直に喜んでいる自分がいるのは否定できないけどね。


「そして向こうの世界のことを簡単にだが説明させてもらうと、そうだなあ……分かりやく説明すると剣と魔法のファンタジーな世界、と言ったら分かるだろうか?」


 剣と魔法のファンタジーな世界……つまり、ファンタジーを題材としているゲームや物語などで頻繁に世界観として導入されているアレだね。チートスキルで無双したり、女神に騙されて主人公が闇墜ちなんてよくある話の展開だ。


 では、なぜそんな世界に転移させられるのか。ていうか退路が無いから仕方なく行くのであって、元の世界に戻れるならば今すぐ戻ってベッドでゴロゴロしたいのだ。

 ん? 異世界転移憧れるなって? いやいや無い無い。僕は自由を愛す守護者的存在なのだ。得体の知れない世界でふかふか布団が無い生活とか考えられん。


 とりあえず目の前に居る猫、ルーや女神ルーナの話すことのすべてとは言わないが、重要そうなことを話す時は疑いの目を向けるのは大切だ……と思う。自分が痛い目に会うのは勘弁だからね。


「えっと、目的は何なんですか? 異世界に転移する明確な目的があるなら教えて欲しいんですけど?」


「まあ、そう急くな。こちらも分かりやすい様に言葉を吟味しながら話してるんだ。

ふーむ、そうだな。簡単に説明すると、世界に起こる災厄を探しだし滅することだな」


 災厄って……なんか抽象的な説明で逆に理解が難しいんだけど? 探すってことは具体的にはルーにも分からないってことなんだろうけどね。


 ズズズッ──あっ、ミルクティーうまっ。


「それで、その災厄って分かったりするんですか?」


 まあ、一応尋ねておくべきだろう。あまり乗り気では無いけど。


 ちなみに先ほどのミルクティーは僕がミルクティーの方が好きなんだけどなぁと、思っていたらミルクと砂糖が飛んできて勝手に入ったのだ。異世界の技術恐るべし。

 

 閑話休題。それで実際の所どうなんだろう。


「いや、大体君の予想通りだ。詳細は神であろうと分からない。分かるなら世界くらいだろうな。といっても、漠然としているがある程度予想はつく。相手は魔物である可能性が極めて高い。というのも……いやまあこれはいいか」


 魔物かぁ……いかにもファンタジーだね。ゴブリンとかスライムとかがいるんだろうね。しかし、魔物でラスボス的な立ち位置よくある話であれば魔王だろうか。

 これは候補として覚えておこう。


「じゃ、とりあえず理解してくれたみたいだから、これを渡しておこう」


 そう言って、ルーがどこからか青いカードの様な物を取り出しテーブルの上に置く。

 いや、どこから取り出したねん! というツッコミは一旦棚上げしておいて、過信はできないが、受け取る前に何なのか尋ねておくべきだろう。


「これは?」


「……ふむ、君は随分と用心深いみたいだ。まあ急に知らない所に連れてこられて、知らない、信じきれないこんな猫と話しているんだ、寧ろそれくらい用心深くないとあちらの世界ではやっていけないだろう。まあ、こちらに君を欺こうという意思はないぞ。実際それはただのステータスプレートだしな」


 疑っているのがバレたみたいだ。自分でもポーカーフェイスにはそれなりに自信があったんだけど……まあ過ぎたことだ、後から気にしても仕方ない。


 とりあえずルーのことを信じたとして、ステータスプレートってことは自分の能力値を可視化できるアレだよね。早く確認しようと触れると僕の胸に吸い込まれるようにして消えてしまった。うん、それは聞いてない。


「ステータスが見たかったのか? まあ安心しろ。魂の密度の高い上界の住人である君たちはすでに一般人の枠を軽く越えているよ。それでは、もうひとつ渡したい物があるんだがそれには神が必要なんでね、少し呼びに行ってくるよ」


 しかし、僕は見逃さなかった。ルーが最後の言葉を発した時に一瞬不敵な笑みを浮かべたところを……! ああ、まだ顔も見ていない女神様よ、こちらに仏は居ないだろうけど……南無南無。


 ズズッ──ああっ、ミルクティーが身に染みるぅ。僕は普段から人を疑うなんてしないんだぞ。状況が状況だから信じられないだけで。

 しかし、脳を酷使したからか思ったよりも疲れた。過労死しそうだ。


「待ってくださいルー! まだ心の準備がっ……」


「どれだけ待たしていると思っているんですか! いい加減、諦めて来てください。渡す物を渡したら終わりじゃないですか。まあその後に自由時間なんて存在しないのですけど」


 しばらくすると部屋の壁にルーが現れた時と同じように黒い四角形の穴が空き、そこからルーが女神の物と思わしき服の裾を咥えて出てきた。


……あの小さな体にはどれほどの力があるのか、そんなことを考えようとして恐ろしくて止めた。僕なんか顎の力で噛み千切られそうだ。


 そしてしばらく乱闘を続けていたルーと女神だったが、女神の方が先にダウンしたようだ。ルーが彼女を引きずり出す。


 ちなみに女神は凄く美少女でした、はい。どう表現すればいいかな……とりあえず

日本人では無いよね、銀髪だし……やめておこう。ただでさえ語彙力が乏しいのに他人の容姿を説明するのは無理がある。


「それで渡したい物とは?」


「ああ、何でも好きなものを言ってくれ。可能な限りこちらで用意しよう」


 赤い顔でゼーゼーと荒い息をしている女神の代わりにルーが答える。


 それにしても好きなものとは……適当だね。

 世界を破壊できるボタンみたいなのはどうなんだろうか。


「あー、さすがに世界の理から出たようなモノは無理だぞ。例えば、人を一撃で葬り去る剣とか……」


 やっぱ、無理だよね~

 そうなると……うーん……あっ、目の前に良さげなのが居るじゃないか。


「えっと、ルー。あっちの世界に着いてから他の皆と合流するために探さないといけないんだよね?」


「まあそうなるな。転移場所はランダムだからな」


「じゃあ、それまで一人旅ってことだよね?」


「そうだが? ああ……なるほどそういうことか。つまり君は話し相手として俺みたいな使い魔が欲しいと?」


「うん、そういうことです」


 というのも、人間とは孤独に弱い生き物だ。周囲に親しい人が居ればすぐに集まる。僕はあまり集団行動をとらないけど、それでも話し相手くらいは欲しい。ということでモフモフを……


「よし、それくらいなら大丈夫だ。ルーナ様聞きましたか?」


「は、はい。聞いてました。それなら世界のバランスの方も大丈夫でしょう。それではアオイ様、始めますね」


 えっ、もう始めちゃうんだ。そんなに簡単に使い魔って連れてこれるものなんだね。

いやこの人達が規格外なのか。なにせ神様ですからね。


「ムムムムゥ…………ハッ! はい、終わりましたよ~」


 えっとぉ……終わり? 僕には女神さんが綺麗な顔をしわくちゃにして──我慢しないと笑ってしまいそうになるほど面白い変顔だった──唸った後、目を見開いて『ハッ!』と言っただけに感じたんだけど?


 実際、部屋の中には使い魔らしき存在は確認できないし……そう思っているとルーが僕の表情から察したのか、疑問に答えてくれる。


「あー、今すぐに使い魔が来る、というわけではないぞ? この駄女神……もといルーナ様のスキルの中に【使い魔召喚】というものがあってだな。それを君にも扱えるようにしたということだ。あとここでは発動に必要な要素が足りないから発動できない。我慢してくれ」


「うっ……いいです、私はどうせ駄女神ですよ!」


 僕はたまに思ったりするのだ。他人の顔を見て次の言葉や行動を察せる人の観察

力ってどうなっているんだろう、と。


 で、なんだっけ? 女神のスキルを僕が使えるようにしたと。それって大丈夫なのだろうか? いくら駄女神と言っても、神は神だ。神は世界の理の外側の存在では無いのだろうか。現地の人間からしてみれば神のスキルを持って居るんだから軽くチートだね。


 まあ、何でも良いか。そのスキルをここでは使えないというのがさらに不信感を増長するが、どうせ転移させられるのだ。どんな事があろうと乗り越えて、家に帰ってベッドでゴロゴロ寛いでやる!


「それじゃそろそろ……準備は良いか?」


「最後にひとつ質問。僕達は死んだらどうなるの?」


「君たちの中に高位の回復魔法を使えるようになるような力を持った人居るようだから、合流できたらまず死ぬようなことはない。しかし、万が一死んだら一切の記憶を無くして地球に転生という形になるな」


 それはなんと言うか……一生の内半分以上を損するってことだよね。それに無事帰れたとしても先にあちらの世界に行っているという友人たちが死んでしまうと一生会えなくなってしまうということだ。中々えげつない……


……これは早く行った行って合流した方が良さそうだ。あいつらなら無理をしかねない。


「まあ、あちらでも戦いを生業にしているような人の中でもチンピラ程度には負けないステータスをしてるから安心しろ。質問はそれだけか?」


「うん、大丈夫……だと思う」


「そうか、それではルーナ様」


「ええ、それでは《世界転移門ワールドポータル》。気をつけて行ってらっしゃいませ~」


 女神がそんな呪文(?)を唱えると床に黒い穴が空き、ゆっくりと自分の体がそこに沈んでいく。元の世界とは異なる世界とは海外に行くときのように不安には感じるけど同じようにわくわくもするね。


 さて、とりあえずの目的は合流しやすいように名前を広めつつ、友人たちのものらしき情報を集めることになりそうだね。

ありがとうございました!

次回も見に来てもらえると嬉しいです!


※2/27に大幅に修正しました。次話とは全然違うのでご了承ください。次話からも徐々に修正していくつもりです。

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