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忍者マスター


「なぁ?」

「ん、どうした?」

「俺たち捕まる予定じゃなかったのか?」


 変態のおこした煙幕に乗じてチフユ達を逃がした後、衛兵達とドッグファイトを繰り広げ、何故か変態は衛兵達を全員倒していた。

 展開的にはここで俺達は捕まって公爵家に乗り込むものだと思っていたのに、普通に逃げ切っているんだが一体どういう事なんだ?


「大丈夫だ、問題ない」


 俺の問いに堂々と毅然とした態度で答える変態。


「何処が?」


 むしろ逃げ切るのであれば、後でチフユ達と合流する様に動いた方が良かったのでは?

 まぁ、折角チフユに恰好をつけて別れたのに、ここで直ぐに再会するのはそれはそれで情けない気がするが。


「よく考えるんだ!! むしろ我々が魔王軍であるとして動いた方が、彼女たちが無事に動けるのではないのか!?」


 その可能性も確かにあるが、俺達とチフユ達が一緒に行動しているのは既に向こうにもバレている。

 むしろ、俺達よりも女子供動物で動いているチフユ達の方が捕まえやすいということで狙われる可能性が高いと思う。


「と言うか、俺達の目的はチナツが暴走して危険な目に遭わない様にする事であって、別に公爵家の悪事を暴いたり、教会の不正を正したりするのは二の次なんだんだが……」

「少年はもう少し良く考えた方がいい。あの肉食肉弾系聖女の目的は教会の不正を正すことだ。彼女は少年の説得で簡単にその目的を諦めるのか?」


 そう言われると何とも言えない。

 俺の言う事を聞いて諦める可能性と、逆にムキになって積極的に絡みに行く可能性は半々だ。


「それに少年が無理矢理捕まったら、あの病属性魔勇者は暴走する可能性が極めて高い。それは魔王様も言っていた通りだろう」

「それはそうだが……」

「そこで少年にはこれを装備してもらおう」


 そして手渡される黒赤金の全身タイツ。

 ポンポンの付いたマスク付きである。


「これは?」

「君にはこれから魔王軍の男となってもらう!!」


 ちょっと意味が分からない。

 何故、俺が全身タイツを着なければいけないのか?


「フフフフフ……。少年はこの装備の価値が分かっていない様だ」

「この装備にはそれ程の力があるっていうのか?」


 チハルが持ってる聖剣みたいな力は全く感じないんだが……。


「この色はそれぞれ勤勉・情熱・名誉を表している。つまり、経験値上昇・攻撃力上昇・かっこよさ上昇の三つの特殊な効果が付いているのだ!!」

「なんだと!?」

「つまり、これを装備するだけで少年は、ゲルマン民族に代々伝わる特殊な忍術を使えるようになる」


 それが事実ならこれは凄い装備なのかもしれない。

 しかし、経験値・攻撃力・かっこよさが上がって何で忍術が使える様になるんだ?

 忍術って言うのは一定以上のステータスがあれば使える様になるものなのか?


「そう【分身】から始まり、苦無投擲による爆風の発生、【畳替えし】によるカウンターといった各種攪乱用のスキルが身につく。更には自己進化・自己再生・自己増殖と言った三大理論まで、この装備には搭載されているのだ」


 いや、自己進化とかはまだ分かるが、自己増殖ってなんだよ?

 冷静になって考えると、カッコよさが上がって戦闘で何か役に立つのか?

 後、ゲルマン民族って何処の民族だよ?

 こいつは結構真面な奴なのに、なんで偶にこう良く分からないことを言い始めるんだろう。


「取り敢えず何にせよ、お前とペアルックになるのは嫌だ」

「少年は仕方のない奴だな……」


 どんなに格好の良い装備であっても、こんな変態と同じ格好をしたいと思う奴がいるだろうか?

 いや、いない。

 そもそもこの装備は格好の良い装備ではない。

 傍から見れば、ただの変態不審者である。


「つべこべ言わず、着るんだ!!」


 そう言って、変態に無理矢理服を脱がされる。

 クソ、変に大声を出すと衛兵に捕まってしまう。

 かと言って男に服を脱がされるとは屈辱的な行為だ。


 俺は可能な限り暴れたが、実力の差もあり数分後には全身タイツを身に纏う事になってしまった。


「無駄な抵抗をするからこう言うことになるのだ!!」


 確かに、こんな事になるなら自分から着ればよかった……。

 これじゃあチフユに顔向け出来ない。

 自分の全裸を家族以外の人間に初めて晒した相手が変態になるとは。

 何故、俺はもっと早くチフユに手を出さなかったんだ。

 俺は酷く現状に後悔した。


「どうだ? 体の底から物凄い力が沸いてくるだろう」


 俺の気持ちが落ち着いたのを察して、変態が声を掛けてくる。

 確かに変態の言うように体から今までにない位の万能感を感じる。


「なんだ、この体の底から湧き上がる様な力は……」

「それがこのスーツの力だ!! 流石にその格好だとただの変態だからこのコートを上から纏うと良い」


 自分で全身タイツが変態とか言わないで欲しい。

 というか自分の格好が不審者にしか見えないのは自覚してたんだな。

 そして、渡されるトレンチコート。

 完全にペアルックである。


「湧き上がる力云々より恥ずかしさの方が勝るんだが」


 全身タイツにトレンチコートを着た覆面マスクの男が二人で佇んでいたら、普通は官憲に通報するだろう。

 少なくとも俺はする。

 今まさにその片割れになっているとは考えたくもなかった。


「そんなものは慣れだ!! むしろ着ていれば段々と気持ちよくなる」


 そんな領域には達したくない。

 しかし全身タイツを脱ごうにも、今まで着ていた服は変態に回収されてしまっている。

 流石に全裸よりは全身タイツの方がマシだろう。

 全裸にトレンチコートも考えてみたが、それは完全に露出狂の格好である。

 女の露出狂ならある程度の需要はあるかもしれないが、男の露出狂は全く需要はない。

 このまま全身タイツを着続けるしかないという苦痛。

 ある意味で精神修行にはなる。

 むしろそう思わないとやってられなくなってきた。


「しかし、これからどうするんだ?」


 自分の格好については考えるのが嫌になって来たので、取り敢えず今後の方針について聞いてみる。


「そんなのは決まっている。少年の準備も整った事だし、公爵家の本邸を襲撃しに行くぞ!!」

「はっ?」

「ある程度、暴れまわって且つ公爵家の令嬢を拉致すれば、あの魔勇者がここに来ても違和感はないだろう」

「確かにそうかもしれないが、本当に大丈夫なのか?」

「不安になる事はない。ちゃんと少年のサポートはするし、少年もそのスーツを着ていれば、大抵の事は何でも出来る!!」


 ……何か凄い不安しかない。


 何にしても、こんな格好をチフユ達に見られる訳にもいかないし、現状他にプランがある訳でもない。

 ここは変態の計画に賛同するしかないのか……。


「それでは夜になったら、作戦を開始するぞ!! 公爵令嬢を攫うのは少年に任せた!!」


 それ絶対に後でチハルがブチ切れる案件じゃん!!


肉食肉弾系聖女→チナツ

病属性魔勇者→チハル

気違い賢者→チアキ です。

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