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ちーちゃんも、わたしのてき


『すき、すき、にいさん』


 作詞:真冬

 作曲:うどん


 すき すき すき すき

 にいさん だいすき

 きょうも にいさんは かっこいい

 きのうも にいさんは かっこいい

 あしたも にいさんは かっこいい

 あいしてる


 (以下繰り返し3回)



「みんなー!! きいてくれて、ありがとーーーーーー!!」


 一曲歌い終わった真冬は満足そうにファンの人達に手を振っていた。

 あたしは曲も歌詞も良く分からなかったので、真冬の歌に合わせて口パクで対応した。


「それにしても、何なのこの歌詞?」


 終わった後、真冬のファンを名乗る30代前半位の女性から貰った歌詞カードを見て、なおの事そう思った。


「わたしがいっしょうけんめい、かんがえたんだよ」


 真冬は自慢気にムフーとドヤ顔をしているが、何て中身のない歌詞だろうか。

 あいつの事がカッコいいでしか表現されていない。

 何だかんだであたし達を見捨てないで面倒を見てくれる優しい所とか、仕事に対して常に向上心を持って積極的に取り組んでいる姿勢だとか、性癖が幼馴染が良いとか貧乳がいいとかエルフ耳が良いとかで結構歪んでいる所だとか、そう言うにぃにの本質的な所が語られていないのだ。


「真冬、これじゃああいつの良い所が表現しきれていないわ」


 まだ幼い真冬に言うのは酷かもしれないが、こういった事は今の内から是正しておかなければいけない。


「むー、なんでだめなの?」

「あいつがカッコいいのなんて一々言わなくても、皆分かっている事よ。だからあいつのかっこよさだけじゃなくて、もっと違う部分を押し出していかないと駄目じゃない」

「むずかしくて、よくわかんない」


 真冬は眉をハの字にしながら困ったような顔をする。


「つまり、もっとあいつの良さを表現するためにもっと勉強しなさいって事よ」

「もっとべんきょうしたら、にいさんほめてくれる?」

「当り前じゃない。あいつはそういう努力は好きだからね」

「わかった。なら、もっとべんきょうする」


 分かってはいなそうだったが、真冬は良い表情で頷く。

 やっぱりこの娘はチアキの元にいた割には良い子に育っている。


「流石、ちーちゃんだぜ!!」

「ちーちゃん母性MAX」

「俺も叱ってくれーーーーーーーーーーー!!!!」


 そんな様子を見ていた真冬のファンから歓声が飛んでくる。


 ……すっかり忘れてた。

 ここ、まだステージの上だ……。


「ちーちゃん、かおまっかだよ? だいじょうぶ?」


 真冬の声が心に刺さる。

 めっちゃ恥ずかしい。


「ちーちゃん!!!! 可愛いーーーー!!」


 そんな中で、聞き覚えのある声が聞こえて来る。

 その方向を見るとチアキが腹を抱えて爆笑していた。

 あいつ、後で覚えておきなさいよ!!


「それじゃあ、これでまふゆたちのはっぴょうはおわりです!!」


 この空気を無視して、真冬がステージの終了を宣言する。

 その声に湧き上がる観客達。


「アンコール!! アンコール!! アンコール!!」


 そして当然の様に出て来るアンコールの声。

 もうステージから降りたいんだけど……。

 と言うか、あたしは何しにこの街に来たんだっけ?

 しかも、何で衛兵までコールに参加してるの。

 あんた達はチフユ達を取り締まる立場でしょうに……。

 この街の人間は公爵家に圧政を受けていると聞いていたけど、この状況を考えるに本当に正しいのか疑問に思ってしまう。


「ちーーちゃーーーーーーーーーん!! 歌ってーーーーーーーーーーー!!」


 悪ふざけをしているチアキの声が聞こえて来た。

 本当にあいつも何やってるのよ!?

 勝手に街中に入ったと思ったらこんな場面にだけ出てきて!!

 後で絶対に磔刑に処してやる。



 そんなこんなで、予想通りあたしが恥ずかしい思いをしただけのコンサートが終了したが、チアキには逃げられ踏んだり蹴ったりだった。


「ちーちゃん、たのしかったね」


 あたしと一緒に歌えたのが余程嬉しかったのか、真冬が満面の笑みを浮かべていたのだけが救いだった。


「チナツ良い歌声だった」


 チフユも褒めて来るが、今のあたしには煽っている様にしか見えない。

 多分好意で言っているんだとは思うが、チアキのせいで被害妄想よりになっているのは否定できないだろう。


「あんまり言わないで……」


 そうして紆余曲折あったものの、やっとあいつの所に案内される運びとなった。

 チハル達の事も気になるし、チアキを磔刑に処す必要もあるが、にぃにと合流するのも大切なことだ。

 取り敢えず、にぃにには色々と迷惑と心配を掛けちゃったし、しっかりと謝らないと。


「ちーちゃん、なんかうれしそう……」

「チナツも兄さんが好きだから、会えるのが楽しみで仕方がないんだと思う」


 あたしを不満気に見る真冬に、チフユが意味の分からない説明をする。


「そんな訳ないでしょ。あいつと久々に会えるからって何とも思ってないんだから」

「チナツはああやって、兄さんの気を引こうとする。あれがツンデレ」

「なるほどー」


 だから、あたしはツンデレじゃないって何回言えば分かるのよ。


「やっぱりちーちゃんも、わたしのてきなんだ……」

「真冬は何を言ってるの?」

「だってちーちゃん、にいさんのことすきなんでしょ。なら、わたしのてきってことだよ」


 真冬の言葉に困惑してしまう。


「どうしてあたしが真冬の敵になるのよ?」

「だって、こいがたきはてきだって、ちーちゃんいってたもん!! だったら、ちーちゃんもてき」


 そう言えば、確かにそんな事を言っていた様な気がする。

 チフユも自業自得だと言いたそうな目でこっちを見るんじゃないわよ……。


「真冬、それはちょっと違うわ。確かに恋敵は信用しちゃいけない存在だけど、それでも信用しても良い人って言うのもいるものよ」

「どういうこと?」

「真冬はあたしが好き?」

「うん」

「つまり、そうやって真冬が好きな人は信用していい人、味方って事よ」

「むー……」


 真冬が困惑した顔をしているが、この時期は色々と考えた方が良いのだ。


「その理屈で行くと私も信用して良い人になるのでは?」

「オリジナルはだめだもん!! わたしはオリジナルはきらい」


 相変わらず、チフユを言葉のナイフでグサグサ刺す。

 傍から見ると手を繋いでいて、仲の良さそうな親子にしか見えないのに……。


「チフユ、ドンマイ」


 死んだ目をしたチフユに、あたしはそうとしか言えなかった。


チナツは日常的に讃美歌とかの聖歌を歌っているので歌はうまいです。

逆にそういう事に興味がないので、チフユとチアキは音痴な部類になります。

真冬もチフユと一緒なので音痴ですが、小っちゃい娘が体をいっぱい使って頑張って踊っている姿に、皆愛くるしさを感じているので人気がある感じになります。

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