いざ、エルードへ
チアキに王都まで送ってもらい、そこから更にエルードの街まで2週間。
エルードは意外と遠かった。
ちなみに、チアキはチハル達に合流するため、真冬ちゃんを置いて帰っていった。
「兄様、真冬の事をよろしく頼むよっ。手を出しちゃ駄目だからねっ」
などと意味不明な発言を残していった。
4歳児に手を出す奴は、余程女に飢えているか、ペドフェリアのどっちかしかいないだろう。
俺の守備範囲はそこまで低くない。
あいつは俺を何だと思っているんだ……。
「うどん、まって~!!」
そのエルードへの道中のことである。
当の真冬ちゃんはうどんやそばと嬉しそうに戯れていた。
「いや~、子供って予想以上に可愛いな」
「それは分かる」
チフユは今回の件への参加を即断した。
やっぱりチナツが心配だったらしい。
「チナツは暴走すると何をするか分からない」
とはチフユの言である。
まぁ、分かる。
しかし、俺達はこっち方面に来るのが初めてだったが、偶々来ていた変態がこっちの方に詳しいらしく道案内を買って出てくれた。
「この道は公爵領へ向かうだけあって、整地されているからな。また、定期的に盗賊討伐等もされているから非常に治安が良いのだ」
変態は全身タイツにトレンチコートという見た目に反して非常に理知的な男であり、道中のナビゲートは完璧である。
ここまでも、宿場町毎に素晴らしいラーメン屋を紹介してくれた。
「というかうどん達もそうだが、お前ら俺達に肩入れして良かったのか?」
「東洋派の二匹は知らないが、私はこの任務に成功した暁にはあのキチガイ賢者から即席麺の販促を手伝うとの言を得ている」
チアキは何時の間にそんな約束をしていたんだ……。
「それに魔王様が君達を助けたいと思っているのなら、部下として助けるのは当然だと思うが?」
「チフユはそんなに魔王らしい事してないと思うんだが」
「何を言っている。彼女は即席麺を人間達に広める手伝いをしてくれているではないか! 勿論、君もそうだ。君が即席麺の製法技術を学び、商人に卸してくれているおかげで、我が明星派の即席麺もバカ売れだ!!」
「マジか……?」
「こんな事で嘘をついても仕方がないだろう」
俺は何時の間にか魔王軍の片棒を担いでいたらしい。
「我が派閥の中では、君を魔王軍の筆頭幹部にしても良いのではないかとの意見も出ている位だ」
「いや、魔王軍はそれで良いのか……?」
俺は即席麺の販促をしていただけだぞ……。
「兄さんが筆頭幹部になってくれるのなら、私としても助かる」
隣で話を聞いていたチフユ的には凄い乗り気な様だった。
「君も将来魔王様の旦那になるのであれば、それなりの地位が必要だ。我々は人間たち程身分に拘りはないが、トラブルを起こさない為にあって困る物ではない。是非、考えてみてくれ!!」
魔王軍的にはトラブルは起きないだろうが、人間世界的には魔王軍の筆頭幹部になったとか物凄いトラブルにしかならんのだが……。
「ちなみに、チフユは何で俺が筆頭幹部になると助かるんだ?」
「私が魔王軍と一々折衝しなくてよくなるから、非常に便利。それにすぐ傍に兄さんがいてくれると凄く安心できる」
まぁ安心云々はわかるが、魔王軍との折衝位は自分でやれよ。
「にいさ~ん!! ほら、すごいきれいなはなが、さいてたの!!」
変態達の勧誘に辟易していると、真冬ちゃんが左手に持った一輪の花を見せてくる。
確かに遠目で見ると凄い綺麗な花だった。
ただ花の中心が口になっており、そこには切れ味の良さそうな牙が生えている。
完全に食人植物である。
「何処でそれを見つけたんだ?」
チフユはちょっと引いていたが、自慢気に見せて来たものを無碍にするのは良くない。
俺はそう思い、真冬ちゃんに笑い掛けながら尋ねた。
「うどんたちが、とってきてくれたの!」
真冬ちゃんが嬉しそうに食人植物を振り回す。
その言葉を聞いたチフユは無表情でうどん達の方を向き、それに気付いたうどん達はビクッと震えて逃げ出した。
「中々やるな。その植物はまだ若いが、大きくなれば人間など一飲みにする程の凶悪な魔物だ。そんな魔物を襲われずに持っているとは将来有望だぞ!」
変態は変態で良く分からない評価をしていた。
真冬ちゃんは褒められたと思い、ムフーとドヤ顔をしている。
というか、そんなに危険な植物だったのか……。
確かに、俺の方を見て口をカチカチ鳴らしている。
「確かに、俺には危険な花の様だ」
「このおはなは、にいさんをたべちゃうの?」
真冬ちゃんはそんな植物の様子を見て、先程とは違い一転して悲しそうな顔になる。
「そうだな。大きくなると食べちゃうかもしれないな」
真冬ちゃんの質問に変態はそう回答する。
「そんなわるいはなは、いらない!!」
すると突如として真冬ちゃんは激昂し、手から炎を出して食人植物を燃やす。
ただ、その火力は手の中の食人植物だけでなく、周りの草にまで燃やし始める。
「真冬ちゃん、落ち着いて」
「だって、このせかいに、にいさんをきずつけるものなんて、いらないんだもん!!」
「大丈夫だから、なっ」
俺は熱いの我慢しつつ真冬ちゃんを抱きしめる。
すると落ち着いてきたのか、真冬ちゃんは手から炎を消してくれた。
「に、にいさん……」
早めに対応したからか、そこまで周りには被害は出なかった様で、食人植物以外に全焼したものはなかった。
よく見ると、変態が冷気の魔法を使って、炎の拡大を防いでいてくれていた様だ。
むしろ変態のお陰で被害が出なかったみたいである。
流石、変態だ。
「悪いな。助かった」
「別に構わん。それに私も不用意な発言をした。こちらこそ、すまない。しかし、魔王様の幼体とは聞いていたが物凄い魔力だ……」
俺には分からなかったが、真冬ちゃんの手から出ていた炎はそれだけ凄いものであったのだろう。
しかし、その言葉とは裏腹の冷静さは凄いダンディさを感じる。
これは格好の良い男だ。
「兄さん、大丈夫?」
チフユもうどん達への折檻が終わったのか、炎の魔力に気付いたからか俺の心配をしてくれる。
「取り敢えずは大丈夫だな」
「それは良かった……。真冬! 不用意に魔法使ったらダメでしょ!!」
俺の安全を確認できたチフユは、真冬ちゃんの目を見て叱りつけた。
まぁ、今回の件は確かに危なかった。
「だって、にいさんが!!」
「だってじゃない! 今のだってちゃんと制御しないと、兄さんが大怪我したかもしれないのよ!!」
「むーー……。だって、にいさんにけがをさせる、おはななんていらないんだもん……」
「それは分かるけど、魔法を使う時は周りに注意しないと駄目なの。真冬が兄さんを怪我させたら嫌でしょ?」
「うん」
「でも、兄さんを守ろうとしてくれたんでしょ。それは、ありがと」
そう言ってチフユは真冬ちゃんの頭を撫でる。
「なんか、完全に親子だな」
「私もそう思う」
変態と二人の様子を見ていたら、そんな風に思った。
しかし、さっきの空気はチハルそっくりだった。
チアキの奴、若しかしなくてもチハルにも既に合わせてるんじゃないか?
真冬ちゃんは、チハルの病み、チナツの寝取り、チアキの感性、チフユの見た目と完全に4人の特徴を合成させたハイスペックな存在だ。
これには俺も苦笑いを隠せなかった。
真冬ちゃんのスペックは非常に高いです。
ポ〇モンでいうと6V相当です。
ただ、全員の良い部分と悪い部分を巧く引き継いでいるので、色々と面倒な娘になっております。




