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チフユMARKⅡ


 いつもの製麺を終わらせて、部屋に帰るとチアキがいた。


「珍しいな、昼間っから村に来るなんて」


 チアキは魔王討伐の状況について毎日のように報告に来ている。

 報告の内容はチアキの都合の良い様に改竄されてはいたが、それでも妹達の無事を確認できるため非常に助かるものではあった。

 この間チナツから届いた手紙とチアキの報告内容に、物凄い違いがあった時は流石だなと思ったが……。

 チアキはチナツに好きな人が出来たとか言ってたのに、チナツの手紙だとそんな事は一切書かれてない上、俺に浮気するなとか書いてあるんだぞ。

 どう見てもチナツに好きな人が出来た様には見えない。

 手紙を読んでもらっていたチフユも呆れていた位だ。


 しかし俺への報告は人目を盗んでいるせいか夜中来ることが多かったのに、今日に限って昼間に来たって事は、チハル達に何かあったって事か。

 俺は少し身構えながらチアキの返事を待った。


「今日は兄様に頼みがあって来たんだよっ」


 チアキは神妙な顔をしながら答えた。


「頼みって言うのは何だ?」

「兄様達にエルードまで来て欲しいんだ。ちょっとチナツが暴走してて、うち達だけじゃ止められなさそうなんだよっ」

「全く話が見えてこないんだが?」

「この間、ある宿場町に行ったらアイリス清教の不正に気付いちゃったんだっ。そうしたら、チナツが国教の不正なんて許せない、どうにかして是正してやるって息巻いちゃって止められないんだよ」

「ちなみに不正って何があったんだよ?」

「兄様も知ってるかもしれないけど、教会って孤児を引き取って育ててるんだ。今回の問題は教会がその孤児の中で、見栄えの良い子を人身売買で奴隷として有力者に引き渡していたって事なんだよ」


 それはチナツは怒りそうだ。

 拠り所になるべき教会が頼ってきた人を裏切るなんて以ての外だ、とか言ってそう。

 チナツの気持ちも分かるけどな。


「それでその人身売買やってたのがエルードとかいう街にある教会って事か?」

「そう言う事なんだよ。エルードの街は公爵家の直轄地で公爵家そのものもある位、大きな街なんだっ。この人身売買も公爵家が絡んでる可能性が高そうって事で、下手に手を出すと危ない目に遭いそうな気がするんだよ」


 確かに公爵家は王家に次いで偉い人達である。

 そこに殴り込みを掛けるとなると、それ相応のリスクがあるだろう。

 最悪の場合、殺される可能性だってある。

 チハル達がチナツを止めようとしてくれているのも、その辺が理由だろう。


「それで、チナツを止める為にエルードに行けって事か」

「そう言う事だねっ。一応、今回の件の旅費はうちが全額出すからお金の心配はしなくても大丈夫だよっ。後、出来ればうどん達も連れてきて欲しいんだ」

「何でうどん達がいるんだ?」

「一応、うち達は魔王討伐の途中だからねっ。西にあるエルードの街に不自然なく行く為に、魔王四天王がいるっていうのは都合がいいんだよ」


 魔王城は王都の北側にあるって言うし、何の理由もなしに西へ行くと王家に不審に思われるのだろう。

 その為の目晦ましに来て欲しいって事か。


「良いけど、俺の言う事聞くとは限らないぞ」

「その辺はチフユさんにお願いして欲しいんだよっ」

「ちょっと待て。チフユを連れてったら拙いんじゃないか?」


 この辺の町であれば、大体の人がチフユの事を知っているから魔王であることを知られても問題が起きてないが、デカい街で目を付けられると面倒なことにしかならない気がする。


「大丈夫だよ。そんな時の為に、この娘を連れて来たんだっ」


 チアキのその言葉と共に屋根裏部屋から、チフユを子供の頃に戻した様な銀髪幼女が出て来た。

 見ず知らずの場所に来て緊張しているのか、チアキの服の裾を握ってプルプルと震えており、非常にかわいい。

 そう言えば、チフユも小さい頃は人見知りが激しくて、俺の後ろによくいたなぁ。


「この娘はこの間チフユさんから貰った細胞で作ったチフユMARKⅡ、略して真冬(まふゆ)だよっ」


 んっ?

 そもそも愛称が全然略されてないし、チフユの細胞で作ったとは……。


「この間のチフユさんの遅すぎる中二病案件の報酬で貰った髪の毛から、チフユさんのDNAを取り出してクローニングしたんだよっ。時間が足りなかったから4歳位の年齢にしかならなかったけど、ちゃんと魔王としての力も使えるんだっ」

「いや、それにしたってこんな子供に魔王としての力は危ないだろう」

「だから真冬とうちの間で奴隷契約を結んで、その辺の力は封印してあるんだよっ。ほら、真冬、兄様に挨拶してっ」

「ま、まふゆです。はじめまして」


 チフユMARKⅡこと真冬ちゃんは、頭を下げて俺に挨拶をしてくる。


「兄様はうちの従兄で、うちの旦那様になってくれる人なんだよ。真冬も仲良くしてねっ」

「おい、嘘を教えるな」

「えー。ちゃんと現実にするから大丈夫だよっ」


 チアキは悪びれずに言ってくるが、こんな純真無垢な幼女を騙すのは良くない。


「いやっ。わたしが、このひととけっこんする」


 そんなチアキの意見に真冬ちゃんが逆らった。

 と言うか結婚ってどういう事だよ?


「真冬は何を言っているのかなっ? 兄様はうちのものなんだよ」

「にいさんは、わたしのもの。わたしだけが、にいさんのおよめさんになれるの!!」


 チフユも昔こんなことを言っていたなぁ。

 真冬ちゃんもやっぱりチフユなんだな。


「言う事聞かないと【奴隷紋】使うけど良いのかな」

「こんなのわたしには、いみないもん」


 というかチアキも4歳児と同レベルで喧嘩するなよ……。


「力が封じられている状態で、うちが刻んだ【奴隷紋】が解除されるはずがないんだよっ」

「むーーーー」


 真冬ちゃんが顔を真っ赤にしながら力を籠めると、胸の辺りからパキンという音がした。


「そんなっ。こんな簡単にうちの【奴隷紋】が破られるなんて」

「これでチアキおねえちゃんのどれいじゃなくなったってこと。これからはにいさんのおよめさんとしていきるの」


 真冬ちゃんがそう言って抱き付いてきた。


「いや、どういう事だよ?」

「真冬、兄様から離れるんだよ!!」

「いやっ!にいさんはわたしのだもん」


 全く話が進まないまま、チアキと真冬ちゃんの言い争いは続く。

 真冬ちゃんの何処が魔王対策になるのか、そもそも真冬ちゃんをチフユに見せて大丈夫なのか?


「兄さん、ちょっと良い?」


 そんな事を考えていたらチフユご本人が登場した。


「兄さん、その娘は誰の子なの?」


 チフユが珍しく怒っている。

 婚約者の部屋に来たら、見知らぬ幼女が婚約者の嫁になると俺に抱き着いているのだ。

 まぁ普通怒るだろう。


「チアキとチフユの子じゃないか?」


 しかし今回の件は俺に非はない。

 だから一番可能性の高い回答を俺は答えるのだ。


「は?」


 そう答えたチフユは口を開けて呆けた顔をしていた。


そんな訳で新キャラ真冬ちゃんの登場です。

彼女は純真無垢な4歳児です。

また似た様な名前だと怒られそうですが……。

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