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助けて、お兄ちゃん


 わたしがチアキを引き摺って部屋に戻ると、そこには項垂れたチナツがいた。


「チナツ、教会はどうだったの?」


 見た感じ完全に失敗だったと思ったけど、一応万が一の可能性がなくもないかと思ったので聞いてみる。


「こんな宿場町の教会でそんなこと言われてるって困るって、袖に振られたわ……」


 チナツは真面に取り合って貰えなかったのがショックだったみたいだけど、こんな弱小教会から考えればそういう大事に巻き込まれたくないよね。


「それでどうする訳?」

「王都に戻るかエルードに行くかの二択ね」


 わたしはその言葉を聞いて思わず溜息をついた。

 チナツはこの問題に口を出す気満々みたい。

 予想通りではあるけど、その危険性とか面倒臭さとか考えれば普通は手を引きと思うんだけどな。


「本当チナツは面倒臭い性格してるよね」

「悪かったわね」

「でも、それでこそチナツだよっ。うちは全面的にチナツに協力するよ」


 チアキはいけしゃあしゃあと満面の笑みでチナツの手伝いを宣言する。

 さっきまでチナツを嵌めようとした人間には見えない位の変わり身である。

 チアキも何だかんだでお兄ちゃんに嫌われたくないんだなぁ。


「なんかあんたにそう言われると逆に信用できないんだけど」

「酷いよ、チナツ。うちが何したって言うのかなっ」


 いや、チアキの頭の中の方が酷いと思うよ。


「いつものあんたの行動を考えてみなさいよ……」


 チナツも同じ意見の様だ。

 まぁ当り前である。


「チアキの事は置いておくにしても、わたしはこの件から手を引いた方が良いと思うんだよね」

「何でよ!! 国教であるアイリス清教が、そんな不正をしているなんて絶対に良くないわ。人の拠り所になるべき場所が、助けを求めた人を裏切るなんて許せる訳がないじゃない!!」


 激おこぷんぷん丸だ。

 というかツンデレ寝取られ本を焚書にして、文化的な書物を破壊しようとしていた人間とは思えない真っ当な意見である。

 まぁツンデレ寝取られ本を焚書にしたところで、たいして誰も困らないから、同じ不正とは言っても全然違うのかもしれないけどね。


「でも、ローズマリーの件はチアキがいれば簡単に解決するでしょ?」

「ドワイトに掛けてる【洗脳】を使えば、奴隷契約位なら解除させられるよっ」

「チアキ、あんた何やってるのよ!!」

「まぁ必要な事だったから仕方がないんだよっ」


 チアキの弁明も聞かず、チナツの一方的な蹂躙が始まる。


「ちょ、チナツ止めて」

「あんたはいい加減【洗脳】が違法だって事を理解しなさい!!」

「どんな行為もバレなければ違法じゃないんだよっ。それに本人達に不利になる様な形では使ってないから大丈夫のはずだよ」


 まぁあれはチアキの自業自得だから放っておこう。

 でもチアキ達のせいで、今日のお兄ちゃん観察日記がちゃんと書けないなぁ。

 今は時間的に今日の麺の卸しが終わってお昼休憩してる頃だろうな。

 やっぱりお兄ちゃんの思考だけじゃなくて、いい加減お兄ちゃん自身も見たいな。

 チナツも義憤に駆られてないで、諦めて村に帰ってくれないかな。


「ちょっとこれ以上締め付けられたら駄目になるからっ。反省して、もうそこまで【魅了】乱用するのやめるからっ」

「乱用とかじゃなくて、もう使わないって約束しなさい!!」


 お兄ちゃんの事を考えていたら、何時の間にかチナツ達の戦いも佳境に入っていた様だ。

 予想通りチアキが縛られていた。

 キツキツのピチピチである。


「何時までやってるの?」


 わたし的には続けて貰った方がお兄ちゃんの観察が出来て良いんだけど、このままだと話が進まない。


「チアキが諦めるまでよ!!」

「チナツが諦めるまでだよっ!!」


 話にならない二人である。

 というか現状チアキは負けてるんだから諦めればいいのに。


「チアキの【洗脳】云々よりも、教会の不正の方が大切じゃないの?」


 今はむしろそっちの話をして欲しい。

 どうせチアキはどれだけ言っても、【洗脳】使う事を止めたりしないだろうし。


「――それも、そうね」

「納得してくれたんなら、緊縛も解いて欲しいんだよっ」


 チナツはわたしの言葉で、チアキを締め付けるのを止めた様である。


「それで、チナツはやっぱり教会の不正を正すのを諦める気はない訳?」

「当り前じゃない」


 チナツはほんと頑固だよ。


「そうすると魔王退治している最中な事も考えると王都には戻れないし、エルードの方に行くって事になるねっ」


 縛られた状態でドヤ顔されると、なんか凄い間抜けなんだけど。


「そうなるわね」


 そんな間抜けの意見にチナツも同意する。

 はぁ、態々エルードまで行かないといけないのか。

 面倒臭いなぁ。


「ドワイト達はどうするの?」

「弾避けになるし連れてったんで良いんじゃないかなっ。ローズマリーは地元みたいだし道案内程度の役には立つと思うよっ」


 まぁここで解放する意味もないし当然だね。


「それじゃあ次の目的地はエルードって事で」


 わたしは終わりの見えない話合いをそう言ってぶった切った。



「チアキ、ちょっと良い?」


 行先の話し合いが終わった後、チナツが居なくなったのを見計らってチアキに声を掛ける。


「何かなっ?」


 チアキは相変わらず胡散臭い笑みを浮かべながら返事をしてきた。


「お兄ちゃん達にもエルードに来てもらおう」

「えっ?」

「正直な話、わたし達じゃチナツのあの暴走は止められないよ」

「それはそうかもしれないね」

「このままエルードに行って、チナツが教会に乗り込んで、捕まって、調教された挙句、殺されたりでもしたら、お兄ちゃんに顔向け出来ないよ」


 そんな展開になったらお兄ちゃんがどれだけ悲しむことだろうか。

 そんな事は絶対に許されないのである。


「確かに、その展開は在り得そうだよっ……」

「だからお兄ちゃんに来て貰えば、チナツの監視役にもなるし丁度いいと思うんだよね。後、うどん達にも付いて来て貰えれば、魔王四天王がいることになるし、エルードに行くことに不自然感がでないでしょ?」

「チハルとは思えない位、理論的な意見なんだよっ」


 何て失礼な奴だろう。

 わたしだって、考える時は考えるのである。


「そんな訳でお兄ちゃんの招聘を希望する!!」

「それって結局チハルが兄様に会いたいだけなんじゃないの?」


 チアキがわたしの宣言に冷水を浴びせて来た。

 でもまぁ、それは否定できないね!!


次回からチフユ達が久々に再登場します。

ドワイト君達もチハルの寝取りを諦めている訳ではないので、しっかり活躍してくれるはずです。



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