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俺はそこまで考えてはいない


「さて、久しぶりに大半の面子が集まったことだし、今持っている情報を交換しようか」


 チハルをコッテリと絞った後、チナツ達と折角合流で来たのでそう提案する。

 俺もチナツ達の情報については断片的にしか知らない。

 そう言った意味でも情報交換は大切だろう。


「それは良い事ですわ」


 諸般の事情で服を着替えたナタリアも同意する。

 なお、チハルとは距離を物凄くとった位置に陣取っている。

 まぁあんな事をされた直後だし、仕方ないだろう。

 むしろ、あんな事をされたにも関わらず、この場に参加しようと思った姿勢は逆に凄いと思う。

 流石、公爵令嬢である。


「それでは、私から話そう」


 そう声を挙げたのは変態である。

 あいつにはこの街に来てから諜報活動を頑張って貰っていた。


「私は少年の意見に従い、主に公爵家を調べた。その結果様々な情報を入手することに成功した」


 そう言って変態が提示してくるのは、今後の国家運営についての王家とのやり取りから始まり、公爵家の収入・支出、公爵軍の練度・装備品の質・動員可能兵数、公爵家の見取り図、裏帳簿、従者の人間関係、教会との癒着等と言った様々な情報である。

 いや、ちょっと待て。

 あれだけの短い期間でどれだけ調べて来てるんだよ。

 むしろこれだけ情報あったら情報交換の必要とか全くないんだけど。

 教会との癒着とか人身売買の証拠とかだけで良かったのに、王家とのやり取りとか完全に国家機密じゃん。

 これ知ったら殺されるんじゃないの……?


「わたくしですら知らない情報まで一体どうやって……?」


 変態の情報収集能力の高さにはナタリアも驚愕していた。


「そんなものは私の忍術と段ボールがあれば余裕だ!!」


 変態は顔に集中戦を出す様な気迫を出しながら主張してくる。

 いや、段ボールって何だよ?


「これだけの情報があれば王家に陳情して公爵家を断罪できるんじゃないの?」


 チナツがそう呟く。

 その意見は確かに正しい。


「でもオルフェ公爵家だって王家の弱みを握っているだろうから、王家も下手には動けない筈」

「流石、魔王様。流石の慧眼ですな。それにこれ程の国の公爵家だ。潰すとかそういう話になるとオルフェ公爵だって当然反抗する。そうなると内乱になる可能性が高い。いくらこの国が周辺国とそこそこに友好的な関係を築いていると言えども、国力が落ちればそこを狙ってくる国も出て来るだろう」


 チナツの意見に否定的なのはチフユと変態だ。

 チフユ達の意見も一理ある。

 内乱になった混乱に乗じて周辺国が攻め込んできた場合、下手をすれば多くの人間が死ぬのだ。

 仮に内乱にならなかったにしても、オルフェ公爵家は国の内政にそれなりに力を発揮してきた家である。

 そんな家がなくなれば、どちらにしても国力は落ちる。

 王家からしたら、どちらのパターンになっても損しかしないのだ。

 それならこの問題をなかったことにする方がよくなってくる。

 公爵家を潰すと言うのは、口で言うほど簡単ではないのだ。


「つまりこれだけの不正を王家は握り潰すって言うの?」

「王家からしたらこの程度の不正だな」


 チナツの悔しそうな意見を変態は一刀両断する。


「所詮、地方の貧困の民など、税も収めないお荷物でしかない。その荷物を有効活用しているだけだと言われれば、治世者から見れば正しい意見だとも言える。当然、荷物側からしたら堪ったものではないかもしれんがな」


 それにしても何でこいつはこんな変態的な格好をしているのに、真面な事しか言わないんだろう。


「チナツさんと言いましたか。確かにお父様は寝取りが趣味のどうしようもない性癖をしている変態ですが、貴女のいう人身売買については教会から持ち掛けて来た話です。わたくし達、オルフェ公爵家にそこまでの非はありませんわ」


 流石に自分の家の事だけあってナタリアもチナツに対して反論をする。

 それにしても自分の父親を変態呼ばわりするとはどれだけ父親嫌いなんだよ……。


「それでもあんた達が教会を取り締まらないで、協力していたのは事実じゃない」

「その点に関しては、わたくしも反省する必要があるとは思っていますわ。ただ、それだけでオルフェ公爵家を悪く言うのは止めていただきたいと言っているのです」

「この街の状況を見て、本当にそう言えると思ってるの?」

「確かにお父様が当主の座をついでからは、領民からあまり良く思われてないのは知っていますわ。でも、それが先代や先々代の統治を否定する事にはならないのです。実際、お爺様は領民からも慕われていた素晴らしい人でしたの」


 ナタリアもナタリアで今のオルフェ公爵家には思う所がある様だ。


「なんか色々と話が取っ散らかって来たんだけど、結局わたしはどうしたら良いの?」

「どうすればいいのー?」


 今まで黙って真冬ちゃんと遊んでいたチハルがそう口を挟んでくる。

 真冬ちゃんには難しい話だっただろうから、遊んでくれるのは助かるが、その姿勢は完全に自由人である。


「今ある問題は二つ。一つがさっきから話をしている公爵家の統治の問題。もう一つが教会の不正の問題。教会の不正と公爵家の統治が絡み合っているからごちゃごちゃに感じるだけで、実際は分けて考えた方が良い」


 そんなチハルの質問にチフユが答える。


「それで?」

「一平の調べた資料によると教会の不正はここの神父の独断によるものらしい。つまり、教会の問題は神父を断罪すれば終わる。ナタリア、公爵家としてはこの人身売買を教会側が止めたことで何か影響あるの?」

「……特にはないと思いますわ。結局のところお父様の趣味で奴隷を集めているだけですから。お父様も表沙汰には出来ないって事は分かっている筈ですし」


 ナタリアは少し考えてチフユの質問に答える。


「それなら教会の問題はそれで終わり。公爵家の問題については、今兄さん達が行っている活動で全て片が付く」


 チフユが、兄さんの考えがやっとわかったみたいな顔で俺を見てくる。

 どういう事?


「えっ? どういう事よ?」

「結局のところ、公爵家の問題は内部の問題。つまり、領民に真冬を支持しているナタリアこそが正しい領主だと認めさせればいい」

「成程。つまりナタリアを新しい領主にして、中から腐敗した部分を正していくってことね」

「そういうこと。真冬は今領民から物凄く人気がある。真冬を旗頭にして今の当主を打倒すれば、領民からの支持も得られるし、一石二鳥。」


 そうチフユは自慢気に策を語った。


「凄いふわっとした作戦だけど、大丈夫なの?」


 チナツはその策に懐疑的である。


「他に策があるなら別にそっちでも良いけど?」

「むっ……」


 しかし、対案を出す様にチフユに求められると特にない様で黙ってしまった。


「わたくしが、当主に……」


 ナタリアもチフユの策に不安がある様だ。

 まぁ彼女の不安は、この作戦が成功した後、自分が当主になって本当に上手く領地経営が出来るのかという事だろう


「つまりお兄ちゃんはそこまで考えて、そこの間女を攫ったり、真冬をアイドルにしてみたり、麺類販売をしたりしていたんだね。流石お兄ちゃんだよ!!」


 チハルには悪いが、全くそんなことは考えていなかった。


実際にお兄ちゃんは麺類をこの街に普及させて、自分の麺の販路を広げる事しか考えていません。

チフユとチハルの考えは深読みしすぎの勘違いです。

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